第198話 幼女でも艦長は艦長
後甲板ではホログラム・フワーデが、フワーデソングを大音量で流しつつ、空中に浮かんでダンスを踊っていた。その下では多くの乗組員たちがフワーデダンスを踊っている。
健康管理の体操がわりということで許可したフワーデダンスの参加者は、今ではかなりの人数に膨らんでいた。
「フッ、フッ、フワーデ、フワーデの~♪ 乙女のハートが~ときめくの~♪」
「「「ソイッ! ソイッ! ソイソイソイ、ソイッ!」」」
しかもミナス村で救出した三人娘もダンスに参加してる。美少女たちが汗を流し、若さを全身に
あぁ、若いっていいなぁ。
……と思ってしまう幼女の私は、やはり中身はおっさんのままなのであった。
三人娘をよくよく見てみると、フワーデソングを歌っていた。どうやら歌詞まで覚えてしまったようだ。
これ録画してFuwaTubeにアップしたら、かなりPVが稼げるのでは?
そう思ってスマホを取り出そうとしたら、既に数人の乗組員が撮影していることに気が付いた。
レフ板を三人娘に向けている。やけに三人娘が映えてるなと思ったら……。
ちっ、もう三人娘に目を付けている
私の番組「チャンネル幼女艦長」に出演させてPVを稼ごうと思っていたのに……。
先を越された!
その後、フワーデネットで配信された三人娘のダンス動画は、当月一位の再生数を記録していた。
~ フワーデネット ~
フワーデネットは、フワーデメインサーバが管理しているネットワークで、通信圏内であればスマホでアクセスすることが可能だ。
現在、フワーデメインサーバは、護衛艦フワデラ、護衛艦ヴィルミアーシェ、リーコス村に設置されており、それぞれが独立したネットワークを形成している。
通信圏がもっとも広いのは、リーコス村のサーバだ。大陸中に通信ドローンが配置されているため、現在ではアシハブア王国のほぼ全域をカバーしている。さらにルートリア連邦やドラン公国、北方諸国連合にも、徐々に通信圏が広がりつつあった。
対して、護衛艦フワデラと護衛艦ヴィルミアーシェは、ほぼその船周辺と、そこから通信ドローンが飛んでいける範囲に限られている。
さらにネットにつながる端末を持っているのは、乗員しかいない。そのためリーコス村と比較して、コンテンツの量がどうしても少ない。
リーコス村では大人気を博していた「ゆきな☆わんこちゃんねる」も、現在視聴することができるのは、過去のアーカイブだけだ。
なので平野の最新ライブ配信は、平野が乗艦している護衛艦ヴィルミアーシェでしか視ることができないだろう。
同じ理由で、グレイベア村から配信されている「ルカ★チャンネル」も、護衛艦フワデラ上ではアーカイブのみの配信となっている。
「くっ! 貴重な視聴者をフワーデに奪われてしまった!」
後甲板を後にしつつ、幼女の私は下唇を嚙みしめた。
平野の配信も、ルカ村長の配信も新規コンテンツが更新されない今、フワーデの「フワーデ・チャンネル」は大人気を博していた。
現在、視聴数第一位は「フワーデ・チャンネル」、第二位は「ゆきな☆わんこちゃんねる」、第三位が「ルカ★チャンネル」、第四位が「桜井ニキのゲーム配信」、そして第五位が私のチャンネルだ。
しかもフワーデと私のチャンネル総視聴数にはなんと三桁もの差がついている!
チクショー!
だいたい、現在は過去のアーカイブしか視れない平野やルカ村長のチャンネルに負けてるってどういうことだ!?
平野には、彼女の狂信的な信者が怪しい宗教団体を作っているようなので、組織的な取り組みがなされているだろうことは、何となく察しが付く。
だがルカ村長なんて、ただの幼女だぞ! なんであんなに視聴者が多いんだ!?
「私だって幼女だというのに、角か? 尻尾か? そういうのがウけるのか!?」
なら私は猫耳で行くしかないのか!?
とか色々考えて、スマホをチェックしている私の背後から、フワーデが顔を覗かせる。ホログラムではなく、テーシャボディの方だ。
「うーん、タカツのチャンネルも頑張ってるとは思うけど、もうちょっと視聴者にニーズを掴む努力をした方がいいと思うな」
「視聴者ニーズ!?」
「うん。べつに難しい話じゃないよ。みんなが視たいって思ってるだろうなーってものをちゃんと考えて、それを見せてあげればいいだけだよ」
クッ!?
そんなことはわかっとるわ! 私なりに努力も続けている!
というか、そもそもフワーデの上から目線のアドバイスが気に入らない!
私のチャンネルより登録者数が一桁多いからって!
調子に乗るんじゃないっ! すぐに追い越してやるからな!
私は、前回の配信のコメント欄をチェックする。
配信内で、PV数を伸ばすためのコメントを残して欲しいとお願いしていたのだ。
「艦長ダンスとかいらないです」
「歌の選曲が古過ぎるんだが」
「幼女ということは忘れた方がいいと思います。いくら幼女でも艦長は艦長ですから」
「艦長が幼女のフリするの見ててキツイ! 艦長の幼女姿に騙されるのって、この異世界の人たちだけですよ」
「幼女ハスハス……」
ち、チクショー!
この日以降、私は幼女を前面に出した歌やダンスの配信を止め、作戦会議で公開可能な部分の紹介や、職務で気付いたことの意見や感想などを、いたって真面目な内容を淡々と語るだけにした。
その結果、PVは2倍に上昇した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます