第79話 幼女殺法

「幼女戦隊ドラゴンジャー出動!」


 私たちは4台の73式小型トラックに搭乗し、魅惑の美女シンディ・ラトテップの案内で彼女の村へ出発した。


 坂上大尉の運転する先頭のトラックには魅惑の美女シンディの他、私とタヌァカ氏が乗っている。ちなみにタヌァカ氏は魅惑の美女シンディの真後ろの席に座っている。


 これはもちろん、魅惑の美女が不気味な蛆虫の正体を現した時にタヌァカ氏の幼女化スキルを叩き込むことができるようにするためだ。


 街道を進む中、私は大きな声で魅惑の美女シンディに声を掛ける。


「シンディさんのバロック村は、あの山の方向で間違いないですか?」


 私が指差す方向を見て、魅惑の美女シンディは頷いた。私はインカムに手を当ててフワーデに、先に偵察に向うようこっそりと指示を出した。


 道中の休憩時には、魅惑の美女シンディが警戒心を抱かないように、男性陣はその周りを取り囲むように座らせる。彼らには、彼女の気を惹こうとするそぶりをするように厳命している。


「あっ、あーっ、シンディは、その……すごく色白だよなー」


 いつものイタリア人気質はどこに行った!?と怒鳴りつけたくなるくらいの棒読みで、マーカスがシンディに声を掛ける。


「うふふ。お褒めいただいて嬉しいですわ」


「お、おう……」


 私の目には、超セクシー美人グラドルがマーカスに妖艶に微笑みかけているように見える。マーカスの目にも絶世の美女が映っているはずなのだが、彼の顔は思い切り引きつっていた。


 南大尉やヴィルフォランドールも、同じように棒読みでシンディを褒めたたえ、同じように顔を引きつらせていた。


 休憩中にフワーデの報告を受けた私は、シンディさんに村まであと数時間で到着できる旨を告げる。


「現地に到着したら村の様子を偵察した後、陽が落ちるのを待って夜襲を仕掛けます」


「お願いしますわ」


 私は花摘みを名目にルカを伴ってその場から離れた。


「でっ、村の様子はどうだったのじゃ?」


「まぁ、全て予想通りですね。村に人間は一人もいませんでした。」


 そう言って、私はフワーデの偵察ドローン「カラス」が撮影した映像をルカと確認する。鳥に擬態したこのドローンは、上空から村の様子を精緻に撮影していた。


「ここにいるのは人間の子どもじゃないのかの?」


 ルカが指摘した部分で動画を停止した私は、映像を拡大する。


「遠くからは子供のように見えますが、近づくと正体がわかりますね」


「うげっ。ドラゴンのわらわから見ても趣味が悪いのぉ」


 拡大映像には、子供の身長くらいある蛆虫が複数蠢いていた。


「恐らく、子供を助けに飛び込んできたところを一網打尽にしようとしているのでしょう。周辺にある建物の中、これ分かりますか?」


「こやつのことは知っておる、ショゴタンとか言うやっかいなスライムじゃろ」


 子供蛆虫の周囲にある建物の窓から、中で何かが蠢く様子が見える。その蠢くもの触手らしきものは、建物の外にある側溝の中にまで広がっていた。


「私たちもこいつと戦ったことがあります」


「勝てるか?」


「この映像からは、村のあちこちに潜んでいることが想定されます。村での戦闘となると、今の私たちの兵装だけだと厳しいかもしれません」


「そうか……ならシンイチに出張ってもらうしかないかのぉ」


「いいえ。彼には蛆女の相手をしてもらわねばなりませんし、ここは私たちにお任せください」


 私はニッコリと笑ってルカに親指を立てて見せた。




~ 爆殺 ~


 ドドーーーーン! ドドーーーーン! ドドーーーーン!


「トマホーク着弾! ターゲットキル!」


 インカムに山形砲雷長の声が響く。


 バロック村を目の前にして、私たちは護衛艦フワデラから発射されたミサイル、タクティカル・トマホークが次々と村を破壊していく様子を見物していた。


「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 魅惑の美女シンディが顎が外れんばかりの大口を開けて叫んでいる。


 ごぉぉぉぉぉぉお。


 村は炎に包まれ、私たちのいる場所まで轟音が響いてくる。


「膨れ女! これで残る妖異は貴様だけじゃ!」


 ルカが魅惑の美女シンディを指差して叫ぶと、シンディはブルブルと震え出した。


「貴様ら……ただでは……ただでは済まさぬぞぉぉぉ」


 魅惑の美女シンディがみるみると膨れ上がり膨れ女の正体を現す。その醜く悍ましい姿を見た、私は心臓が恐怖にワシ掴みにされるのを感じた。だが、あらかじめ心構えを固めていたので気絶するまでには至らない。他の面々も私と同じような状況のようだ。


「ただで済まさぬのは我らの方じゃ! いくぞドラゴンジャー幼女殺法!」


 ルカを中心に私とライラとグレイちゃんが一列に並び、必殺技を放つ前のポーズを決める。


「賢者の石は正義の印!」(ルカ)

「青き正常なる世界を求め!」(私)

「胸にピンクの優しい心!」(ライラ)

「黄色は太陽の黄! カレーは美味しい!」(グレイちゃん)

「我ら幼女戦隊ドラゴンジャー! 必殺! 幼、女、殺、法!」(みんなで)


 ルカは高く掲げたこぶしをタヌァカ氏に向けた。


「シンイチ!」


「【幼女化ビーム(1秒間)】!」


 タヌァカ氏が幼女化ビームを膨れ女に放つ。


「タヌァカ氏の必殺技じゃん! 幼女戦隊関係ねぇー!」


 という私のツッコミはスルーされた。

 

 ボンッ!


 煙が立ち昇ったかと思うと、膨れ女が幼女に変わっていた。


 ボンッ!


 と思ったらすぐに元の膨れ女に戻った。が、そのときの膨れ女は地面に這いつくばってヒクヒクするばかりで、虫の息だった。


「とどめじゃ! 幼女殺法みんなでバースト!」


 南大尉と坂上大尉、そしてライラが64式7.62mm小銃で膨れ女をハチの巣にする。


 動かなくなった膨れ女にライラが手榴弾を投げると、全員が一斉に退避した。


 ドカーーン!


 こうして膨れ女は死んだ。


「幼女戦隊ドラゴンジャー! 正義の義務を果たしたり!」


 ビシッ!


 四人の幼女がポーズを決めている様子を、坂上大尉がスマホで撮影していた。


 

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