第25話 食後のダンジョン攻略

 昼食開始の号令で、ミライが焚き火の準備を始めようとしたところで私はそれを制止する。


「昼食は私たちのを提供するから、ミライちゃんは座ってていいぞ」


 そう言って私はヴィルフォアッシュのリュックから四人分のレーションを取り出して配った。私と白狼族の二人、そしてミライの分だ。


 坂上大尉と南大尉は自分のリュックからレーションを取り出していた。


「どうも納得がいきません。艦長、楽し過ぎじゃないですか? 自分の荷物は自分で持ちましょうよ」

 

 どうも南大尉は、私が自分の荷物を白狼族の二人に背負わせていたことに不満があるようだ。

 

「私は幼女だからな。仕方ないんだよ」


「俺だって幼女ですが!?」


「なら二人に荷物を持ってもらえばかったんじゃないか。二人ともまだ余裕があるって言ってたし……」


 と言って白狼族の二人を指さすと、彼らはコクコクと頭を縦に振る。


「えぇ……」


 呆然とする南大尉をそのまま放置して、私たちはレーションヒーター加熱剤でホカホカに温まったカレーを食べ始めた。


「ふえぇぇ! これはとても美味しいれすぅぅぅ」

 

 ミライが初めて食べたカレーに感動して目にハートマークを浮かべていた。


「む、村で食べた、のと同じ味……す、好き……」


 ヴィルミカーラも同じく目をハートにしてカレーを堪能している。




~ お昼寝タイム ~


 昼食後、私と南大尉は他の面子に見守られながらお昼寝タイムに入った。


 それから1時間後――


「「ふわぁぁぁぁ」」


 私たちが目覚めると、坂上大尉とミライが楽し気な様子で話し込んでいた。どんな話をしていたのか、なんとあのクールビューティー坂上が笑っている。これは超レアだ。


 それにしても私が眠っている間に二人が仲良くなったのは何より。


「よっし、それじゃダンジョン二階層に突撃するとしようか」


「「了」」


 ミライを除く全員がヘルメットを被り、取り付けたヘッドランプを点灯させた。ミライは一応ランタンを持参していたようだが、彼女には警棒としても使える懐中電灯を手渡す。


「これ魔法の杖ですか!? 凄く明るいです!」


 魔法の杖に感動してあちこち照らしまくるミライ。彼女が落ち着くのを待ってから私たちはダンジョンを下る。


 初級ダンジョンの第二階層は一層とは全く違う世界だった。それはこの層に降りた瞬間に全員が理解した。最初にそれが分かるのは第二階層の暗さ。


 真っ暗だ。


 第一階層では石壁に一定間隔で光石が埋められている。そのため薄く照らされた回廊は光源を持たなくても何とか歩くことはできた。


 しかし、第二階層は真っ暗だ。僅かな光源さえないため暗視ゴーグルも役に立たない。ヘッドライトだけが頼りだ。


 一階層の宝箱や罠には人の手で管理されている跡が感じられた。だが第二階層は全てにおいて人の手による介入が一切感じられない。


 それどころか空気の中にある強い悪意が、皮膚をピリピリと刺激してくるような気さえする。


 そのような中を私たちは進んで行く。


 隊形は中央にミライを置き、前方を私と南大尉とヴィルフォアッシュ、後方を坂上大尉とヴィルミカーラで固めていた。


 周囲を警戒して視線を動かす私たちに油断は一切ない。


 動く死人4体と遭遇。元冒険者の遺体だろうか。


 動く死体は想像以上にえげつない姿で、私たちに襲い掛かってきたが、南大尉が見事なヘッドショットを決め5秒でケリが着く。


 戦闘終了後、ミライが動かなくなった遺体から冒険者証を発見。私たちはこれを回収し後にギルドに提出することにした。

 

 緑色の肌をした集団に遭遇。これがゴブリンなのだろうか。


 坂上大尉が身体のひときわ大きな個体に6発の89式5.56mm弾を叩き込むと、ゴブリンの集団は大混乱に陥った。


 白狼族の二人がゴブリンの中に飛び込んで激しい剣を振るい血の雨を降らす。逃げようとした個体は私と南大尉が9mm弾を撃ち込んで仕留めた。


 状況は3分で終了。


 倒れたゴブリンの遺体の耳を白狼族の二人とミライが切り取って行く。特徴的な緑の耳が討伐の証明になるらしい。


 宝箱を見つけることはなかったが、宝物はいくつか発見した。


 探索の途中、耳のないゴブリンや牙を抜かれた大ネズミの死骸が沢山転がっているのを見かけることがあった。


「こ、ここでせ、戦闘があったみたい……」


 そういうとヴィルミカーラとヴィルフォアッシュとミライが遺体の周辺を細かく調べ始める。


「ここにありました!」


 そう言ってミライが瓦礫の下を指し示す。調べてみると冒険者が持ち帰れずに隠したらしい素材とアイテムが見つかった。


 ミライは発見した得物を大きなリュックにしまいながら独り言をつぶやく。


「ポーターさえ雇っていれば、こんな風にお宝を残しておくこともなかったのですよ。ポーターを雇っていれば」


 と、私の方をチラチラ見ながらそんなことを言った。


「おっ、そうだな」


 私がニッコリと満面の幼女笑顔で答えると、


「ひっ!」


 とミライが怯える。


 なんでだよ!


 私たちはその後も探索を続けた。


 ミライのリュックが3分の2ほど埋まったところで探索を終える。


 ダンジョンの外へ出る頃になると、すっかりと夜は更けていた。

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