第21話

しばらくすると菜々が休憩したいというので、サービスエリアに寄ることにした。

菜々は車で休み、何かあった時に逃げられるようにと僕たちは車から少し離れたところで休憩する。

雨風はまだ強いが、朝よりは少しましになったように思う。

「そういえばめいちゃんのお願いって何だったの?」

缶ジュースを飲みながらあやはめいに聞いた。

めいは少し困ったような顔をする。

「ほら、戻るまでの間にできそうなことなら叶えてあげたいじゃん」

とあやは続けた。

はづきの話によると、願いを叶えられずに帰ってくる人もいるらしい。

もしまだ叶って無いのなら、この状況でもできることはあるかもしれない。

めいは少しの沈黙の後、

「もう叶ってるの、十分なくらい」

と笑顔でそう言った。

再び車で青森に向かっていると、祐樹と出会った時のことをめいは話し始めた。

あの日の夜中、道のカーブでめいは車にはねられたそうだ。

次に目が覚めたときは、当時の祐樹が住んでいたアパートに居た。

おそらく、夜中で暗かったし運転手が気が付かなかったか、ひき逃げだろうと。

怪我はしたと思うが、日付が変わって怪我は治り、そこへ祐樹がやって来たと思う。

「その時に記憶をなくしちゃったんだと思う。祐樹さんにはとても迷惑かけちゃった」

とめいは目を伏せるが、すぐにぱっと笑顔になって

「でも、この一か月間はみんなのおかげですごく楽しかった。水族館行ったり、花火見たり」

と付け加えた。

あやはそれを見てめいを抱きしめた。

「私も妹できたみたいで楽しかったよー」

「めいちゃんって実際、何歳なの?」

その智哉の問いに先に答えたのはあやの方だった。

「女性に年齢聞くなんで失礼だよ」

それを聞いてめいは少し笑いながら

「その辺はまだはっきり思い出せなくて」

と言った。

ふたりには日記の内容はまだ話せてなかったが、めいが隠したいのであれば僕が口をはさむことでもないだろう。

日も落ちてきて、暗くなってきたころ二回目の休憩を取った。

長距離の運転は初心者の菜々にはかなり大変なようで、疲れが顔に出ていた。

菜々は少し寝たいというので、あやが車に残り三人は車の外で待機することになった。

「菜々さん結構疲れてるみたいだし、残りは電車とかにしない?」

「それもそうだな。近くの駅調べてみるか」

スマホを手に取ると時、ふと智哉の足元のリュックに目が行った。

普段使わないような、登山用の大きいリュックサックだ。

「そのリュック何に使うの?」

「あ、これ?姉貴がダミーで持っとけって。抱えるとちょっとはごまかせるんじゃないかって」

と智哉はリュックを軽々抱えた。

遠くから見ると、小さい子を抱えてるようにも見えなくもなかった。

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