第16話 北へ
めいを布団に寝かせた後、三人で机を囲んだ。
あやは智哉から大体の話を聞いたようだ。
「あの話って本当なの?いまいち現実味がないって言うか」
とあやが切り出す。
いきなりあんな話をされても、信じられないのはよくわかる。
しかし、これまでのことを考えると六月が存在していると思わざるを得なかった。
「僕は本当だと思ってる、祐樹さんもなんか隠してることがあるような感じだったし」
そう言うと、智哉は気に入らないように舌打ちをして部屋から出て行ってしまった。
はづきが言った『ほっといてもいい』が気に入らなかったのだろう。
すると智哉は意外にもすぐに戻ってきた。その手にはノートパソコンを持っている。
「姉貴から借りてきた。道調べるのパソコンの方がいいだろ」
と言うと智哉は慣れた手つきで、パソコンを操作し始めた。
「ともくん信じてなさそうだったのに」
あやが言うと智哉は手を止めた。
「あのじじいのことは気に入らねぇし、信用もしてねぇよ。でも、新太が信じてるって言うんだ、手伝うしかないだろ」
と言って作業を再開した。
僕は智哉が「親友だしな」と小さく呟いたのが聞こえて、自分の頬が緩むのが分かった。
調べている間に、ふと祐樹が投げた鍵が気になった。
何故あの時、祐樹は家の鍵を投げたのだろう。
ポケットからそれを出して眺めていると。
「何それ鍵?」
とあやが聞いてきた。
「うん、祐樹さんが投げてきたんだけど、なんでかなって」
「新太たちが家に入れないの心配してたのか?あの状況で」
「そんなわけないでしょ、ちょっと貸して」
鍵をあやに渡すと、その疑問はすぐに解消された。
猫のキーホルダーの中からUSBメモリのコネクタが出てきたのだ。
「祐樹さんが渡したかったのってこれなんじゃない?」
「経路もだいたいメモできたしそれ見てみるか」
智哉はそれを受け取ると、ファイルを開いた。
二年前の六月から始まる日記のようだった。
「これは、新太だけ見たほうがいいんじゃないか?」
と智哉が言うので、必要そうなら伝えるということで僕だけ見ることになった。
夜も遅かったので、ふたりには先に寝てもらうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます