第15話

なんでこれを投げたのか眺めていると、スマホが鳴り出した。

智哉からの着信だった。

電話に出ると智哉の安堵する声が聞こえる。

『お前ら大丈夫なのか?急に居なくなったから心配したんだぞ。めいちゃんは?』

「ごめん、こっちは大丈夫。めいちゃんもはづきさんも一緒にいる」

『分かった、今どこにいる?』

「住宅街のところ」

『じゃあそのまま俺の家に来い、俺はあやと行くから。気をつけろよ」

「わかった。そっちも気を付けて」

電話を切ってすぐ三人で智哉の家に向かった。

めいは泣き疲れたのか、おんぶするとすぐに眠ってしまった。

「あの、スーツの人って誰なんですか?」

「あれは上の者ではないな。言っただろう、わしらを探しているのは上の者だけではないと」

「あの人たちはなんで探しているんですか?はづきさん達のこと」

「そうだな、地位のあるやつらや、優秀な学者たちは人間が到達してはいけないところを望むもんじゃ。何故やつらがわしらの存在に気が付いたのかは分らんが、こいつがそういうやつらに捕まらなかったのは不幸中の幸いだな」

はづきは寝てしまっためいを見る。

「はづきさん、めいちゃんを一緒に連れて行ってもらうことはできないんですか?」

はづきは少しの沈黙の後

「それはできない」

と呟くように言った。

「どうしてですか、時間を止めてるのははづきさんですよね?男たちに捕まることは無いですよね?」

「力を使うにも限度がある。それに、ふたりで一緒に居るってことは、一緒に捕まる可能性があるということだ。薄情なのは分かっておる、ただわしまで捕まるわけにはいかん」

はづきはゆっくりと言葉を繋いだ。

「そう、ですよね」

呟いた言葉ははづきに届いたか分からなかった。


智哉の家に着くと家の前で智哉とあやが待っていてくれた。

あやは今にも泣きそうな顔をしている。

「無事でよかった、本当に心配したんだからね」

「ごめん、そっちは大丈夫だった?」

「うん、でも祐樹さんが連れていかれちゃって」

「新太の家の前通って来たけど、なんか荒らされたぞ。めいちゃんのこと探してたのかな」

どうやらあの男たちにめいの存在は完全に知られているようだった。

それを聞いていたはづきが口を開いた。

「なあ、お前らはこの件に巻き込まれているだけだ。もし、危険な目に合うようならそいつのことはほっといてもいい。わしが帰れればじきに迎えが来る。無理なこと言って悪かったな」

はづきは言い終わると僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。

それはまるで、僕らのことを憐れんでいるようだった。

「またな坊主」

そう言い残し、気が付けばはづきの姿は無くなっていた。

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