第6話 水族館

今日も相変わらず小雨が降っていて、屋根から落ちた雫が音を立てている。

智哉が無事に再試が終わったので、今日は四人で水族館に行く予定だ。

そろそろ駅に向かおうと一階に降りると、めいはかっぱを着て玄関に座っていた。

水族館に行くのがよほど楽しみらしい。

「本当にめいが一緒に行って大丈夫?迷惑にならない?」

祐樹は少し心配そうに聞いてくる。

「大丈夫ですよ。チケット余ってたみたいですし」

「それならいいんだけど。めい、ちゃんと新太君のいうこと聞くんだよ」

めいはそれを聞いて「わかってる」と口を尖らせた。


駅で智哉たちと合流して電車に乗る。

夏休み中ということもあり、そこそこ人は多かった。

めいと席に座って、僕と智哉はその前に立った。

「めいちゃんって小学何年生?」

あやの簡単な問いに、なぜかめいは困ったような反応を見せた。

それは人見知りして答えられないというより本当に分からないといったような様子だ。

「この前、時速とか求める宿題やってたよね」

助け船のつもりでそう言うとあやは

「じゃあ、小学六年生なのかな?」

と少し困ったように笑いながら言った。

あやは小学校の先生を目指しているので、その辺の話は詳しいらしい。

「六年にしては小さくねーか?」

「ち、小さくないもん!」

智哉の言葉にめいはそう反論するが、めいの身長は間違いなく小さめだ。

そのせいか僕も小学四年生位だと思っていた。

そんな話をしながら水族館に行くとやはり少し混んでいるようだった。

「少し早いけど、混む前に昼飯食わねーか?」

時間は十一時前だったので智哉の提案で、水族館に併設してあるレストランで先にご飯を食べることにした。

そこでもめいはただ黙々とごはんを口に運ぶ。

何故かそれに張り合うように智哉がごはんを平らげるのは見ていて面白かった。

水族館に入ると正面の水槽から波が壁にぶつかる音が聞こえてくる。

最初の水槽は色鮮やかな魚はいなかったが、優雅に泳ぐ魚をめいはじっと見つめていた。

めいはこのまましばらく動きそうにないので、智哉達とは別行動をすることにした。

ゆっくり回っても二時間で周れそうな水族館だが、メインの大水槽に着くころにもう二時間は経っていた。

イルカのショーがあるので見に行くか智哉から連絡が来たが、めいは水槽に張り付いてを泳ぐイワシの群れに夢中になっている。

他の人の邪魔にならないように壁際で『まだ大水槽なので見に行けない』と返信した。

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