第4話
次の日朝ご飯を食べ終わると祐樹は会社に行く用事があるというので、出かけて行った。
めいとふたりきりは少し不安だが仕方ない。
めいは居間で静かに本を読んでいるが、一階にひとりにしていくのは心配なので同じ部屋で課題をすることにした。
休みなのになんでこんなに勉強しなきゃいけないんだ、と長期休みが来るたびに思う。
気が付けばめいも僕の向かい側で宿題を始めていた。
プリントが何枚か机に広がっているが、どれも距離や道のりを答える問題だけ空欄になっている。
「これわかんないの?」
お節介かとも思ったが指をさして聞いてみると、めいはこくっと頷いた。
そこは僕もよく躓いたところだ。
「ここはこうだから…」
順番に説明しながら一緒に問題を解いていく。
空欄がすべて埋まったっころ時計の針は一時を差していた。
縁側から聞こえる雨の音で随分と集中していたらしい。
「そういえばお腹すいてない?お昼何にする?」
めいに聞くと少し考えた後で「なんでも」と呟いた。
台所の棚に二人前のそうめんが残っていたのでそれを茹でることにした。
冷蔵庫からキュウリとトマトを出して洗っているとめいが台所に来た。
「ここわかんない」
とプリントを見せてきた。算数の何通りあるか聞く問題だった。
「お昼食べたら一緒にやろうか。キュウリとトマトって食べれる?」
「キュウリはカリカリしてて好き」
そういうと居間に戻っていった。
嫌いと言われなかったのでいいか、とトマトも一緒に切って茹でたそうめんの上に乗せた。
彩は少ないがそうめんだけよりは随分とましに見える。
そうめんを持っていくとめいはちゃぶ台の上を片付けてくれていた。
めいは相変わらず食べるのが早かった。
昼食の後はめいのわからない問題を教えながら読書をした。
読書は好きだが、感想文はどう書くのが正解なのかいまだによく分からない。
めいは算数に飽きたようで、世界地図とにらめっこをしてる。
五時になると祐樹から『今から家帰るよー!晩ごはんおねがいします!』と猫がお辞儀しているスタンプが送られてきた。
こういうところも
野菜を出しているとめいが「手伝う」と台所に来た。
今日は肉じゃがを作るので、さやいんげんの筋を取ってもった。
少し多めに作って明日はコロッケにしようと思う。
昨日は警戒されて話すこともままならなかったが、一日で随分と前進した気がする。
めいについてまだわからないことばかりだが、たった一か月の付き合いだそんなに深く関わる必要もないだろう。
野菜と肉を煮込むといい匂いが台所全体に広がっていく。
鍋の中が気になるのか踏み台を持ってきて、隣で鍋の中を覗き込んでいる。
小皿に少し移してめいに味見をさせる。
「味どう?」「ふつう」
その時玄関の引き戸が開いて祐樹が帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり」「お帰りなさい」
祐樹は台所に入ってくるとふたりの姿を見て「なんだか親子みたいだね」と口元を緩めた。
「肉じゃが美味しいよ。姉さんこんなの食べてるなんて羨ましいよ」
祐樹は喜んで食べてくれた。めいは相変わらずさっさと食べ終わって部屋に行ってしまった。
「今日めいどうだった?」
「一緒に宿題をして、あとごはんを作るのも手伝ってくれましたよ」
「なんだ、意外と仲良さそうで安心した」
祐樹は鼻歌を歌いながら皿洗いをしている。めいと僕が仲良くなったのが嬉しいようだ。
お風呂から上がって部屋でのんびりしているとスマホの通知がなった。
中学の同級生だった
『新太もうこっち来てんだよな?遊ぼうぜ』
『ともくん再試あるでしょ、遊んでる暇ありませんよー』
ふたりは地元の高校に通っている。本人たちが言うには幼稚園からの腐れ縁らしい。
何度かやり取りをして『図書館で勉強ならいい』とあやの許可が下りた。
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