第52話 修学旅行の計画

6月中旬の雨の日の学校。

彩葉が通う緑牧高校の3年生のクラスでは、修学旅行に関する話し合いで盛り上がっていた。


現在は2024年、新型コロナウイルスの騒動で去年、一昨年と彩葉の先輩達は修学旅行に行くことが出来なかったが彩葉達が3年生になった時に2年前に出回ったコロナウイルスワクチンの強力な改良型が今年完成して日本にも入ってきた。

しかし、ウイルスの変異型に対応する為に強力になったワクチンは以前よりも副反応による発熱が酷く、ワクチン接種をした者の中にはワクチンによる後遺症やアレルギー持ちの者は亡くなるなどの騒動だったが、それを乗り越えた者はコロナに99.9%感染しない抗体を手に入れマスクの義務も解除となった。

彩葉達のクラスは、全員改良型のワクチンを接種済で感染者数もここ最近は大幅に減ってきたので修学旅行に行けることになった。


「今回の修学旅行は北海道か沖縄はやめて岐阜に行くんだってさー」


クラスメイト達がそう話してるのを聞いていた彩葉と愛琉とルナの毎度おなじみの3人は、修学旅行のことについて話し始める。


「岐阜かぁ…まぁコロナ騒動もようやく一段落したばかりだし、山が多くて人があまり密集しない場所に決まるのも納得だけど岐阜って何があるんだろ?」


愛琉が彩葉に聞いてきたので、彩葉はスマホで岐阜を調べながら言った。


「まぁ…定番かつ有名所だと下呂温泉とか?飛騨高山とかじゃない?今回の修学旅行って自由行動あるみたいだけどさ?岐阜って山ばかりだし交通機関とかを考えても車やバイクがないとキツくない?」


彩葉の言うとおり岐阜は観光地として有名だが標高の高い山が連なっている為、車などがないと移動が不便だろう。

自由行動があると言っても限られた場所しかいけないと言うのもなんだか面白味に欠けるが、それが高校の修学旅行というものだ。

彩葉達3人は既に自動二輪の免許を持ち、彩葉に関しては車の免許まで持っていて他の高校生と比べても移動の幅が広いので少々物足りなさを感じてしまうのもしょうがない。


今日の6時限目は修学旅行の班決めなどを行う時間としてクラスで話し合うことになっている。

まぁ…当然なのだが、この手の決め事は普段から仲の良い者同士で一緒になるのであっさり決まってしまうものだ。


もちろん彩葉達もいつもの3人でひとつのグループとして行動することになった。


「修学旅行は6月末からかぁ…アタシさ?大型二輪も取ったしそろそろ車の方も取りに行こうかなと考えてるから、今日あたり入校してこようかな」


愛琉は右肘を机につけて、右手の掌を自分の右頬に当てながら窓の方を見ながら言うとそれに関してルナが反応した。


「え!?愛琉は、もう車通うの!?準中?(準中型免許)」


ルナがそう聞くと「もち!準中だよ!」と左手をピースさせながら愛琉が言った。

この中で誕生日が1番遅いルナからしたら彩葉と愛琉は羨ましい限りだが、そうは言ってもルナだって7月15日生まれで決して遅い部類ではない。

そんなことを言ったら3月生まれの人はどうなるのやら…

早く車の免許が欲しいルナは気持ちが高ぶっていた。


「うーん、私は修学旅行から帰ってきたあとかなぁ?中免持ってるから学科は免除だし、そんなに慌てて入校しても誕生日迎えないと仮免取れないしね」


ルナがそう言うと「それでいいと思うよ」と彩葉が気持ちを落ち着かせるように言った。


そうやって話しているうちに6時限目の終わりを告げるチャイムがなり、ホームルームをやって下校となった。


彩葉達はバイク通学者用の更衣室で制服から着替えると、駐輪場へと向かった。

そういえば、まだ紹介してなかったが愛琉は大型二輪免許を取得してからナナハンのバイクに乗るようになった。


「んーー!やっぱカッコいいわ!CB750FOUR!」


愛琉は目をキラキラさせながら自分のバイクのシートをポンポンと叩いている。

HONDAの往年の名車であるDREAM CB750FOUR K0が新たな愛琉の愛車で、これは愛琉の祖父が若い頃に乗っていたバイクだという。

かなり大事にされていたらしく、キャンディーブルーグリーンに塗られたタンクとカバーが眩しいくらいにピカピカだ。

エンジン周りも錆などもなくかなり綺麗で、定期的に磨かれていたのがよくわかる。


「ここまで綺麗なK0は、バイク屋でバイトしてる私でも見たことないよ!これは雨で濡らしたくないねぇ…」


彩葉がK0を間近で見ながら言うと「まじでそれ!雨に降られたら泣く…」と愛琉は言っているが降られてしまったら別に磨けばいいし、バイクはなんだかんだ乗ってなんぼと愛琉は思っているのでそこまで神経質にはなっていない様子。


「さて!これからバイトだからアタシは行くわ!」


愛琉はそう言うとK0のエンジンを始動した。

めちゃくちゃ材質の良いワンオフの鉄管のショート管に変えられた愛琉のK0は、とてつもなく甲高い音を放っている。

これは…ほとんど直管か…でも綺麗な音だ。


「うるさ!何これ!?インナーサイレンサーの中ってほとんど詰まってない感じなの?」


ルナが耳を塞ぎながら聞くと「一応、ステンレスウールとか入ってるよ!まぁうるさいけど…」と愛琉は苦笑いしている。


愛琉は時計を確認すると「やばっ!」と言いながら少し慌てた感じで、ギアを1速に入れると彩葉とルナに手を上げて「それじゃ、また明日」と言うとナナハンの甲高い音を奏でながら校門を出ていった。


「ヨンフォア乗ってた時より楽しそうだね」


彩葉がそう言うと「走り方でわかるよね」とルナが笑いながら言うので、思わず彩葉も笑ってしまう。


「さぁ、私達も帰ろうか」


彩葉がそう言うと2人もFXとゼファーのエンジンを始動してお互い帰路についた。



バイクを運転しながら彩葉は、修学旅行はバイクで行けないかな?と思った。

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