第53話 常識外れのローマス流・修学旅行!

「えっ…嘘でしょ…」


修学旅行当日の午前8時過ぎ。

彩葉は修学旅行のバスが出発する時間に目を覚ました…

やばい…完全に寝過ごしたと思ってスマホを確認すると担任の新庄先生から何件も不在着信が入っていた、慌てて彩葉は電話をかけると新庄先生はすぐに電話に出た。


『如月さん!何時だと思っているの!?もうバスは出発したわよ!?…ちなみに二階堂さんも電話が繋がらないのよ……もっと困ったことにローマス校長先生も寝坊して個人で後から合流するとかで…』


新庄先生はかなり慌てた様子で電話越しでも冷静さを欠いているのがよくわかる。

そういえば愛琉にも電話が繋がらないと言っていたが、アイツも寝坊したんだろう…

まぁそれはさておき…校長が寝坊して個人的に合流するなんて前代未聞だろう…流石アメリカ人と言ったところだろうか…

彩葉はそう思いながら「あっ、それならば」と何かを閃いたのか新庄先生に試しに聞いてみた。


「新庄先生?愛琉には私から連絡しておきます、それと…個人的にお聞きしたいのですが、校長先生の連絡先ってご存知ですよね?私に教えて頂けませんか?ちょっと考えがありまして」


彩葉がそう言うと「え…えぇ…構わないけれど」と新庄先生が不思議そうにローマス校長の携帯番号を教えてくれた。

新庄先生には「また連絡します」とだけ言って電話を切ると、とりあえず愛琉に電話をしてみた。


『……んん…もしもし?あー彩葉…どしたの?………えぇ!?修学旅行って今日だっけ!?明日じゃなかった!?………おい、まじか…』


愛琉は寝ぼけながら修学旅行が今日と知らされ一気に目が覚めたようで、バスが既に出発したことを聞いて一気に落胆している。

彩葉は落ち込むのはまだ早いと言った感じで、修学旅行に参加できる可能性がまだあることを教えた。


「愛琉?まだ落ち込むのは早いよ!私も寝坊してバスに乗り遅れたけど、なんとローマス校長も寝坊して個人的に合流する予定でいるみたいなんだ!私、これからローマス校長に電話してみるから!」


彩葉はバスに乗れなかったのが自分達2人とローマス校長だけと言うことを詳しく話すと「校長が寝坊ってやばすぎでしょ!」と愛琉は爆笑している。

相変わらずこんな時でも能天気な奴だ…

彩葉はローマス校長に連絡する為に一旦電話を切ると、新庄先生に教えてもらった番号に電話をかけてみるとすぐに繋がって相手が電話に出た。


「もしもし!あの…ローマス校長の携帯電話ですか?……私、3年3組の如月彩葉です」


彩葉が恐る恐る電話越しに話すと、顔を見なければアメリカ人と思えないペラペラな日本語でローマス校長は話してきた。


『おはようございます!先程、新庄先生からお電話があって少し聞きました。如月さんも寝坊してバスに乗れなかったみたいですね?HAHAHA!私としたことが校長として恥ずかしいです…他にも貴女の友人の二階堂さんもバスに乗れなかったとお聞きしました。お二人のことはバイク乗りの生徒でよーく知ってますよ』


ローマス校長はある程度のことは新庄先生から話を聞いていたみたいで、彩葉は説明するのが楽だった。

彩葉はどうにかして修学旅行に参加したいとローマス校長に言うと、ローマス校長は電話越しに笑ったあとにある提案をした。


『如月さんのご自宅は石岡市の八郷でしたよね?ちょうど私はその近くのコンビニにいるので、今から如月さん家まで伺います!二階堂さんにも如月さん家まで来るように伝えてください』


ローマス校長がそう言うので、とりあえず住所を教えて電話を切った。

彩葉の家に集合してローマス校長の車でバスを追いかけるということなんだろうか?

どちらにしても修学旅行で校長の車に乗るなんて聞いたことないのだが…

彩葉はとりあえず愛琉に電話をかけた。


「もしもし?さっきローマス校長に連絡したら、私の家に集合することになったよ。………いや、詳しいことは聞かされてないよ。とりあえず準備が出来次第うちに来て!………うん、それじゃまた」


彩葉はローマス校長に言われたことを愛琉に伝えると、とりあえず2人が家に到着するのを待った。

既に修学旅行の荷造りは終わっているので、彩葉は家のガレージの前で椅子に座っていると1台のバイクがこちらに向かってくるのがわかった。

バイクの正体はzrx1200rでエンジンを停止して背の高い男性がフルフェイスを脱ぐとローマス校長だった。


「改めておはようございます、如月さん。二階堂さんは…まだのようですね」


ローマス校長は完全に見た目はアメリカ人なのに子供の頃に日本に来てこっちでの生活が長いだけあって日本人並…下手したらそれ以上の日本語で言ってきたので彩葉は「さっき連絡したばかりです」とローマス校長に言うと「了解しました」と親指をあげた。


「ローマス校長は、てっきり車で来るのかと思ってたのですが…バイクだったんですね」


彩葉はローマス校長のZRX1200Rを見ながら言うとローマス校長は鼻で少し笑ったあとに言った。


「詳しいことは二階堂さんが来てからお話しますよ」


意味深な感じで言うローマス校長に彩葉は何を企んでいるんだ?と思ったが、とりあえず愛琉が来たらわかることなので待ってみることにした。

愛琉が来るまでの間、ローマス校長とバイクの話をしていた。

ハーレーをメインで扱ってるショップの人に子供の頃に養子に迎え入れられたのに乗っているのがKawasakiなのは、単純に嫌な思い出しかなかったアメリカのバイクに乗るのが気が引けたからだと言う。

そうして話しているうちに、遠方からかなり爆音な400cc以上の太めの音のバイクがはしってくるのがわかった。


「あ、愛琉が来ましたね」


彩葉がそう言うと「凄い音ですねぇ」とローマス校長は笑っている。

愛琉は彩葉の家のガレージの近くにCB750FOUR K0を停めるとヘルメットを脱いでこっちに歩いてきた。


「おはようございます、二階堂さん!やっと遅刻トリオが全員揃いましたね」


ローマス校長が笑いながら言うと愛琉は軽く会釈をしたあとに言った。


「おはようございます、学校の長が遅刻って大問題じゃないですか?ここに来いと言われたから来てみたら、ローマス校長もバイクじゃないですか!え?もしかしてなんですが…」


愛琉はこの状況見てこの後どうなるのかわかってしまった感じで言うと、ローマス校長は何かを企んでるようないやらしい笑みを浮かべて言った。


「ふふっ、二階堂さん察しがいいですね。如月さんと二階堂さんがバイク通学者なのは知っていましたのでこの機会に岐阜までツーリングでもどうかと思ったんですよ。しかも2人は我が校で唯一のナナハンの大型ライダーなので私としても一緒に走ってみたかったのです」


ローマス校長が嬉しそうにそう言うと、彩葉と愛琉はバイクで岐阜まで行けることになった状況に「え!?本当にバイクで行けるんですか?」と彩葉が言うとローマス校長は歯を見せて笑いながら「もちろん」と親指をあげた。

まさか本当に自分のバイクで行けることになり、彩葉と愛琉は「やったー!!」と両手でハイタッチして小学生男子のように喜んでいる。


早速、彩葉はガレージからFXを運び出すとエンジンの暖機を始めた。

なんだかいつも以上にトーキョー鉄管が響いているように感じる…FXも喜んでいるのだろうか。

10分くらい暖機をするとローマス校長が自分のバイクのエンジンを始動しながら言った。


「如月さんのフェックスも十分暖機できたと思うので、そろそろ出発しましょう!一応、修学旅行なので私が先頭を走ります」


ローマス校長はそう言うと先頭の位置にバイクを移動させると、愛琉も再びK0のエンジンを始動して「それじゃ私はローマス校長の後ろ〜」と言いながら真ん中のポジションについた。

彩葉も内心、ローマス校長の後ろを走って見たかったのか軽くため息をつきながら愛琉の後ろについた。

まぁ岐阜までは長いし、その間にポジションをチェンジすればいいだろう。

3人は意思疎通が取れるようにインカムを設定するとローマス校長が言った。


「それでは出発しますよ!」


ローマス校長がそう言うと彩葉と愛琉は手を上げてOKの合図を送ると、3人はゆっくり走り始めた。


前代未聞の校長とツーリングしながらの楽しい楽しい修学旅行が始まった。

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