第35話 始業式
春休み明けの朝。
今日から高校3年生となった彩葉は家の戸締まりをするとガレージ内に停まってる新たな相棒となったz750fxを運び出すと、エンジンを始動して暖機運転をする。
「んーー!最高の音だねぇい」
ナナハン特有の太めのマフラー音に朝から酔いしれる彩葉、これから愛琉とルナと待ち合わせ予定のコンビニまで向かう。
10分程暖機をすると「さて、行きますか」とヘルメットとグローブを身に着けるとFXに跨り、ギアを1速に入れてゆっくり走り出した。
久々に味わうFXでの通学に喜びを感じながら走ってると思わずスピードを出しすぎてしまったが、そこは自分自身でリミットをかけて安全運転をして30分程で待ち合わせ場所の学校の近くのコンビニに着いた。
実はまだ愛琉とルナにはz750fxに乗り換えたことは言ってない。
愛琉とルナは既に先に着いていて、FXに乗って登場した彩葉を見て2人共驚きまくっている。
「ええーーー!!FXじゃん!え!?しかもナナハン!?え!?え!?どういうこと!?大型いつ取ったの!?」
愛琉は状況が理解できずただただ興奮してる姿を見て、彩葉は得意気な笑みを浮かべてピースをした。
ルナが「このバイクどうしたの?」と聞いてきたので経緯を話した。
「春休みにあんちゃんに山梨に呼ばれて行ったら、新しくバイクを買ったからこのフェックスを私に譲ってくれたんだ!免許は18歳になった瞬間に一発で中免を解除してきたよ!」
彩葉がドヤ顔で言うと、愛琉は「大型うらやまじぃぃぃぃ!!」とハンカチを噛みながら嘆いている。
愛琉とルナはまだ17歳なので大型二輪免許は取得ができないが既に18歳の彩葉はひと足先に大型ライダーだ。
早速、彩葉を先頭に3人で学校に向かうことにしたので各々バイクのエンジンを始動した。
明らかにナナハンの彩葉のFXの音が太く目立っている。
後ろからついてきてる愛琉は、前を走っている彩葉のFXの音に酔いしれているとあっという間に学校に着いた。
「はぁ…やっぱナナハンの音は最高だわぁ…アタシも早く誕生日こないかなー」
愛琉はすっかり大型二輪免許を早く取りたくて仕方がない様子。
ルナは「あと1ヶ月の辛抱だよ」と愛琉を言い聞かせると、ようやく愛琉は落ち着いてきた。
制服に着替えて新しいクラスを確認すると、なんと3人共同じクラスだった。
とりあえず3人で喜びのハイタッチをすると教室に入って自分の席についた。
しばらくすると担任となる教師が教室に入ってきた、なんと1年生の時に担任だった新庄先生だった。
「おはようございます、1年生の時に私が担任だった方もいらっしゃると思いますが…また担任をさせていただくことになった新庄あけみです、卒業までよろしくお願いします」
新庄先生は最初の挨拶を済ませると出欠を取り始業式が行われる体育館にクラス全員で移動する。
そういえば去年校長先生が変わったが今度の校長先生はなんとアメリカ人で名前はローマス・サカイ。
このアメリカ人の校長先生は母国のアメリカで9歳まで暮らしていたが男癖の悪かったシングルマザーの母親とその彼氏から酷い虐待を受けていたらしく、たまたま仕事でアメリカに行っていた東京の世田谷区でビンテージハーレーをメインで取り扱ってるバイク屋の店長が家から逃げ出してきた当時9歳の身体中痣だらけのローマスを見かけて英語で声をかけたのが日本に来るキッカケになったらしい。
バイク屋の店長の堺は、親から酷い虐待を受けていて助けて欲しいと言うローマスを抱きしめて虐待している親のところに案内するように言った。
堺はローマスを連れて家まで行き虐待している母親に「あなたが息子さんをいらないと思っているなら養子にしたい」と言ったところ、邪魔者を引き取ってくれる都合のいい相手が見つかったと言わんばかりに「好きにしていいわよ」と言って母親はあっさり自分の息子のことを捨てた。
ローマスを日本に連れ帰った堺は、養子縁組の手続きを一通り済ませてローマスは晴れて堺の養子となった。
堺は妻と2人暮らしで、子供がいなかった夫婦だったので養子として迎え入れたローマスを実の息子のように大事に育ててくれた。
ちなみに養子縁組が外国人の場合は性が変わることはないのだが、ローマスの場合は本国で手続きをして変更を認められている。
ローマスの外見は俳優のトム・クルーズに似ていてイケメンであり、女子生徒からも人気が高い。
9歳で日本に来てからは日本人として生活してきたので礼儀作法も日本人以上に日本人らしく、日本語も違和感ないくらいペラペラだ。
校長先生の話でローマスが手短に話し終えると始業式が終わり全校生徒は教室に戻り、ホームルームをやってこれで下校となる。
「新しいアメリカ人の校長先生は、堅苦しい長話をしないから最高ね!」
愛琉が笑いながら言っているが、確かにそれに関しては彩葉も思っていた。
基本的に校長先生の話は無駄に長い…
「この後はどうする?バイクの量販店でも行く?」
ルナがそう言うと「私はこれからバイト」と彩葉が言うと愛琉もバイトらしく、今日は駐輪場の所で各々解散となる。
バイクに乗る服装に着替えて駐輪場に向かうと校長先生のローマスが彩葉のFXを眺めていた。
彩葉が「私のバイクがどうかしましたか?」と声をかけると彩葉達の方を振り向いて話してきた。
「渋いFXをお乗りですね!私もバイクに乗るのでナナハンのFXを久々に生で拝見できて興奮してしまいましたよ!皆さん、お気をつけてお帰り下さい」
校長先生のローマスはそう言うと校長室に戻っていった。
3人各々バイクのエンジンを始動して暖機すると、「じゃあ!また明日ね!」と言って校門の出入り口で彩葉は愛琉とルナと別れた。
彩葉は学校から30~40分くらい走ってバイト先の剛のバイク屋に着いた。
彩葉が店内に入っていくと、剛に「ちょっと話があるんだ」と呼ばれて剛の方に近づく。
「彩葉ちゃん、18歳になったよな?悪いんだが車の免許を取ってきて欲しいんだ!」
急に剛に車の免許を取ってこいと言われて困ったが、とりあえず詳しい話を彩葉は聞いてみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます