第25話 彩葉激怒!仇は絶対取る!

学校のいつもの駐輪スペースで改修工事をしていてFXを停められないので、今回に限って校門外にあったスペースにFXを停めておいたのが悪かった…


帰りのホームルームが終わって、バイクに乗る服装に着替えて校門を出ようとしたら「彩葉ちゃーん!」と呼ばれる声がしたので、声がした方に顔を向けるとクラスメイトの女子が大慌てで走ってきた。


「彩葉ちゃんのバイクの近くでうちの制服を着た金髪の女の子が倒れてるんだよぉ…」


クラスメイトの子は震えた声で話すと、彩葉はすぐ察したのか「わかった!ありがと!」とFXを停めた場所まで全力で走った。

FXを停めた場所に行くと、隣のクラスの東山ルナがあばらを抑えて蹲っていた、周りには数人の生徒が心配そうに見ていた。

彩葉が「東山ぁ!!」と叫ぶと「うぅ…あぁ…きさ…らぎ…」とかすれたような声で応答する。

これは酷い仕打ちだ、あばら骨を折られるほどやられたんだろう。

先程、彩葉に東山が倒れていることを伝えにきたクラスメイトも駆けつけた。

どうしたらいいか考えていると、1台のショート管に変えられた4発のバイクの音が遠くから近づいてきたのでそちらに顔を向けるとHONDAの400FOUR、通称ヨンフォアという愛称で親しまれてるバイクで運転手を見ると今日学科試験の為に学校を休んで、無事免許を取得してすぐにバイクを楽しんでいた愛琉だった。


「オッス!とうとう免許取れた…って東山ルナ!?なんでそんなボロボロなわけ!?え?え?どうなってるの!?」


彩葉は「詳しいことは後で!愛琉は救急車を呼んで!」珍しく慌てて声を荒らげながら言うと、流石の愛琉もふざけた状況ではないことを理解したのかスマホを取り出して救急車を呼んだ。

東山は痛みで話せる状態ではなかった…


周りにいた生徒の一人が、東山をボコボコにした3人組を偶然にも状況を全て物陰から見ていたという。

彩葉が話を聞くと、3人組が彩葉のFXを盗もうとしていたところを東山が発見して3人組に1人で向かって行ったらしい。

その時の東山は大声で「このFXはアタシの恩人の大事なバイクなんだ!絶対パクらせねぇぞ!」と3人組に袋叩きにされながら必死にFXを守っていたそうだ。


それを聞いた彩葉の目から涙が溢れた…

自分の為にボロボロになってまで守ってくれた東山に申し訳ない気持ちと同時に怒りが込み上げてきた。

3人組は、昨日東山の手当てをしたショッピングセンターに行くと最後話してたらしく彩葉はすぐにFXのエンジンを始動した。

愛琉は「私も行くよ」と言うので、バイク2台で向かうことにした。

とりあえず救急車には、クラスメイトの女子が一緒に乗ってくれることになったのでお願いすることにした。


数分くらいでショッピングセンターに着いた彩葉と愛琉は、紫岡女子高の制服を着てたと言う3人組を探した。

スーパーの端の方に座り込んでる3人組の不良女子高生を見つけた、間違いなくこいつらだろう。


「ちょっといい?緑牧の前で金髪の子を怪我させたのは、あなた達?」


彩葉はいつもより低いトーンで話しかける。

紫岡の不良生徒の1人が「あぁ!?だったらなんだよ?」と因縁をつけてきたので、普段では考えられないくらいの剣幕で彩葉は睨みつけた。


「おい!テメェ!何ガンたれてんだよ!おぉそうだよ!あの金髪の女ヤッたのはアタシらだよ!」


彩葉は「アンタらは許さないからな…」と低いトーンで不良女子高生達に、相手になってやるからかかってこいと言わんばかりの態度を取った。

3人組の1人が「このアマ!テメェもアイツと同じようにしてやんよ!」と彩葉の頭を鷲掴みにしてきた。

不良女子高生の1人が彩葉に殴りかかろうとした瞬間に彩葉は相手の顎を瞬時に蹴り上げた、身体が吹き飛び不良女子高生の1人が地面に倒れた。

周りは何が起きたのか状況を整理できずに「は?」と固まっている。

愛琉は動画を撮りながら口笛を鳴らして「流石、如月蓮の妹ね」と小声で呟いた。

愛琉は彩葉から話を聞いていたので知っているが、実は彩葉は喧嘩が強い。

小学生の頃から他の人より身長や体格が小さい彩葉は、不審な人に声をかけられるケースも多かった。

しかも両親が小学生の頃には亡くなっているので、頼れるのは兄の蓮だけだったので護身術を身につけさせようと空手やムエタイの経験がある人に蓮が頼んで、彩葉を鍛えさせていた。

彩葉自身も自分が強くならないといけないという考えもあった為、蓮の知り合いのコネを使いムエタイのジムで練習をしていたものだ。

特に練習していたのは足技によるキック主体による戦い方だ、身体が小さくリーチのない彩葉のパンチでは自分より体格の勝る男性には歯が立たない。

足技ならパンチよりリーチもあり、体重の乗せ方次第では自分より体格の勝る相手にも十分通用する。

幸いにも彩葉は身体が柔らかく、足を真上に伸ばすこともできたので様々な足技を覚えることができた。

彩葉は筋がよく、運動神経も良かったので練習をしたらすぐ上達して足技のレパートリーに関して言えば兄の蓮をも凌ぐ程になった。


「さぁ、次はどっちがかかってくるの?」


不良女子高生の残り2人のうちの1人が「な、舐めてんじゃねぇ!」と向かってきたが、彩葉は強烈な蹴りを腹に入れると相手は腹を抑えて痛がっている。

彩葉はすかさずムエタイで培った蹴りを顔面にいれて蹴り飛ばす、2人共瞬殺だ。

残りの1人は彩葉の強さに完全に戦意を失ってしまい、ビビって震えていた。


「ま、待って!アタシ達が悪かった!金髪の奴には悪いことをしたと思ってるよ!アタシがあばらを折っちゃったことも…」


最後のセリフは彩葉の怒りをさらに増すことになってしまう、彩葉は「アンタが東山の…ルナのあばらをヤッたんだね?」顔は笑っているけど完全に目が笑っていなかった。

彩葉からの殺気を感じ取ったのか、東山のあばらを折った不良女子高生は恐怖のあまり涙を流して震えていた。

愛琉は「うわぁ…こぇぇ…」とふざけながら動画を撮っている。


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」


1人だけになった不良女子高生は必死に謝るが、頭を下げた瞬間に彩葉は不良女子高生の後頭部を足の甲で蹴ると、「謝る相手を間違えてんじゃねぇ!!」と声を荒らげながら不良女子高生の顔面から地面に叩きつけた。

不良女子高生は、脳震盪を起こしたのか気絶してしまう。

普段の彩葉からは想像もつかない姿で、愛琉は「やはりヤンキーの血は争えないなぁ」と漏らす。


先にやられた不良女子高生の2人は、意識があるので気絶した仲間を抱えると「この女やべぇ、強すぎる」と言いながら逃げて行った。


彩葉の怒りは落ち着いたのか、動画を撮ってた愛琉に話しかける。


「ねぇ?その撮影してた動画どうする気?見せ物じゃないんだけどなぁ…」


愛琉は「別にSNSにアップする気はないよ、後で笑い話とかのネタになるじゃん?」と笑っている。

彩葉はやれやれと言った感じで、バイクを停めている駐輪スペースまで歩き始める。


「アタシもキックボクシングを趣味でやってて、結構喧嘩には自信ある方だけど彩葉には敵わないなぁ」


愛琉がそう言ってきたが、別に彩葉も喧嘩がしたくて格闘技を学んだ訳ではない、ただ今回は友人をあんなにボコボコにされて黙っていられる訳がない。

ただ愛琉も格闘技を経験してるみたいだし、いざという時は頼りになりそうだなと彩葉は思った。


「とりあえず明日は学校休みだし、病院にルナの様子でも見に行ってみようと思うけど…てか、なんで愛琉はルナのこと知ってるの?」


学校に愛琉が来たときに東山ルナのことを知ってるような口ぶりだったのを思い出した彩葉は、聞いてみた。


「あーだって中学同じだしね!でもあんな派手な子じゃなかったけどねぇ」


なるほど、そういうことだったのね。

つまり愛琉は中学時代のルナを知る存在という訳だ。

彩葉は「明日は愛琉も行く?」というと、もちろんと頷いた。


とりあえず今日はこれで解散にしようと愛琉に言うと、「それじゃ、明日ね」とヨンフォアのエンジンを始動して手を振りながら走り出して行った。

そういや、あのバイクはどうしたんだろ?と気になったがそれは明日聞けばいいか。


彩葉もFXのエンジンを始動して帰路についた。



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