第24話 高校デビュー?GW明けデビュー?
GW明けの久々の学校に登校した彩葉は、いつも通りFXを駐輪スペースに停めて制服に着替える為にバイク通学者向けに用意されている更衣室へ向かう。
彩葉は、バイクに乗る時の格好から制服に着替えると教室に向かった。
教室に向かう最中ですれ違う生徒達の雰囲気がなんだかGW前と違う感じがした、気のせいだろうと思って教室に入ると先程の妙な違和感の正体がわかった。
クラスの同級生達の制服の着こなしや髪型などがGW前と変わっている、なんというか学校に慣れてきてハメを外し始めてきたという感じだ。
入学当初は比較的大人しそうな感じの人も、別人のようにハッチャケている。
一体何があったの?って聞きたくなる感じだ…
愛琉は今日はずる休みしている、正確には普通二輪の卒検の為に休んでいて明日は学科試験の為に休むらしいが、まだ卒検受かると決まったわけじゃないのに気が早すぎる気がする。
2時限目の授業が終わった休み時間に、愛琉からLINEがきて「卒検受かったぜぇい!!いぇーい!!」という文章に喜びを表すスタンプを送ってきた。
彩葉は「おめでとう」というと、突然愛琉から着信が入った。
『もしもーし!いやぁ受かっちゃったぁ!あとは嫌いな学科試験だけだ…』
愛琉が憂鬱そうにしてるが、あと残すところは学科試験のみだ。
GW明けの学校はどう?と聞いてきたので、彩葉が感じた現状を話すと愛琉は「あーはいはい」と言った感じで電話越しに笑っている。
『それはアレだな、高校デビューってやつだよ』
彩葉が何それ?と言った感じで聞き返すと、愛琉が簡単に説明してくれた。
『高校デビューってのは、中学で目立つような感じじゃなかったのに高校で垢抜けた格好になったり振る舞いが不良じみた行為をするようになった人のことだよ、まぁ彩葉が言ってた今のクラスの雰囲気みたいな感じかなぁ』
確かに言われてみたら…そんな感じかも。
まぁ別にだからと言って彩葉は、人の自由だし気にしないが愛琉は高校デビューしまくりの輩が嫌いらしい。
高校デビューというよりGW明けデビューが正しい気もするが…
休み時間が終わるので電話を切った彩葉は、次の授業の準備をした。
授業はとりあえず適当に聞き流してるうちに、今日の授業も終わってホームルームをやって下校となる。
クラスメイト達は、水戸駅のゲーセンやら買い物に行くみたいだけど彩葉はこれから買い出しに行かなければならない。
彩葉は更衣室で制服からバイクに乗る格好に着替えると、駐輪場に行ってFXのエンジンを始動する。
とりあえず笠原のショッピングセンターにでも行くことにした彩葉は、FXで校門を出た。
学校から少し離れた場所まで来たところで彩葉は、横道に逸れた畑道に制服を着た女子高生が倒れてるのを発見した。
気になった彩葉は、FXを倒れてる女子高生の近くに停めて確認してみた。
驚くことに彩葉と同じ高校の生徒が顔と手足に痣や傷だらけで激痛で苦しんで立ち上がれないでいた。
容姿は金髪でギャルと言うより不良少女と言った感じだ。
「大丈夫!しっかりして!」
彩葉は大慌てで傷だらけの少女の元へ駆け寄る。
「うぅ…いてぇ…アンタは…隣のクラスの如月か?」
彩葉はこの生徒と面識はなかったが、原付以上のバイクで通学してる1年女子として学校内でもちょっと有名な彩葉は、ほとんどの同学年の生徒から知られていた。
「なんでこんなところで傷だらけで倒れているの?誰かと喧嘩でもしたの?それとも一方的に大勢に袋叩きにされたとか?」
彩葉がそう聞くと、「うるせぇな…アンタには…関係ねーだろ」とつっぱねた返答をする。
やれやれ、たぶんこれは誰かに袋叩きにされたんだろうと思った彩葉は、とりあえず傷の手当てをする為に薬局のあるショッピングセンターまで歩けるか聞いてみた。
「あなた歩けそう?ここから少し歩いたところにあるショッピングセンターまで一緒に行こう、そこにある薬局で包帯とか消毒液を買って手当てしないと」
不良少女は「まだ…痛みが引かねーよ…てか余計な…お世話だよ!」とまだつっぱねている。
全く…不良っていうかグレた悲しい少女だなと思ってると偶然にも1台タクシーが通りかかった。
彩葉は、瞬時に何か閃いた感じでタクシーに合図を送って停車させる。
「すみません、この怪我をしてる子をここのショッピングセンターまで送迎してもらっていいですか?料金は着いたら私が支払いますので」
運転手は「わかりました、彼女大丈夫なんですか?」と心配そうに見ている。
彩葉は倒れてる不良少女の肩を貸してやり、タクシーに乗車させる。
「全く…とんだお節介女だな…テメェは…」
不良少女がそう言うと彩葉は「傷だらけで倒れてる人を放っておけないでしょ」と言ってタクシーのドアを閉めて、後ろからFXで追走した。
ショッピングセンターに着くと、タクシー料金を彩葉が支払って不良少女をとりあえずベンチに座らせた。
痛みが引いてきたのか、不良少女はかろうじて歩けるくらいにはなった。
彩葉は「私は如月彩葉、あなたは?」と名前を聞くと不良少女は「東山ルナ」と名乗った。
隣のクラスに東山という一人だけやたら浮いた金髪のヤンキーがいるという話は、聞いていたがまさかこの子だったとは。
彩葉と東山は、薬局に入ってとりあえず消毒液や包帯、絆創膏、鎮痛剤、ミネラルウォーターを買うと先程のベンチに戻ってきて早速、処置をした。
東山は彩葉に対して少し心を開いたのか照れながらも礼を述べた。
「一応、礼だけは言うわ…ありがとよ」
彩葉は改めて誰にやられたのか聞いてみた。
「紫岡女子高の一部のツッパってる女子生徒達だよ」
紫岡女子高は、彩葉や東山が通う緑牧高校の近くにある女子高で全校生徒の8割は普通の生徒だが、2割は手のつけられない不良生徒もいると言われている学校だ。
下校中に紫岡女子高の不良生徒の肩にぶつかって口論になって袋叩きにされたという。
最近ではそんなシチュエーションは、ドラマやアニメくらいでしか見ない…まさか今時現実でもあるなんて…
「アタシはさ、こう見えて中学時代は大人しくてイジメられてたんだよ…だから高校に入ったら舐められないようになってやると思ってたんだよ」
うーん…なんか昔のヤンキー漫画に出てくる元いじめられっ子の主人公みたいな感じなのかな…
ハッタリと強運だけで成り上がる主人公の漫画とか蓮が持ってて読んだことあったなぁ。
東山は、FXの方を見て気になってたことを彩葉に聞いてきた。
「なぁ?この渋い単車どこで手に入れたんだよ、アンタはどう見てもバイクなんて無縁そうだし意外だなぁと思ってたんだ」
彩葉は地元が交通機関が乏しいことや、亡き父がバイク乗りでFXは父が残してくれたものと話した。
東山は「かっけー親父じゃんかよ」と知り合って初めて笑った顔を見せた。
この東山っていう隣のクラスの不良生徒は、そこまで悪い子には思えない。
きっと中学時代の環境が今の彼女を作り上げてしまったのだろう。
「アタシは喧嘩が強くなりてぇ、強くなってアタシを馬鹿にした連中を見返したい」
いや、それはちょっと違うのでは…と思ったけど言わなかった。
東山は「そろそろ帰んわ、じゃあな」と言うとゆっくり歩いて帰って行った。
彩葉は少し心配だったがここから家も近いみたいなので大丈夫だろうと判断して、彩葉は自分の買い出しを済ませた。
今日もいろいろあった、帰ってカレーでも作ろう。
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