第12話 二階堂愛琉

校門を出ようとしたら呼び止められた。

横を見るとモデル顔負けのスタイル抜群の美人の少女がいた。


「如月さんのバイクだったんだね、そのフェックス」


フェックスの愛称で呼ぶということは、この人はバイク好きなのかな?それとも彩葉と同様に誕生日が早くて既に免許持ちなのだろうか。


「まだ誕生日迎えてないから免許はないけど、私もバイク好きなんだ!お父さんが趣味でサーキットとか走りに行くんだけど私はそこで乗り方を教わって走ってるんだ」


なるほど、サーキットなら免許がなくても確かに走れる。

どこかで見たことある顔だと思ったら、彼女は同じクラスのよく授業中居眠りしている「二階堂愛琉」という子だ。

羨ましいくらい身長が高くてスタイルが良い…

愛琉は誕生日が5月2日なので、彩葉と1ヶ月違いらしい。

一発試験で取ったという彩葉の話を教室で聞いていた愛琉は、話をする為に校門近くで待機してたんだとか?


「如月さんが一発試験で免許を取ったことを聞いて、受験する際の注意点を聞いておこうと思ってね」


彩葉は自分がやってきたことを全て愛琉に教えた。

愛琉は「えぇ!?そんな厳しいの!?マジかよ~」って頭を抱えていたが、既に乗り方がわかってるのに教習所に通うのもなんか馬鹿らしいのはわかる。

やっぱ教習所に通った方が確実かな?って悩んでいる愛琉に彩葉は言った。


「二階堂さんは、我流で技術を身につけてしまってるから試験の正しい乗り方を学ばないと合格するのは難しいと思うよ」


普通二輪免許所持者が排気量制限解除目的で大型二輪免許を取得する際に一発試験を受験する者も多いが、公道での我流の癖が出てしまい問答無用で不合格にされてしまうケースが多い。

大型二輪免許は、基本的に普通二輪免許を所持してないと教習所で入校できない所がほとんどで、彩葉や愛琉が住む茨城県では全ての教習所が普通二輪免許を持ってることが前提となっている。

愛琉は、腕を組んで考えると「私には、きっちり正しい乗り方で一発試験は無理だー」頭を掻きながら笑いながら言う愛琉。

父親に頭を下げて教習所に通わせてもらうと言ってたが、サーキットで娘に乗り方を教えるような父親なら余裕で金を出してくれるだろうと彩葉は思った。

スマホを取り出した愛琉は、LINEのQRコードを彩葉に提示しながら言う。


「如月さん!LINE交換しようよ!私、バイク乗りの女の子と仲良くなりたかったんだよぉ、しかも如月さんめっちゃ小柄で美少女なのにバイク激渋だしギャップ萌えやばいし最高だよ」


彩葉は「ふふっ、あなた面白いね」と思わず笑ってしまった。

彩葉にとってもクラスメイトとLINEを交換するのは、初めてなので嬉しかった。

まさかバイクに乗ったことでこんな繋がりができるとは思わなかっただろう。


「よろしくね、二階堂さん」


彩葉がそう言うと、「愛琉でいいよぉ、私も彩葉って呼ぶね」と彩葉の頭をポンポン叩きながら言う。

身長差があるのでまるで大人と子供みたいだが、同級生だ…なんなら彩葉の方が誕生日が早い。


「それじゃ、私はお父さんが迎えにくるからまた明日ね!気をつけてね彩葉」


そう言うと手を振りながら愛琉は走っていった。


二階堂愛琉…あの子とは長い付き合いになりそうな予感がするなぁと思いながら、彩葉はFXのエンジンを始動する。

バイクに跨がろうとしたらLINEの通知が鳴ったので確認すると早速、愛琉からLINEがきた。


『彩葉!お父さんが教習所のお金を出してくれることになったよ!やったー!』


はやっ…

全く本当に面白い子だなぁ。

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