第11話 バイク通学

月曜日の朝、6:00にお馴染みのアラームで目が覚める。

いつも通り朝食を済ませて制服に着替える。

ただ、今日からはバイクなので通学の時だけは露出の少ない格好で行くことになる。

制服に着替えて彩葉は思った、制服でバイクに乗って通学していいのだろうか?

校長の趣味でバイク通学を禁止してないとはいえ、制服のままってのはどうなのだろう。

彩葉は気になって生徒手帳のバイク通学に関する項目を確認すると、「原付バイクは制服での通学可、普通二輪車は制服での通学を禁止とする」と書かれていた。

私服と制服を別にすると荷物になる為、彩葉はブレザーの上に大きめのサイズのジャンパーを着て制服のスカートの上から黒のスキニーパンツを履いた。

細身の彩葉なら制服の上から重ね着も余裕だろう。

バイク通学者の為に100円が払い戻しされるタイプのロッカーがあると生徒手帳に書いてあった為、帰り際にロッカーに制服を入れて私服で帰ってこよう。


家の戸締まりをして玄関に鍵をかけた彩葉は、家の車庫からバイクを運び出す。

暖かくなってきたので、チョークを半分ほど引いて燃料コックをONにしてエンジンを始動して暖機をする。

暖機中にバイクを眺めるのも悪くないね。

チョークを戻してあと5分ほど暖機をする。


「さて、行きますか」


バイクに跨がりサイドスタンドを解除して彩葉は、ふと思った。

足つき悪いな…いや彩葉の身長だとどれに乗っても足つきは悪いだろうが…

ただ、身体能力が比較的高い彩葉は引き起こしやセンタースタンド立てもすぐコツを掴んでこなしてみせたし、なんなら一発試験で免許取得をしたくらいだからなんら心配することはないだろう。


彩葉は学校に向かって走り出す。

入学式の時に京香に送ってもらったルートで行くことにした。

裏道を抜けて大通りに出て、県道43号線を岩間IC方面に向かって走っていく。

信号が赤になって停まると、隣にあるコンビニの駐車場で休憩してるライダーが彩葉とFXの組み合わせを見て「え!?」って顔をしていた。

まぁ誰が見ても40代、50代の男性が乗っているだろうと思うだろう。

信号が青になり1速に入れて走り出す彩葉。

今日は気温も程よくてバイクに乗っていると気持ちいい、毎日こんな感じなら最高だけどなかなかそうもいかない。


県道59号線と交差する信号を水戸方面に曲がる。

あとは実質一本道でそこまで複雑なルートではない。

水戸市に入ると国道50号線の手前の信号を右折して細道を抜けて学校の校門に入っていく。

案の定、注目の的になった彩葉はバイクも停めて可能な駐輪スペースにバイクを停めた。

一部の生徒からの視線が凄かったが、とりあえず彩葉はハンドルロックをしてロッカーに着替えに向かう。

制服に着替えて教室に入ると、バイクで校門を入ってきた彩葉を見ていたクラスメイトの男子達が彩葉に群がってきた。


「如月さん!バイクで登校してたよね!?いつ免許取ったの!?」


彩葉は指導員をやってる知り合いに私有地で運転を教わったこと、金銭面の都合で教習所ではなく一発試験で受けたことや亡き父が残してくれたバイクを乗っていることを話した。

男子達は「すげー!!」「俺もバイクの免許欲しいなー」と大はしゃぎだ。

彩葉の話で盛り上がってると担任の新庄先生が「はい、静かにー」と教室に入ってきた。

ホームルームが始まると、彩葉のバイク通学の件について先生が彩葉に話す。


「如月さん?先ほどバイクで通学してくるのを見ましたが、うちの高校では自動二輪車での通学の場合は申請書が必要になりますので免許証を持って帰りに職員室に来てくださいね」


彩葉は「わかりました」と返事をすると先生は続けて言った。


「くれぐれも事故には気をつけて下さい。皆さんも自動二輪車での通学を考えてる方は、私に報告してください。」


流石にバイクで通学となると学校側も把握しておきたいと言ったところだろうか。

自動二輪となると自動車と同じ道交法になるので原付とは違ってくる。


帰りのホームルームが終わると彩葉は職員室へと向かう。

そこで担任の先生から、簡単な申請書の用紙を貰い免許証の番号、有効期限、免許区分を書いて提出した。

先生は「如月さんがバイク通学するなんて意外でした」と言われたが、確かに彩葉はバイクを乗るような雰囲気には思えないが人を見かけだけで判断してはいけないと思わされるいい見本なのかもしれない。


職員室を出てバイク通学者向けの更衣室のロッカーに制服を入れて私服に着替えた。

制服は持ち帰ると荷物になるし、鍵付きのロッカーなので制服はこのまま入れておいていいだろう。

駐輪スペースに行くと彩葉のFXの周りにクラスメイトが群がっていた。

「あぁ…まぁそうなるよね…流れ的に」と思った彩葉はとりあえずバイクの元へ行く。

クラスの一部の男子や女子は「かっこいい!」「うおっ!FXじゃん!」「如月さん、華奢で小柄なのにこれに乗ってるなんて凄い」など彩葉とFXに興味津々だ。

1人のクラスメイトの男子が彩葉に免許のことで聞いてきた。


「まだ4月なのに免許取れるってことは、如月さんは4月生まれってことだよね?免許を取るのっていくらかかるの?」


そう聞かれた彩葉は、朝の時に教室で説明したはずなんだけど…その時はいなかったのかな?と思い改めて説明する。


「私は4月2日が誕生日だから免許取得に関しては恵まれてるんだ、ちなみに私は試験場で一発試験で取ったから全部で25000円くらいだったけど教習所に通うと200000円くらいかな…」


それを聞いたクラスメイト達は「うわぁ…高いなぁ…」と高校1年生には、なかなか厳しい金額だ。

話を聞いていたクラスの男子には「俺も一発試験ってやつで取ろうかな」って言ってる人もいたが、彩葉は練習できる環境が整ってないと合格するのは未経験者では厳しいし現実的じゃないよと付け足して説明する。


彩葉は「家遠いからそろそろ帰るね」と言うと、半分チョークを引いてキーONにしてセルスイッチを押してエンジンを始動した。

駐輪スペースに響き渡る音に、クラスメイト達はめちゃくちゃ驚いていた。

チョークを戻して数分暖機をする。

クラスの男子達は「いいなぁ…俺もバイク乗りたいなー」と羨望の眼差しで彩葉を見ている。

他の女子達は「私にはバイクは無理そう…」と言う人がほとんどだった。

ヘルメットとグローブをして、バイクを取り回してバックさせると進行方向に向けて彩葉はバイクに跨がる。

彩葉は「それじゃ、また明日ね」と言うとクラッチを握りギアを1速に入れてスロットルを小刻みに2回吹かし、そのままゆっくりと走り出す。

彩葉が走り去っていく姿を見ていた男子達は、ギャップ萌えでやられてやばい奴になっていた。


校門を出ようとした瞬間に、彩葉のFXの音に消されないように大きな声で「如月さん!!」と呼ぶ声が横からしたのが聞こえて彩葉は停車した。


声がした方向へ顔を向けると、そこにはモデル顔負けの身長とスタイル抜群の美人な生徒がいた。


見覚えがある…確かこの人は…

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