第19話 決意の日とサッカー選手、瑞稀と

あともうちょいで.....クラス対抗のクラスマッチがある。

俺はその中でクラスのクラスマッチ委員に手を挙げる筈だった。

のだが.....その。

色々と結果的に俺はクラスマッチ委員は出来なくなった。

何故かというと理由は簡単。


先ず詩織も詩子も身分証明書は男である。

つまりクラスマッチ委員は男女で2つづつ。

4枠しかないのだ。


だから俺がクラスマッチ委員をするのは無理だった。

ので.....まあそうだな。

必然的に俺はクラスマッチに参加する事になった。

なのでまあ結果は同じだったという事だ。


だから結果としてはなんら変わりない展開になった。

俺はまあこれでも良いか、と思いながら窓から外を見る。

クラスマッチのサッカーとかバレーボールの分岐の話が行われている。

目の前には男装している詩織と詩子が司会を。

そして同じく女子側のクラスマッチ委員になった悠とかが司会をしている。


「という事で。クラスマッチの分岐の話になります」


「誰がベンチ入りかだね」


「.....そうだな」


相変わらず巧みだよな男言葉が。

俺は苦笑しながらその姿を見ながら外を見る。

するとクラスがワイワイと騒ぎ出す。

誰がベンチ入りか、とか。

そんなの。


「クラスマッチかー。どうなるんだろうか」


「そうだなぁ」


とか声がする。

しかしクラスマッチって面倒臭くね?

俺って体育の成績良くないし。

考えながら俺は溜息を吐きつつ空を見上げる。


そうしていると、じゃあサッカー部をメインにしてそいつらを打ち込んだ試合にしよう、という感じになった。

料理かよ?


「私としてはみんなと一緒に盛り上げたいから.....まあ勝ち負けには拘らない感じが良いかなって思う」


「.....そうだな。確かに」


「男子も女子も圧倒的に輪になっているからな」


確かにな。

それは言えるかもしれない。

俺は考えながら顎に手を添えて頷く。


そして頬杖をつきながら目の前を見る。

横に立っている先生が、じゃあみんなでくじ引くか?、という感じで切り出す。

だがそれを悠が否定した。


「推薦制でいきませんか」


「という事はクラスメイトが挙手制で選手決めをやるって事か」


「そうです。頼りの良いクラスメイト達ばっかりですし」


「それも面白いかもな。.....じゃあ出席番号順に挙手しよう」


「時間掛かりそうだが大丈夫か」


そんな感じで話し合う。

俺は、時間は無限にあるからな、と思いながら成り行きを見守る。

だが結論から言ってとんでもない事になった。

何故かといえば.....そうだな.....。

悠が俺を推薦したのだ。



「何で俺.....」


「アッハッハ。それだけクラスメイトに信頼されているって事だよ」


「そうだな」


「.....うん」


お前ら参加しない事を良い事に。

俺は机で突っ伏す。

しかも悠が切り出した途端にみんな俺を指差した。


この野郎どもめ。

3人よれば文殊の知恵とかナッシングだな。

俺は考えながら盛大に溜息を吐く。


「頑張れよ。羽柴」


「アッハッハ。サッカー部とも一応仲が良いじゃないか」


「そうだな。確かに」


お前ら.....。

男子嫌いになるぞ。

仲間と思っていたのに、と思いながら。


俺は盛大に溜息をまた吐く。

クソッタレどもめ。

でも逃げれないしな.....。


思いながら横ら辺に居るサッカー部の平松勇大(ひらまつゆうだい)を見る。

この学校のサッカー部副主将の高身長イケメン。

笑みを浮かべて手を振っていた。

呑気か。


「これで良いかな。じゃあみんな解散だ」


「「「「「おー!」」」」」


結論から言って。

俺、平松勇大とサッカー部の半分、そして何人かの選手が決まった。

それから各々立ち上がって放課後だったので解散していると。


平松が俺に寄って来た。

よ、と言いながら。

何だよ。


「少しだけ話をしても良いか」


「何の話だ?」


「.....佐藤兄弟.....じゃない。.....佐藤姉妹について.....かな」


「.....!.....お前.....」


俺は平松を見る。

何故それを知っている!?、と思ったのだが。

佐藤姉妹とは同級生だったよ。当時ね、と言ってくる。

君達はかなり仲が良いのも知っている、とも。

俺は見開きながら平松を見る。


「.....まあ片思いだけど.....僕は実は詩織さんに好意を寄せていたんだ。だけど俺は親の都合で引っ越したんだ。.....どうやらかなり厄介な事が起こった様だな。それで男装をしているんじゃないのかな」


「.....色々とお前も大変だったんだな」


「そうだな。でもこうして.....入学して再開してからビックリな事ばっかりだ。お前がようやっと男装している佐藤姉妹を見つけたからこうやって話したけどね」


「全く。知っているなら話せば良かったにな」


「そういう訳にもいかないだろ。俺は詩織さんに嫌われたくは無いからな」


その言葉に見開く俺。

やれやれ、と言いながら俺は返事をする。

すると業務を終えたのか詩織と詩子がやって来る。

帰ろうぜ、と言って、だ。


俺は頷きながら、じゃあな。平松、と答える。

平松は、ああ。じゃあまた明日な、と言ってきた。

すると小声で詩子が聞いてくる。


「.....何の話をしていたの」


「.....クラスマッチの事だ」


「そうなんだ」


すると詩織と詩子は笑みを浮かべた。

そして、じゃあ帰ろうか、と言ってくる。

俺はその詩織と詩子を見る。

なあ、と言いながら。

言うなり詩織と詩子は俺に向いた。


「お前らは.....いつ迄その殻を被るんだ?」


「.....それはどういう意味?」


「俺としてはな.....お前らの被っているその男装という手段は.....一時的な殻に入る事にしかならないと思うんだ。いつかは大人の社会に出れば.....その男装は通用しなくなってくる。.....だから.....今のうちに慣れておいた方が良いかもしれないぞ。きつい事を言っているかもしれんが」


「.....そうだね。それは知ってる」


そして頷き合う詩織と詩子。

それから、今年の文化祭。そこで全部バラそうかって思ってるの、と言ってきた。

俺は見開きながら、え.....、と言う。

詩織と詩子は、勿論その前にバレちゃったらもう隠すつもりは無い、と答える。

このままじゃいけないって分かってるの、とも。


「私達はこのままで終わらせるつもりは無いよ。高校生活を」


「.....」


「.....だから応援していて。瑞稀」


「.....言った事は言ったが俺の言葉で決意したなら無理はするなよ。お前らの事は.....大切に思っているんだから。だから.....無理はしないでくれ」


2人から強い意志を感じれた。

俺が気圧されてしまうぐらいに。

その2人の姿を見ながら俺は、ただの心配のし過ぎか、と笑みを浮かべて。

そしてそのまま帰る事にした。

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