第15話 まさかの事態
二宮恭子ちゃん。
俺が見る限りはかなり良い子だと思う。
白髪で眉毛も白くて精霊の雰囲気を醸し出している感じだ。
俺はそんな恭子ちゃんと共に恭子ちゃんの人慣れの為に遊園地に来た。
それから各々分かれて遊具で遊んでいる。
その際に俺はジェットコースターで何というか疲れてしまいベンチにゆっくり腰掛ける。
するとストローの刺さった飲み物が目の前に現れた。
俺は目を丸くしながら顔を上げる。
そこに笑みを浮かべた詩子が椅子に座る。
俺は会釈して、有難うな。詩子、と言いながら
飲み物を有難く思いつつ飲んだ。
美味いではないか。
ミックスジュースだな、と思いながら居ると。
瑞稀、と声がして顔を上げた。
「大丈夫?体調とか」
「大丈夫だ。ちょっと疲れただけさ。有難うな。感謝してる」
「まあジェットコースターなら疲れるよね。私は乗りたくない」
「まあお前の性格では乗らないだろうな」
俺は苦笑しながら詩子を見る。
む。それはどういう意味かな、と頬を風船の様に膨らませる詩子。
俺は、すまん。お前には辛いんじゃないかって意味だ。深い意味合いは無いよ、と言う。
詩子は、そう、と言いながら俺の顔を見てくる。
「ねえ。瑞稀」
「何だ。詩子」
「駆け落ちしたい」
ミックスジュースを噴き出した。
何を言ってんだ!、と思いながら目を丸くしつつ詩子を見る。
詩子はニヤニヤしている。
まあ冗談だけど、と言いながら。
「でも私は瑞稀を独占したい」
「俺はお前らには今は恋をしないって言ってんだろ。全く」
「じゃあ惚れさせたら勝ちだね。私が」
「お前さん。そういうのは.....」
「何で?勝ちだよね」
頬杖を両手で作りながらニコニコして見てくる詩子。
俺は真っ赤になりながらその姿を見る。
全くな。
可愛いんだから良い加減にしろよな。
俺は考えながら咳払いをする。
「お前は充分にやってるぞ。イチャイチャを」
「惚れさせてないから意味無いよ」
「まあ確かにそうだけども!」
「でも冗談は置いて。私ね。やっぱり瑞稀に恋して良かったって思ったよ」
私達の大切な恭子に優しいし慕われてるし。私はとても嬉しいよ、と詩子は笑顔で言ってくる。
俺はその姿にまた赤くなる。
別に。俺は当然の事をしているだけだ、と答えながらミックスジュースを飲み干す。
「瑞稀。当たり前の事じゃないよ。これ。当たり前と思っていても出来ない人も居る。だから素晴らしい事だから」
「お前に言われたら説得力があるな」
「だよ」
俺は赤面しながらカップの中の氷を弄る。
それから苦笑した。
全く。母性ありありだよな、と思いつつ。
それから詩子を見ると。
詩子は観覧車を見ていた。
俺は目を丸くしてから笑みを溢す。
「乗るか?」
「もう。子供じゃないんだから」
「子供じゃなくても乗るだろ。さあ行くぞ」
ゴミ箱にカップを入れてから。
俺は言いながら早速と立ち上がる。
それから詩子の手を握る。
すると詩子はビクッとしながら手を赤くなりがら握ってくる。
「えへへ。2人だけの秘密」
「そうだな。2人だけの秘密だな」
それから俺達は観覧車乗り場に来てからチケットを購入して。
観覧車に乗り込んだ。
そして笑みを浮かべ合う。
こういうのか好きなんだな詩子は。
「高い!良いなぁ」
まさに子供の様なはしゃぎっぷりだ。
立ち上がってからゴンドラの外を満面の笑顔で見ている。
俺はその姿を柔和に見ながら外を同じく見る。
確かに町が、海が。
小さく見える。
すると、ねえ瑞稀!あそこら辺に行きたいね!、と海辺を指差す詩子。
俺は、だな、と笑みを浮かべて返事をする。
「こういうのが好きなんだな。詩子」
「お父さんに連れて来てもらってから好き」
「そうなんだな」
そんな会話をしていると。
強風故かゴンドラがいきなり揺れた。
その弾みで詩子が倒れてくる。
キャッ、と言いながら。
危ない!!!!!
俺はキャッチをしたが。
その際に俺を壁ドンする形でバランスを立てた詩子。
気が付くと。
唇と唇が見事にかさ.....なっていた。
ほあ!?
「?!!?!」
「.....!」
まさかのキスをしてしまっていた。
事故とはいえ何という事だ!
俺は真っ赤になりながら勢い良く俺から離れた詩子を見る。
椅子に座って硬直している。
目を回しながら。
「だ、大丈夫か?詩子?」
「!?」
ゴンドラが到着した。
それからなりふり構わずな感じで勢いよく逃げて行った詩子。
俺は赤くなったまま。
次に青ざめながら。
やっちまった、と思う。
「まさかバランスが崩れてこんな事になるとは.....」
俺は唇の感触を確かめながら。
ボーッと目の前を見る。
それから階段を降りてから歩く。
そうしていると目の前から3人が来た。
詩織と恭子ちゃんと悠だ。
「お兄ちゃん」
「?.....瑞稀大丈夫?」
目をパチクリして心配げな顔の3人。
正直大丈夫では無い。
心臓が痛い。
あまりにヤバい出来事で。
不意打ちとはいえ詩子と付き合っても無いのにキスをしてしまった。
これは詩子が傷付いたんじゃないか?
しまった.....どう顔合わせをしたら良いのだろう.....この先。
思いながら俺は胸に高鳴る心臓を抑える様に手を添えた。
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