第14話 お兄ちゃんと呼んでも良いですか
天才故に、か。
俺は考えながら教科書を見る。
数学の教科書を、だ。
何というか今までずっと俺は天才ってのに憧れていた。
でも天才過ぎる人は.....普通が欲しい人も居るんだなって思う。
「.....それを受け止めている詩織も詩子もスゲェもんだな。俺も.....まだまだだ。しかし.....12歳で飛び級で高校生、か」
大変だったんじゃ無いだろうか。
俺は思いながらスマホを見ていると。
スマホにメッセージが入って来た。
それは.....詩織だ。
そっちに恭子が行かなかった?、とメッセージが入っている。
(確かにな。来たぞ。お前らの憧れている人を見極める為に)
(だよねぇ。恭子.....初めての人には警戒するからね。ゴメンね)
(でも良い子じゃないか。あの子は。天才故に何か難しい点もあるけど)
(私はその点も個性だって捉えているから。家では可愛いんだよ?あの子)
(そりゃお前らの親戚だったら可愛いだろ。当たり前だ)
全く.....そうやって瑞稀は、と赤面している様な。
そんな感じでメッセージを送ってくる。
俺はそのメッセージを見ながら笑みを浮かべつつ。
でもお前らの親戚だから少しだけ緊張したから良かったよ。あんな良い子で、と返事を書いて送信する。
(瑞稀だからだよ)
(何がや)
(瑞稀だからあの子も受け入れたの。貴方を)
(俺ってそんな良い野郎かね?)
(他人がどう思っているとしても私は貴方が良い人だって知っているから)
それは詩子もだよ、と書いてくる詩織。
俺はその言葉に赤面しながら、オイオイ、と返事を書いてから送信する。
すると詩織は、私は瑞稀が好きだからそんな事を言っているんじゃない。瑞稀は必要な時に怒ってくれて。そして瑞稀は必要な時に泣いてくれて。だから私は貴方が好きでもあり。大切な人と思っているから、と送ってくる。
(殺す気かお前は。恥じらいで。良い加減にしろ)
(私はありのままを知っているからそれを伝えただけさ。アハハ)
(全くお前は。それにしても守ってやらないといけないな。恭子ちゃんは)
(そうだね。お爺ちゃんもそれ相応に協力してくれるけどでもやっぱり私達だよね。一番必要であるのは)
そうだな、と俺は返事を書く。
それから送信してから天井を見上げる。
必要である人、か。
確かにその通りだな、と思う。
俺は先輩として.....彼女を迎え入れれるだろうか。
(俺は恭子ちゃんに出会ってから世界が変わった様だ。お前らに出会っても。幸せ者だよな俺)
(そうかな。それって当たり前だと思うけど)
(そうは思わないな。俺はこれを幸せが産んでくれたものって思っているけど)
(瑞稀がそう言うならきっとそうだね。じゃあ私も1日1日を噛み締めて歩かないと)
(ああ。何気ない日々は奇跡だ)
彼女を見ていると。
健康すらも大切って思えてきた。
そしてこの出会いも大切と。
そう思える気がする。
俺は考えながら笑みを浮かべる。
(そうだ。ねえ瑞稀)
(何だ)
(私と買い物に行こう)
(オイ。それってデートか)
んば!?違うよ!!!!!、と否定してくる詩織。
何だよじゃあ、と思いながら俺は詩織にメッセージを送る。
すると詩織はこんなメッセージ。
私達と瑞稀と恭子で出ないって意味だけど!!!!!でも勘違いする文章でゴメン!!!!!、と送ってくる。
俺はクスクスと苦笑した。
そして、分かってる。説明してくれて有難うな、とメッセージ。
(遊園地に行こうよ。今度)
(遊園地に?それで慣れさせるのか?恭子ちゃんを人に)
(時間は無いからね。今週で)
(いきなりだな。大丈夫なのか恭子ちゃんは)
(うん。何とか了承は得た)
そうか、とメッセージを送ると。
あ、そうだ、と言ってくる。
俺は、?、を浮かべて見ていると。
悠も誘わない?、と書いてきた。
(じゃあ5人で行くのか)
(うん。楽しく行かないと意味無いよね。こういうの)
(そうだな。まあ確かにな)
(だから悠も誘おうよ)
(分かった。じゃあ悠にメッセージを送る)
それから俺は一旦話を切ってから。
そのまま悠にメッセージを送る。
すると、当然OK、とメッセージが来た。
俺は目を丸くしながらも、そうか、とメッセージ。
そして時間は進み週末になった。
来週が.....一応クラスマッチ。
そしてその次が入学式。
一応この学校は遅めの入学式なので.....そうなっているが。
☆
「イースターデー!」
「.....お、おう」
「.....」
その声に俺達の背後に警戒しながら隠れる恭子ちゃん。
俺はその姿に苦笑しながら悠に聞く。
イースターデーって何だ、と。
すると、あれ?知らない?最近.....遊園地とかで結構やってるんだよ。イースターデーに関するイベント、と言ってくる。
「キリスト教のお祭りなんだよ。.....まあ説明が長くなるからそれだけにしておくけどね」
「.....春分の日の後じゃ無かったかな。それ」
「詩子ちゃん。この遊園地は4月いっぱいはやっているんだ。イースターデー」
「そうなんだね。ウサギと卵だよね?確か」
「そうだね」
そんな会話をしている3人を見ながら。
俺の袖を掴む恭子ちゃん。
何だか嫉妬している様に見える。
お姉ちゃん達が取られた、と思っている様だ。
「安心しな。悠は結構良い子だから」
「そうは言っても何だか嫉妬します」
「.....まあそうだな。お前のお姉ちゃん達だしな」
そうしていると後ろから、うわ。白髪だわ。ババアじゃん、と若者の声がした。
俺は睨みつける様に背後を見る。
そこに制服姿の女子高生が2人が。
今、何か言った?、と思いっきり威圧して聞いてみると。
何でも無いです、と去って行く。
「ったくこのクソッタレが」
「.....」
「.....どうしたの?恭子ちゃん」
「格好良いです。直ぐに対処してくれて有難う御座いました」
言いながら恭子ちゃんは、今から瑞稀さんの事はお兄ちゃんって呼んでも良いですか、と言ってくる。
俺は、え。まあ.....良いけど、と俺は目を丸くする。
恭子ちゃんは、有難う御座います、と表情は崩してないが柔和な雰囲気を見せた。
「お姉ちゃん達と同じです」
「.....そうか」
「有難う御座います」
「当然の事をしたまでだ。感謝される謂れは無いよ」
そして前を見ると。
3人とも柔和な感じで俺達を見守ってくれていた。
俺達はその姿を見ながら。
まあ俺だけだが笑みを浮かべる。
「行こうか。今の事なんか忘れて。な」
「.....わかりました。有難う御座います。お兄ちゃん」
頷く恭子ちゃんを見ながら。
俺は華奢で今にも折れそうな手を几帳面に握ってから歩いて行く。
そして5人でそれぞれの場所に向かってみる。
乗りたい乗り物とか探しながらであるが。
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