第13話 純白の天使

しかしクラスマッチか。

俺は考えながら.....顎に手を添える。

それから帰った自宅であれこれ思い出す。


まあそうだな。

クラスマッチの委員をするってのも良いかもしれない。

俺は去年、クラスメイトに運動音痴で迷惑を掛けた。

それを考えるなら考えても俺は委員をやっても良いと思う。


「.....」


そんな事を思って勉強していると。

インターフォンが鳴った。

俺は、?、を浮かべてからそのままインターフォンを覗くが画面上に誰も居ない。

何だこれは?.....悪戯か?

俺は思いながらリビングから出てから。


そのままドアを開けると。

精霊の様な女の子が居.....た。

何というか白髪で全てが真っ白で。


今にも消えてなくなりそうな感じのおっとりした感じの低身長。

俺は見開きながら、誰でしょうか.....、と聞いたが。

次にハッとした。


「君.....恭子ちゃん?」


「初めまして。その通りです。.....私は二宮恭子です」


「.....初めまして.....っていうか何故に俺の家に?」


「.....お姉ちゃん達がお世話になっていますので挨拶をと思いまして」


「それはまた律儀な。.....有難う」


全身を見る。

白のワンピースで.....白のポーチで純白天使。

全てが真っ白である。

何処が真っ白じゃ無いかぐらい真っ白。


肌も白い。

だがその中で顔立ちも相当整っている。

黒子一つも無い様な感じ。

思ったが.....これは相当な美少女だ。


完璧に近いぐらい完璧。

恐らくもう少し身長が伸びれば.....八頭身になればモデルになれるぐらい精霊に近い感じの雰囲気である。

消えて無くなりそうで怖いんだけど。


「.....君.....恭子ちゃん可愛いね。そう言われない?」


「.....私は可愛いとか分からないですから」


「そ、そうか。すまん。なあ。家に入るか」


「.....そうですね。人目が嫌いなので入らせてもらうと有難いです」


「ああ。すまない」


それから家の中に招き入れると。

唯一、緑の模様の入っていた帽子を脱いでから白髪を見せる。

俺はその姿を見つめていると。

あまり見ないで下さい、と俺から真顔で目を逸らす。

これは失敬、と言いながら台所に向かう。


「白髪が気になるんだな」


「.....そうですね。白髪はイジメの根源ですから」


「.....」


「十円ハゲと言うんですかね。髪の毛を引き抜いてそういう事になったりしました」


「.....苦労しているんだな」


「そうですね。だいぶは」


それから言葉は途切れた。

俺はその事に困惑しながらもだったがジュースを入れて、好きか分からないがオレンジジュースだ、と出してみる。

するとそれをペコリと頭を下げて飲んだ。

そして一口飲んでから俺をジッと見る恭子ちゃん。

な、何でしょう。


「お姉ちゃんが.....惚れていますよね。瑞稀さんを」


「.....そうだな。そうはっきり言われるとちょっと恥ずかしいが」


「.....何故お姉ちゃん達に返事しないのですか。約束をしていたんじゃないのですか」


「10年以上前の約束だ。俺の想いは変わったんだ。それで返事が出来ない」


「.....それは好きな人が出来たとかですか」


「違う」


断じてそれは違うから安心しろ、と俺は言い聞かせる。

すると精霊の白髪の眉毛の瞼が動いて。

目を伏せた恭子ちゃん。

それから、そうですか、と返事をしてくる。

俺は、ああ、と答えた。


「私はお姉ちゃん達を好きになってほしいです。お姉ちゃん達は.....私が一番信頼している人達です」


「.....その様だな。お前は.....詩織も詩子も好きなのか」


「.....当たり前です。かけがえのない存在です」


「そう言われてアイツらも嬉しいだろうな」


「そうですね」


その様に言いながら目の前の教科書を見る精霊ちゃん。

俺は、?、と浮かべて見ていると。

私の年齢を知っていますか、と聞いてくる。

それは分からない、と話すと。

私は12歳です、と言って.....は?


「飛び級です」


「.....まさか.....じゃあ君は頭が良いのか?」


「自慢じゃないですが宇宙飛行士の検定レベルには頭が良いです。.....そんなものがあって何になるのか分かりませんが。私は絆が欲しいです。だから高校に、お姉ちゃん達が居る高校に入りました。でも飛び級も1年生までが限界でした」


何故でしょうね。周りはみんな期待してくるんですけど結局は酷い皮の被った連中です、と言ってくる恭子ちゃん。

俺は、それで身長が低かったのか、と納得しながら恭子ちゃんを見る。

これが高校の教科書ですか、と質問してきた。


「.....そうだな。2年生の教科書だ。君には退屈かもしれないが」


「.....退屈ですね。関数なんて数秒で解けます。この程度なら」


「君は普通を選んでもお姉ちゃん達と一緒に居たいんだな」


「.....ようやっと飛び級が認められたのが12歳でした」


だから私の夢がようやく叶います。

と涙を浮かべて真珠の様な涙を流す恭子ちゃん。

俺はその姿を見ながら真剣な顔をする。

小学校は特別階級でしたけど.....飛び級が認められない学校でした、と語る。

イジメもこの身長と天才のルックスが相まったって事か。


「日本という国は.....最低です。.....でもようやっと認めてくれたから.....多少は見直しました」


「.....そうだな。まあガバナンスは最低だよな」


「そうですね」


「.....」


俺は恭子ちゃんに聞いてみる。

IQは今でどれくらい有るんだ、と。

すると私は200あります、と答えた。

そうか、と俺は答えながら笑みを浮かべる。


「.....天才だな。だけどお前は普通が好きなんだよな」


「.....驚かないんですか」


「それで驚いて何になる。俺は.....お前を見直した。お前は.....偉い女の子だ」


「.....不思議な人ですね。噂はかねがねでしたが」


俺を見ながら真顔のままオレンジジュースを飲む恭子ちゃん。

その姿を見ながら、でも、と切り出した。

それから、お姉ちゃん達が惚れたのも理解出来ます、と答える。

私は貴方が興味深いです、と言いながら。


「もし良かったら貴方を支えても良いですか」


「.....それはどういう意味だ」


「お姉ちゃん達と結ばれるのを応援しても良いですか、という意味です」


「そうしてくれたら有難いな。なら俺はお前を支えるよ」


「.....私なんかを支えても意味無いですけどね。所詮は天.....」


「ああもうまたそれか。ごちゃごちゃウルセェな」


俺は怒る。

そして恭子ちゃんを睨んだ。

それから唖然とする恭子ちゃんを見ながら頭を撫でる。

柔和になる俺。

あのな。天才がどうした。お前は必死に争っているんだろ、と言った。


「俺は天才とか気にしない。そして天才が厄介なら何も言わない」


「.....変な人」


「.....そうだな。俺は変な人だ。それでも良いから覚えておけ。俺は.....お前を守るって決めた」


「何故そんな事を言ってくれるんですか」


「.....お前という個人が好きだからな。ああ恋愛対象って訳じゃないぞ。俺はお前の全てが好きだ。個性も」


お姉ちゃん達と言いお前も非常に愛くるしい妹分だな、と笑顔で答える。

すると恭子ちゃんは涙を浮かべてからポロポロと泣き出す。

号泣に近い泣き方だった。

貴方はおかしい人ですね、と涙声で言いながら。

その言葉に、頑張ったな恭子ちゃん、と言葉を発した。


「.....だからお姉ちゃん達が好きなんですね」


「.....それは自覚は無いがそうなのかもな」


「何となく.....全てが分かった気がしました」


今日.....来て良かったです。

と初めて笑みを浮かべた恭子ちゃん。

それはとても可愛らしい大人びた笑みだった。

俺は笑みを浮かべながら柔和になる。


「不安だったので来ました。.....だけどそんな心配は皆無でしたね」


「.....そうか。俺で良かったら何でも相談に乗るからな」


「.....変な人」


「そうだな。って言うかお前の口癖だな。それ」


そして俺達は笑い合う。

それから暫く会話してから。

恭子ちゃんは渡したお土産を持って帰って行った。

俺はそれを見送ってから背伸びをする。

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