第11話 謎の飴玉とちょっとの大人の恋と
この場所は男子トイレである。
それなのに何故か分からないが詩織が居る。
俺を見ながら、エヘヘ、と言いながら目の前に立っている。
突然の事に俺は何も言えず.....そのまま詩織を見る。
どういうつもりだ。
「詩織。お前.....どういうつもりだ!?」
「まあ.....何というか私ね。見えない場所でイチャイチャしようって思ってこの場所に来ただけなの。瑞稀が好きだし.....その。本当に」
「家まで待てよ!?何でこの場所で!?」
「説明聞いてたら我慢出来なくなった」
「ヒェ!?」
詩織はマジな目をしている。
それはエロいとかそんなんじゃない。
俺を見て柔和な顔をしながらもマジに我慢出来ない感じの目。
つまり愛しいと思っている目だ。
俺は立ち上がる。
「.....詩織。とにかく出よう。この場所から。迷惑になるって!」
「私はそうは思わない。個室は3つもあるしね」
「詩織.....俺の心臓もマズイんだって。お前可愛いんだぞ。それに.....本当に可愛いから!」
「その色仕掛けは通じません。私に」
「.....あ。そうですか」
詩子には十分通じたんだが。
俺は目を点にしながらも。
反抗する。
とにかく出るぞ、と言いながら。
だがそれを詩織が止める。
「駄目。今2人きりなんだから」
「あのな!?」
「.....ねえ。そんなに私は嫌い?」
「嫌いとかじゃない。この場所はマズイって言っているんだ。絶対に人の迷惑になるから」
すると.....グスグスと泣き始めた詩織。
俺は、はぁ!?、と思いながら.....詩織を見る。
そして、私悲しいよ、と言う。
何だこの泣き上戸の様な.....まさか。
「.....お前さん.....まさかと思うけど酒飲んだ?」
「遠山さんのキャンディーのウイスキーボンボン?ってのを食べた」
「.....」
え.....いや。
それで酔っ払ってんのか?コイツ。
俺は考えながら真っ赤になる。
するとブレザーを脱ぎながら.....ニヤニヤとする詩織。
そして遂に俺を押し座らせた。
「エヘヘ.....」
「し、詩織。何をする気だ。お前は酔っ払ってるぞ!」
「酔っ払ってる?何で?何処で酔うの?」
「ウィスキーボンボンはお菓子だがお菓子でも酒が入ってるんだ!」
「へぇ?そうなんだぁ」
もう駄目だこれ。
俺は真っ青になりながら詩織を見る。
詩織はニタァッとしながら俺の側で手をついて見てくる。
その姿を見ながら大慌てになる。
「でもこれって良いね」
「何が!?」
「感情を曝け出せるから.....私はウィスキーボンボン良いかもって思う」
「あのな!?」
暴れる俺。
すると詩織は俺の口を塞いだ。
それからその手の上からキスをしてきた。
これなら良いよね、と言いながら。
唇の辺りに、だ。
俺はドクンドクンと心臓を鳴らす。
マズイ.....ヤバい。
本当にヤバい。
「詩織.....理性が保てなくなりそうだ。本当にヤバい」
「.....そうだねぇ。私もそうかなぁ。アハ.....」
そこまで言ってから詩織はハッとした。
そして今の状況を見てから目をパチクリする。
どんどんどんどんという感じで真っ赤になっていく詩織。
どうやら正気に戻った様だ。
ヒィ.....、と言いながら目を回す。
あまりの恥じらいに耐え切れない感じである。
「わ、わ、私.....何をしたの?瑞稀に」
「.....キス」
「.....ふあ?ふえぇ?.....うそ.....」
「だからお前を止めようとしたけど止められなかった」
「.....」
余りの羞恥故か。
バァンとドアを開けて飛び出して行った詩織。
俺は真っ赤のままそれを見送る。
何だか惜しかった様な気がするが.....でも良かった。
ほっと胸を撫で下ろしながら息を整える。
☆
戻って来るとみんなぶっ倒れていた。
詩織は必死にそんなみんなを起こそうとしている。
テーブルに、だ。
つまり寝てしまったのだろう。
ウィスキーボンボンで、だ。
俺は苦笑いを浮かべながら困惑する店員を見る。
「すいません。連れて帰りますので.....」
「えっと.....大丈夫ですよ。アハハ。でも何で寝てしまっているのでしょう.....?」
「.....えっと.....」
何も言えない。
のでみんなを叩き起こした。
そしてそのまま詩織と恥ずかしがりながらそそくさとカフェからお金を支払ってからそのまま急いで去った。
恥ずかしいなもう。
畜生め。
「うぅん?」
「うう.....」
俺は悠を担いでいて。
そして詩織は詩子を担いでいる。
俺はその中で悠に声を掛けつつ.....そして。
公園にやって来た。
「悠。詩子。起きて」
詩織が必死に声を掛ける。
俺も声を掛ける。
そして詩子と悠はハッとした様な感じで起きる。
それから俺と詩織を互いに見る。
「.....えっと.....何が起こったの?」
「私.....は?」
「どうも悠の飴玉でみんな酔っちゃったみたい。お酒の入ったウィスキーボンボンだよね?」
悠は確認する様に急いで飴玉の袋を見る。
そして驚愕した。
そ、そうだね、と言いながら。
悠は申し訳無い感じで頭を下げる。
わ、私のせいだね!、と反省する様に。
「それで.....」
「そうだね」
俺は詩織と詩子の会話を聞きつつ苦笑。
因みに詩織は俺と何があったかは言わなかった。
真っ赤になりながら目を彷徨わせている。
俺はその姿を見ながら苦笑しつつ。
そのまま目の前を見る。
「まあ次に気を付けたら良いと思うぞ。悠」
「私のせいだよね.....ゴメンなさい。本当に」
そんな俺達を見ながら。
詩織と詩子は顔を見合わせてからそのまま笑い始める。
クスクスと、だ。
俺達もそれを見ながら苦笑する。
「あはは」
「.....ふふふ」
そんな感じで俺達は暫く動けなかった。
俺は笑い終わってから。
楽しいな、と言いながら詩織と詩子を見る。
詩織と詩子は、だね、と答えた。
そして満面の笑顔を浮かべる。
「この4人だから笑い合える気がする」
「.....そうだな」
「だね」
そして俺達はその場でまた色々と話してから。
予定が色々と狂ってしまったが別れてそれから家に帰った。
取り敢えずまた今度.....悠に話そう。
そう考えながら、だ。
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