第5話 詩子の嫉妬
胸が高鳴る。
それは期待とかじゃない。
俺を好き、と詩子が告白してきたから.....心臓の鼓動が治らない。
どうしたものか、と思いながら夜。
俺は天井を見る形で後頭部に手を添えて寝ていた。
「何で詩織も詩子も.....あんな感じで男装しているんだ」
そんな呟きは誰も答える事は無い。
それはそうだな。
妹とか居ないし.....俺しか居ない。
だから答えるヤツは誰も居ないのだ。
しかしまぁ本当に何で男装しているのか。
「訳が分からんよな.....」
いや本当に訳が分からない。
そんなつぶやきを残し俺は後頭部から手を離し姿勢を変えて横になった。
それから考えていたがそのまま寝てしまった様だ。
そして翌日になった。
☆
「おはよ」
「.....よお。詩子.....はぁ!!!!?何しているんだお前は!!!!?」
気が付くと横に康太が立っていた。
もとい詩子が立っている。
俺は真っ赤に赤面しながら男装している詩子を見る。
ニコッとしながら立っていた。
俺を見ながら柔和になる。
「良い寝顔」
「.....あのな.....お前さん。何しているの?マジに」
「言ったでしょ。私は瑞稀が好きって」
「いや言ったけどな。だからと言って勝手に部屋に入って勝手に寝顔を眺めて良いわけが無いぞ。心臓が止まるかと思ったぞ」
「そう?じゃあ私の勝ちだね」
何がだよ、と言いながら俺は起き上がる。
全くコイツは.....、と思いながら赤くなりつつ。
すると詩子は、今日は登校までの時間が無いよ。時計も切ったし。ギリギリまで瑞稀を寝かせていたから、と言いながら。
は?、と思いながら居ると。
何を思ったか俺のパジャマのズボンを脱がせにくる.....うぉ!!!!?
「お前何して.....!?」
「男性の下着姿ぐらい見るの慣れているから」
「止めろ!そう言う問題以上に問題がある!別の問題が!」
「.....?.....何の?」
そしてハッとした詩子。
目の前のパンツ越しの、それ、を見て赤くなる。
真っ赤に赤面しつつ、ふあ、と言ってくる。
そして顔を覆っている俺を真っ赤になっている詩子が震えながら見上げてくる。
瑞稀の変態、と言いながら。
「あのな。男は活発だとこういう事になる。だから安易に脱がすな」
「.....わ、分かった。うん」
「じゃあその。1人でやるから出て行ってくれるか」
「そう、ね。うん」
そそくさと去って行く詩子。
そして真っ赤になる俺。
それからベッドに寝転がってから悶えた。
とんでもないものを見られた.....、と思いながら。
恥ずかしいぃ!!!!!
☆
「ところで詩子。詩織はどうした」
「お姉ちゃん?お姉ちゃんならもう学校に登校した。生徒会だから」
「.....ああそうだっけ。アイツ頭良いもんな」
「そう」
そして詩子は俺を見ながら微笑みに近い笑みを浮かべる。
俺はその姿を見ながら頬を掻く。
それから、また胸にはサラシを巻いているのか、と聞いてみる。
すると詩子は、うん、と答えた。
「何故そこまでして男装を.....」
「内緒」
「.....分かったけどさ.....」
そこまでして男装をする目的って何なのか。
俺は考えながら顎に手を添える。
しかし答えは浮かばない。
すると詩子が、でも男装女子って良いでしょ、と俺を見上げる。
そして何を思ったか腕を掴んだ。
「友達だから」
「.....中が良くてもこうはしないけどな。離して」
「駄目。今は誰も見てないから。私は瑞稀が好きだから」
「恥ずかしいんだっつの!」
そんな会話をしつつ学校に登校していると。
背後から、羽柴くん、と声がした。
声に背後を見ると女子の遠山悠(とおやまゆう)が立っている。
同級生でクラス委員の女子であるが。
俺は、どうした。遠山さん、と聞いてみる。
「いや。珍しく康太くんと登校しているんだなって。何時も別々だったから」
そんな遠山さんの容姿だが。
真面目系の顔付きで泣き黒子があり。
黒の長髪。
それから丸眼鏡をしていて身長がちょっと低い。
そんな感じの女の子だが。
「そうだな。確かに別々だった。.....ちょっと事情があって別々じゃないんだけどな今日は」
「あ。そうなんだ」
「おう」
そんな会話をしながら詩子を見ると。
詩子はムッとしていて頬を膨らませていた。
俺と仲が良い女子ってのを不愉快そうに、だ。
そりゃまあ、あまり話をしないもんな。
特に遠山さんとは、だ。
何の用事なのだろうか。
「遠山さん。何の用事だ?」
「あ。えっとね。実はクラス委員でしょ私。それで康太くんがあまり人と関わらないよね?だからその。私が康太くんと仲良くしたいなって」
「.....ああ。そうなんだな。じゃあ康太。お前.....」
「絶対に嫌」
「.....」
オイ。人が折角仲良くしようって言ってるのによ。
俺は顔を引き攣らせながら詩子を見る。
詩子は頬を膨らませて嫉妬している様に見える。
そして俺の袖をキュッと掴んだ。
「わた、俺は女子が嫌いだ」
「そんな事言わずに仲良くしようよ?ね?康太くん」
「絶対に嫌」
「.....」
同じ事を繰り返す。
ループ状態であった。
俺は眉を顰めながら詩子に耳打ちする。
ここは仲良くした方が良いぞ。だって女の子ってバレたく無いだろ?、と言うが。
詩子はジト目で俺を見て眉を顰めてプイッと横を向いた。
いやコイツ。
「あはは。まだまだ仲良くなるにはキツいね」
「.....まあ正直に言って仲良くはなれないかもな.....」
「え?」
「いや。何でもない」
正直に言って詩子がここまで嫉妬しているのは久々だ。
詩子は一度、嫉妬すると最後まで嫉妬する。
何時迄も怒った様な感じになるのだ。
つまり遠山さんとは何時迄も仲良くなれない可能性がある。
どうしたものかなこれは.....。
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