第4話 それで良いのお姉ちゃん
詩子は俺を見ながらクスクス笑いながら柔和な顔でアルバムを指差す。
それから間違い探しの様に俺を探していく。
時には笑顔で。
時には怒って。
時には泣いて。
すると最後の方に迫った時。
詩子は悲しげな顔をする。
そして俺を見てくる。
悲しいな.....、と呟きながら、だ。
俺は、?、を浮かべながら詩子を見る。
「この場所には私が居ない。お姉ちゃんも居ない」
「.....それは仕方が無いだろう。お前の親が転勤だったから」
「でもそれでも居たかった。この場所に」
「そうだな。お前らが居たらこの世界もまた何かが変わったのかもしれないな」
「でも私は決意した」
「.....何を?」
今からイチャイチャするって、と言いながら詩子は俺を見てくる。
そして赤くなる。
俺はその姿に赤面しながら頬を掻く。
それから、お前って本当に何かあると積極的だよな、と苦笑した。
それは当たり前だよ。だって好きなんだから、と詩子は答える。
「私は貴方が好き。瑞稀じゃなくちゃ嫌」
「あのなぁ.....俺にそんな積極的に攻めるな。男は怪物なんだぞ?獣なんだぞ?思春期の」
「でも瑞稀だから大丈夫」
「.....いや。大丈夫じゃないからな」
「じゃあ大丈夫じゃない」
「どっちだよ!?」
言いながら俺達はクスクスと笑う。
そして中学校時代のアルバムを見ようとした時。
詩子のスマホに電話が掛かってきた。
俺はビクッとしながら詩子と一緒にその電話の画面を見る。
それは.....当然だが。
詩織だった。
「もしもし」
『もしもし!?どこに居るの!?詩子!?』
「私は今はお店に居るよ。服屋さん」
平然と嘘を吐きやがったぞコイツ。
俺は顔を引き攣らせながら詩子を見る。
すると、そうなんだ。じゃあ私も行って良いかな。ちょうど服買いたかったし、と言ってくる。
その事に、え、と詩子は青ざめる。
それから俺に、どうしよう、と向いてくる。
俺は盛大に溜息を吐いた。
「詩子。無理があるって。こういうの絶対にバレる」
「.....でも.....」
「本当の事を言え。じゃないと混乱するぞ何もかもが」
「.....分かった。瑞稀が言うなら」
それから意を決した様にゴクッと喉を鳴らしてから。
お姉ちゃん。ゴメン。嘘吐いた、と答える。
すると詩織は、え?、と言う。
そして前を見てから詩子は、私は今瑞稀の家に居るよ、と答えた。
詩織はもっと、ぇえ!!!!?、と愕然とする。
『それって何で!?何で瑞稀の!?』
「.....黙って出た事を謝る。お姉ちゃん。御免なさい」
『その.....良いけど。.....でも何で?』
その言葉に対して詩子は俺を見てから赤面して答える。
私は瑞稀が好きだから、と.....オイィ!!!!?
何を言ってんだコイツは!?
俺は愕然としながらその姿をまた見る。
『えぇ!!!!?は!?え!?』
「だから告白しに来たの。瑞稀の家に」
『.....嘘.....』
「私は.....お姉ちゃん。貴方が今も瑞稀を好きかどうかは分からないけど私は瑞稀が心から好きだから」
『.....そうなんだね.....』
俺は慌てる。
何を言ってんだマジに、と思いながら。
想定外の思いだな!、と。
だが。
ま、まあお似合いなんじゃ無いかな、と詩織は言ってきた。
『付き合ったら?そもそも私はお友達としか思ってないし。今の瑞稀は』
「.....それで良いの。お姉ちゃん」
『だって私は男性として振る舞っていた訳だし。そもそも瑞稀の事なんかどうでも良いし』
「.....」
詩子は眉を顰める。
それから、嘘吐くの止めて、と詩子は言った。
え?、と思いながら詩子を見る俺。
そして詩子は、声が震えている。隠しているつもりだろうけど私はお姉ちゃんの妹なんだからそれぐらい分かる、と答える。
「お姉ちゃん。好きなんでしょ瑞稀が」
『.....そんな事無い。私は瑞稀の事なんか何とも思ってない』
「姉妹なんだからそんな嘘ぐらい分かる。本心を聞かせてほしい。今度で良い」
『私は何とも思ってない!!!!!瑞稀と一緒でも!!!!!』
「醜い嘘は止めようよ。お姉ちゃん。家に帰ったら話そう」
それから電話を切る詩子。
そうなのか?、という感じで俺は詩子を見る。
詩子は笑みを浮かべてから、そうだと思う、と答える。
伊達に妹をやってない、と答えながら。
「私はお姉ちゃんの本心を引き出す」
「そんな無茶苦茶な。無理だろ」
「さっきまで独占したいって思っていたけど。やっぱり違う気がしてきた。アルバムを見て考えていると」
「.....!」
「だから今までは今までで私はお姉ちゃんとライバル同士になりたい」
言いながら俺を笑顔で見てくる詩子。
俺はその姿に心臓がドクドクしながら俯く。
詩織も詩子もみんな俺が好きなのか?
そんな馬鹿なことって有り得るのか.....!?
あれから10年近くも経っているんだぞ。
想いがそのままってのは.....考えられない。
「私も瑞稀が好き。お姉ちゃんもきっと瑞稀が好き。だから瑞稀。私達を見ていて」
「心臓が高鳴りすぎてヤバいんだが。お前らの事で」
「それはそうだよね。好きって言われたら誰だってそう。.....私だって心臓が痛い」
「.....詩子.....」
「私は負けない。お姉ちゃんに」
そう言いながらポシェットを持つ詩子。
それから、ゴメンね。今日は帰る、と話した。
俺は、そうか。玄関まで送るわ、と言うと。
有難う、と詩子は話した。
ったくコイツら姉妹は、と思いながら。
「でも私達は学校ではこれから先もずっと男装のままで生活するつもり。これからも宜しく。瑞稀」
「そうですか.....。ってかもう男性として見れんぞお前ら」
「えへへ。だね。これからは異性同士だね」
「.....」
俺は後頭部を掻く。
すると何を思ったか詩子は俺の手を握った。
それからしゃがんでいきなり手の甲にキスをしてき.....うあぁ!!!!?
何をしているんだ!
「契約の証」
「馬鹿な真似をするな!?死ぬわ!!!!!」
「約束。私達以外の女の子に振り向いちゃ嫌」
「.....!」
人差し指を立ててから。
言葉をそう発して詩子は玄関から後にして行った。
大きく手を振りながら、だ。
俺はカァッと身体が熱くなりながら。
そのままその場所に崩れ落ちた。
「ったく。畜生め!」
天井を見上げてそんな事を呟きながら。
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