第3話 超甘々なんだが

詩織と詩子。

この2人は常に2人で一心同体だ。

つまり俺もそうだが付け入る隙は無い。

それぐらい固い何かがある。


まるでそうだな。

その絆を表現するとするならだが。

いや説明しなくても分かるか。

姉妹だしな。

だけど.....、と思いながら俺は目の前の詩子を見る。

今回は一心同体とは違うと思える。


何故かといえば詩織も詩子も俺を巡って戦っている(?)気がするから、だ。

つまり一心同体とは言えない。

それにこの場所には詩子が自分で決めてやって来た様だ。


詩織に黙って、である。

俺は思いながら目の前の母さんがいれてくれたオレンジジュースを見る。

そこに映った俺を見つつ目の前の詩子を見た。


「お前が自分で決めて自分で動くとはな。驚きだ。詩子」


「そうだね。だって負けたく無いから。お姉ちゃんに」


「なあ。詩織も俺が好きなのか?」


「それは分からない。昔の事だからお姉ちゃんが今でも貴方を好いているかは分からないかも」


「.....そうか」


詩子は柔和な笑みを浮かべながら俺を見ている。

でも居心地悪そうにモジモジもしている。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。


そうだよな。

この約束は約10年前の話だ。

今も想いが同じとは限らんわな。


思いながら納得して詩子を.....至近距離に居た。

俺の顔をジッと見ている。

何しているんだ!?

俺はビクッとしながら仰反る。


「ビックリさせんな!?何やってんだ!?」


「何だか酷く考えていたから。気になったの」


「マジビックリしたわ。冗談じゃない」


「ご、御免なさい。近くで見たかった。瑞稀の顔を」


「そんな恥ずかしい事をよく言えるな.....お前」


しかしついこの間まで男同士だったのに。

今となっては恋する乙女だな康太=詩子は。

未だに実感が湧かない。

どうしたものかな.....、と思いながら赤面で詩子を見る。

詩子は周りを見渡している。


「卒業アルバムとか無いの」


「.....え?何で?」


「瑞稀が成長する前の姿が見たい」


「恥ずかしいんだが.....クソガキだぞ俺の姿って」


「良いの。瑞稀とは.....10年近く一緒じゃ無かったから」


どんな姿でも私は愛している。

と.....言う詩子。

小っ恥ずかしいんですけど。

そんな恥ずかしい台詞をよく言えるな!、と詩子に言うと。

詩子も、恥ずかしいよそれは、と言ってくる。


「恥ずかしく無いわけ.....無いよ」


「そ、そうか。じゃあもう加減してくれ。マジに恥ずかしい」


「それは嫌。瑞稀のことが好きだから」


「あのな!?言っている事が支離滅裂だぞ!」


「どうあっても私は瑞稀が好き。だから加減しない」


よくそんな事を.....、ってもうこれ何度も言っているな俺。

俺は後頭部をガリガリ掻きながら立ち上がった。

それから横にある本棚から卒アルを取り出す。

そして小学校時代と中学時代と幼稚園時代と並べる。

ニコニコしながら詩子は待っていた。


「これ?」


「そうだな。これが卒アルだ」


「そうなんだ.....何か思い出の冊子とか無いの」


「思い出?将来の目標とか書いたやつか?」


「そう。それも見たい」


「.....」


小学校時代のやつは見せれないな。

何故かと言えばそこには、詩織と詩子と結婚する、って書いてあるのだ。

それは流石に全てが有り得ないってか死ぬ。


見られたら最悪だ。

思いながら目の前を見ると詩子は勝手に本棚を探していた。

そして小学校時代の冊子を見事に引き当て読んでいる。

コラァ!!!!!


「うわ!お前勝手に読むな!?」


「み、瑞稀.....その。小学校時代でも私達の事をずっと思っていたの」


「見つけるな!?コラ!読むな!?」


「い、良いじゃない。恥ずかしいものじゃない」


「俺が恥ずいわ!」


でも私も書いていた。

小学校時代の目標に、貴方のお嫁さんになる、って、と告白してくる詩子。

俺は顔に延焼してボッと火が点く様な感覚になる。


そんな事を書くなよ、とツッコミを入れたかったが。

まあ詩子だしな.....、と納得してしまった。

声に出さない部分は出さないしな。


「嬉しい。瑞稀。私達と結婚したいって書いてくれて」


「マジに酷く恥ずかしい。消えて無くなりたい」


「そんな事無い。自慢して良い。私はとても嬉しい」


「.....」


詩子は赤い顔でニコッとしながら、じゃ、じゃあアルバム見ようか、と言ってくる。

俺は、お、おう、と返事しながら赤面する。

困ったもんだなコイツは。

考えながら詩子の行動を見ていると。

俺にピタリと体をくっ付かせて来る.....何ぃ!?


「え、えへへ」


「お前.....!?」


「み、瑞稀とこうして居たかったから。私はとても幸せ」


「あのな!俺の心臓が保たない!」


「わ、私だって恥ずかしい」


じゃあするなよ!?、と思いながら詩子を見る。

詩子は、嫌。絶対に嫌、と首を振る。

相反しているんだよなぁ、と考えてしまう。

なんて積極的な。


「こうしていると結婚して新婚さんがお互いの写真を見ている様だね」


「恥ずかしいって。本当に。死ぬって詩子。心臓が爆発する」


「私だって死にそうなんだから我慢して」


「何を!?」


それから詩子は俺の手を握ってくる。

至近距離に詩子の顔が。

心臓が飛び出そうになる。


その中で詩子はアルバムを指差しながら、じゃあ先ずは幼稚園時代から、と柔和になってくる。

え?これって中学時代までこれ?

いやいや死ぬって。


「詩子。流石に血管が破裂しそうだから。離れてくれ」


「私はお姉ちゃんに勝りたいから、嫌」


「嫌、じゃない!お前の気持ちは十分に分かったから!」


「絶対に嫌。この体勢で」


こんなに積極的だとは油断した。

どうしようかこれ。

密着させて来ながら俺の手を握る詩子。

多分俺の血圧は500ぐらいっているんじゃ無いでしょうか。

アカンぞこれ.....!

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