第2話 詩子の溢れ出す想い
詩子と詩織は姉妹だ。
どっちが姉かといえば詩織の方である。
詩子は妹である。
それで姉妹であるが何故。
何故今は耕平と康太なんだ.....意味が分からない。
そもそも一体何故に男装なんか。
俺は唖然とするしかない。
「そっか.....バレちゃったんだ」
放課後。
誰も居ない教室にて俺は耕平もとい詩織。
そして康太もとい詩子に接していた。
2人は男装したままであるが.....その。
もう男としては見れない。
どうなっているのだ本当に。
「久々に会えて嬉しいけどお前ら.....戸籍とか学校の書類とかどうなっているんだ」
「.....学長が配慮して女の子の身分を隠している感じだね」
「そんな馬鹿な事が.....」
「担任の先生も知っているよ。女の子だって。でも男として貫いてる」
「マジかお前ら.....担任ともグルだったとは.....」
俺は額に手を添える。
それから盛大に溜息を吐いた。
マジかコイツら。
考えながら詩織と詩子を見る。
改めて見ると確かに女の子であるな。
少しだけ女勝りの顔をしているが.....だ。
だけどそれでも。
信じられない。
2年も騙されるとは。
俺は考えながら腕を組み、うーん、と悩む。
それから詩織と詩子を見る。
「お前ら何故に男装する事になったんだ」
「それは言えない」
「そうだね。お姉ちゃん」
「非常に気になって仕方が無いんだが勘弁してくれ」
「言えないものは言えないから.....ゴメン」
そして詩織は赤面しながらそっぽを見る。
代わりに詩子に向いて見る。
詩子もそっぽを向く。
コイツら。
俺は考えながら、なあ。これからどう接したら良いんだ俺は。お前らを男として見れないんだが、と言ってみる。
「まあそうだね.....」
「そうだね.....」
「マジにどうする気だ。.....それに男の下着を見ても平気なのが不思議なんだが」
「私は慣れた」
「私も」
いや慣れたら駄目だろ。
俺は考えながら後頭部をガリガリ掻いた。
このまま話していても埒があかないな。
どうしたものか、と思いながら俺は、ひとまず家に帰って良いか。状況を整理したいので、と言ってみる。
「私達もこの事をちょっと整理したい」
「そうだね。詩子」
「.....マジに混乱しているから俺は。取り敢えずは連絡くれ。何かあったら」
「うん。そうする」
「うん」
しかし約束の女の子との再会がこんな感じとは。
男装した状態で再会するとはな。
俺は思いながら悩む。
何もかもが変わってしまった。
今日で、だ。
「でも気楽になった。これで」
「私達はいつか言うつもりだった。でもこんな形になるなんて思ってなかったけど」
「言うつもりだった.....か。全く訳が分からない。そもそも男装の理由すらも明かせないとは。幼馴染の関係でも無理か?」
「無理。ゴメンね」
「うん」
困ったもんだな、と思いながら俺は見つめる。
2人は制服を弄りながら俺を見ていた。
男の制服を着た女子高生か。
これは一体、何故なのかしっかり考えないといけない。
「取り敢えずは帰るか」
「そう.....だね」
「うん」
そして俺達はそのまま帰宅する事にした。
取り敢えずは.....混乱している頭を整理したい。
本気のガチで混乱している。
そもそも男が女だったとかラノベの中の話だと思っていたんだが。
☆
「あら。お帰りなさい瑞稀」
「母さん。.....幼馴染に再会したよ」
「え?そうなの?凄いわね。転校してきたのかしら?」
家に帰ると。
そう言って目を丸くする母親が居た。
羽柴郁子(はしばいくこ)。
30代ぐらいに見える母親であるが。
母さんは何だか嬉しそうな反応を見せた。
どんな子になっているのかしら、的な感じで。
いや.....うん。
「その.....少しだけ複雑だから何も言えないけどね。ゴメン」
「え?複雑ってどういう事なの?」
「.....何とも言えないぐらいに複雑だから取り敢えずは暫くは話せない。ゴメン」
「え.....まあ良いけど」
正直、耕平が。
そして康太が女の子でした、とは言えない。
母親まで混乱してしまう。
それは絶対に駄目だ。
そうなると説明は後回し、だな。
「でも元気そうだから」
「あらそうなの?今度うちに呼んだら良いんじゃ無いかしら。お母さんも久々に顔が見たいわ」
「.....いやー.....」
困った。
回答に困る。
どうしたら良いのか、と思っていると。
インターフォンが鳴った。
ん?宅配便か?、と思い玄関を開けてみる。
「はい」
「み、瑞稀」
「.....詩子!?!?!」
そこには何故か詩子が居た。
その姿は.....ワンピースである。
純白のワンピース姿でありポシェットを持っている。
何!?!?!え!?
と思いながら母親を見ると。
「え?」
「あちゃー.....」
「あら?え?康太.....くん?」
母親が混乱している。
目を丸くして、?!、的な感じをしている。
俺は、詩子。何故に来たんだ、と眉を顰める。
詩子はモジモジしながら赤くなる。
それから見上げてきた。
「.....私は好き。.....瑞稀が」
「え?」
「瑞稀が好き。だからお姉ちゃんに申し訳無いけど黙って来たけど。瑞稀の事.....今日から彼氏にする。大好き」
「ホァ!?」
何を俺の母親の前で告白しているのだ!
真っ赤になる俺。
話がバグっている!
どうなっているのだ!!!!?
俺は真っ赤になりながら詩子を見る。
そう言えば昔から詩子はこんな感じだったな。
もの言わずの静かだったけどいきなり積極的に.....!
唖然としながら俺は目の前の拳を握りながら俺を見上げる詩子。
長い髪の毛をポニテな感じに結んで可愛らしく。
「え?康太くんって.....詩子ちゃんだったの!?」
「そうだな、うん」
「は、はい。おばさま」
「.....」
頭が混乱している以上に混乱なのだが。
さてどうしたものか、と思っていると詩子が俺を抱き締めた。
何しているんだよ!
俺は真っ赤になりながら詩子を見る。
「その.....デートしたい」
「は、はい!?」
「お家デート。ね?瑞稀」
「か、勘弁してくれ.....!?」
ヤバい心臓がヤバい。
心臓の音が聞こえるとかそんな事を考える余裕が。
もう駄目かもしれない。
マジに混乱している。
詩子を見ながら俺は頭が爆発しそうになった。
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