38-5
「そういや薬草は売れる量になってないのか?」
レイが思い出したように尋ねてきた
「あーたまってるね。この後売りに行く?」
「「行く」」
マリクとリアムがそろって答える
「バルドもバジルが1回分あるから売る?」
「僕も売れるの?」
バルドは驚いた顔をする
「もちろんよ。同じのが10本そろえばそのタイミングでね」
「じゃぁ売る」
そう言ったバルドの顔は嬉しそうだ
「サラサこれ渡しとく。こっちがマリクで…こっちがリアム、でこれがシア」
私はレイから受け取ってそれぞれ分けてインベントリにしまう
「マリクが3回分でリアムとシアが2回分ね」
「毎日とってるのに?登録してから3か月よね」
ナターシャさんが不思議そうに言う
「色んな種類の取ってるから同じのが10本そろうのに時間がかかるのかも」
「あーなるほど。遊び感覚じゃ種類見ながらは取ってないか」
それなら仕方ないわねとナターシャさんは一人頷いていた
「ギルドがビビらずに済んで丁度いんじゃね?」
「確かに。総量で言ったら10回分くらいは軽くあるもの」
そんな話をしていると武器の手入れが終わったのでみんなでギルドに移動した
「サラサ姉ちゃん」
「ん?」
「僕売るの初めてなんだけど…」
「そっか。じゃぁ一緒に行こうか?」
尋ねると無言のままうなづいた
「ナターシャさんこれマリクとリアムの」
私は2人の分を取り出してナターシャさんに渡す
「ありがと。カルム、マリクの方お願いね」
「了解。マリク、ママに薬草貰ってこっち来い」
「うん」
マリクは頷くとナターシャさんから自分の分の薬草を受け取ってカルムさんの元に行った
「サラサ、シアの分俺が行く」
「あ、ありがと」
私はシアの分を取り出してカードと一緒にレイに渡した
「これはバルドのね」
「ありがと」
バルドは自分の採取した1束のバジルを大事そうに持つ
「次の方どうぞ」
少し待ったときバルドの順番が回ってきた
「バルド、カードと一緒にお姉さんに渡して」
「お願いします」
「はい。常時依頼のバジル1回分ですね。ありがとうございます」
受付の女性はそう言ってバルドに微笑んだ
「報酬は現金でお支払いしますか?」
「?」
バルドは私の方を見る
「依頼の報酬は現金で受け取るかギルドカードに貯めるかどちらかを選べるの。しばらくはカードに貯めるのでいいと思うよ」
「わかった。じゃぁカードにお願いします」
「かしこまりました」
女性は頷いて処理を進める
「処理は完了です。カードをお返ししますね」
バルドはカードを受け取った
「この下のところで入金額が確認できるの。普段は非表示にしてた方がいいかな」
そう言いながら表示の切り替え方法を教えておく
「ありがとうございます。またお願いしますね」
「あ、ありがとうございます」
バルドも慌ててお礼を言っている
「カードからお金を出す時は受付で引き出す金額を伝えれば出してくれるからね」
「分かった」
「庭での採取は依頼としてはおまけみたいなものだから、何かあったときのために貯めとくといいわ。本来なら草原や森で採取するものだからね」
「庭で採れたの売るのは悪いこと?」
「そんなことないわよ。ただちょっとずるしてるかな」
そう言って笑うとバルドも笑い出した
「遊びと一緒だもんね」
「そういうこと。それが分かってるならいいわ」
ちゃんと理解しているようだ
薬草とされるハーブが育てたり増やせたりするということはこの世界では知られていない
薬草は自然に育つもので採取には多かれ少なかれ危険が伴う
草原や森の中で雑草の中から探し出すのだから楽な作業とはいいがたい
育て方を広めるのは簡単だけどその先を考えてからでないと無理だとも思う
採取依頼の形態が崩壊するのは確実で、薬にする以外の活用法が広まっていない以上、過剰供給が常態になってしまうだろう
薬以外の活用法を少しずつ広めながら受容と供給のバランスを維持するのは簡単なことではない
さてどうしたものかと思いつつ、それでも庭で育てる種類を減らす気にはならない
ま、過剰分はインベントリに入れておけばいいという逃げ場があるせいでもあるが
みんなが売り終えた後は休憩がてらカフェで昼食を済ませてから家に帰ることになった
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