36-2

「ただいまー。カルムさんシアありがと」

「おう。っつってもずっと寝てたぞ。ちなみにトータは体動かしてくるって出てった」

笑いながら答える


「サラサ、米はテーブルに置いとくぞ」

「ありがと」

「カルム酒」

レイはソファテーブルにお酒を並べていく

「お、レイの選択はやっぱはずれがねぇな」

満足げにマジックバッグにしまっていく


バルドは読んでいた本を部屋にしまってきてそわそわしている

「バルドちょうどいいわ。こっち来て」

「何?」

呼ぶと素直にやってくる


「飲み物はこの冷蔵庫のこのあたりにだいたい入れてあるの」

魔道具の扉を開けて下の方の段を指す


「ミックスジュースとフルーツミルクやフルーツジュースが2種類、こっちがお茶とお水ね」

「飲んでもいいの?」

「もちろん。グラスはこっちの棚に入ってるから好きなときに飲んでいいわよ。グラスに入れてなくなったときは教えてくれる?次を用意しなきゃいけないから」

「分かった」

「今はどうする?」

「…これ飲みたい」

「マスカットね?じゃぁ自分で入れてみる?」

「うん」

頷いて棚からグラスを取り出した

グラスの8分目まで注ぐとピッチャーを冷蔵庫に戻す


「使ったグラスはそっちの流しに置いておいてね」

バルドは飲みながらうなづいた


「じゃぁ少し休んでオーナメントづくりをしようか」

「うん」

とても嬉しそうな笑顔だ


バルドがジュースを飲んでる間にシアと遊ぶ

何かの合間にスキンシップを欠かさないようにだけは気を付けているのだ


「サラサお姉ちゃんジュース終わったよ」

どうやら待ちきれなかったらしい


「じゃぁ始めましょう」

私は材料と必要な道具をテーブルに並べていく


「まず、今売られているのはこの3種類ね。とりあえず1つずつ確実に作れるようにした方がいいかな」

「うん」

「どれからやってみる?」

「…じゃぁこれ」

バルドが選んだのは花の形を模したオーナメントだ


「簡単に手順をいうと、まず材料を切る。次に水と接着剤とこの木製のクリップを用意する。あとは編むように作っていくって感じね」

言葉にするととても簡単そうだ


「作業する時はテーブルに傷がつかないようにこのマットを敷いてね」

「わかった」

たまたま見つけた迷宮素材で作ったカッティングボードをバルドと私自身の前にも敷く

少しずつ手順をきちんと説明しながら一緒に作業を進めていくことにした


「あら?バルドったらさっそく作ってるのね?」

ナターシャさんがマリクとリアムと共に降りてきた

お昼寝が終わったようだ


「バルドお兄ちゃん何してるの?」

「バルドはお仕事の準備をしてるのよ。だから今は邪魔しちゃだめよ?」

「「わかったー」」

「じゃぁお庭で遊んでてもいい?」

「いいわよ。シアも一緒に連れて行くわね」

「助かる」

レイはシアをナターシャさんに預けた




「できた!」

バルドがそう言ったのはそれから暫くしてからだった


「うん。いい感じに出来てるね」

「本当?」

「うん。とても初めてとは思えないよ」

「…でも売り物にはならないよね?」

「ふふ…そんな簡単に売り物になったら職人さん必要ないでしょ?」

「あ…」

言われて初めて自分が言ったことの愚かさをさとったようだ


「練習したら上手くなる?」

「それはバルド次第かな。手先の器用さは充分だと思うけど」

私がそう言うとレイが覗き込んできた


「本当だ。なかなか良く出来てる。あとは慣れか?」

「だね。材料は沢山あるからバルドのペースで練習してみる?」

「する。僕頑張る」

「じゃぁやってて分からないことはいつでも聞いてね」

「うん」

「そうね…全体の形がきちんと整って、接着剤がはみ出ないように量を調節できることが最低ラインかな。それができて売りものになりそうなものは1つ100Gで買ってくれるそうよ。納品は5個ずつになるけどね」

「本当に?100Gも?」

1G=1円と換算出来るが物価は日本とはかなり違う

魔物が多く迷宮品も多く出回ることから衣食に関するものはかなり安い

代わりに雑貨などの加工品はかなり高いと言える


「100Gあったら1日お腹いっぱいご飯が食べられるよ?」

そう。食に関しては100Gが1000円ほどの価値になる


「5個で500GってことはFランクが常時の薬草採取2~3回したのと同じくらいの稼ぎだな。常時の討伐なら1~2回くらいか」

カルムさんがうんうんと頷きながら言う

バルドの1個当たりの作成時間がどうなるかはこれからの頑張り次第にはなるものの、採取や討伐を主とした生活が出来ないバルドにとって自分の頑張り次第でお金が手に入るという現実は励みになるだろう

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