27-2

「レイお兄ちゃん」

トータさんたちの出入りが増えたことでマリクは最近そう呼ぶようになっていた


「どうしたマリク」

「シアも一緒に遊んじゃダメ?」

マリクの横でリアムもレイに抱かれているシアを見上げていた


「2人で面倒見てくれるのか?」

「「うん」」

「そうか。じゃぁ頼むな」

レイがシアを床におろすとマリクとリアムはシアの側に寝転がり同じ目線で遊びだした


「…可愛すぎじゃない?」

思わずつぶやいてしまう

親バカ4人でしばらく3人を眺めているとシアが眠ってしまったのをきっかけにマリクとリアムもそのまま眠ってしまった


「動かすのはかわいそうね…」

絡み合うように眠る3人を離すのは少ししのびない


「毛布だけ掛けとこうか」

スキルで小さめの毛布を3枚作るとそれぞれにかけていく


「ついでにダイニングの椅子もいるよね?」

「そうだな。マリクが少し大きくなったから少し低めのを追加した方がいいかも」

レイが言う


「じゃぁ形は同じで高さだけ違うのにするね…この場合はどっちがいいかな…」

ブツブツ言いながら考える私を3人があきれたように見ていた


「決めた。まずは複製して…幾何拘束したら伸縮できるかな…」

「…すげぇ」

カルムさんの開いた口がふさがらない

出来上がったものを見ることはあったができる過程を見るのは初めてだ


「今座面が動いたわよね?」

「相変わらず意味わかんねぇことを…」

ナターシャさんに続きそう言ったレイに抱き上げられる


「ちょっとレイ?」

そのままソファに座ると寝かされる


「いいから休んでろ」

大丈夫だと反論しようとした瞬間一気に眠気に襲われ意識を手放した



◇ ◇ ◇



「ぶっ…」

カルムが噴出した


「なんだよ?」

「いや。お前ほんとすげーわ」

笑いながら言うカルムをにらみつける


「横になった瞬間落ちたわよね?全然気づけなかったわ」

「俺だって気づいてるってわけじゃない」

レイは不貞腐れたように言う


「どういうことだ?」

「簡単に言えば魔力切れ」

「けどそんな色々使ったわけじゃないよな?もともと魔力も異常なくらい多いしそんな簡単に?」

「一度スキルとして取得してるのはたいして問題ない。毛布作って椅子コピーしたとこまでは実際たいして魔力を使ってない。問題は変形させたやつ」

「座面の事?」

「ああ。あれはたぶん創造のスキル使ってる」

「創造って…新たに作り出せる奴だっけ?」

「それ。創造のスキルを発動する時はサラサが持ってる魔力量に依存するけど、その辺のコントロールはまだできないらしい」

カルムとナターシャは顔を見合わせる


「だから創造使うときは言えって言ってあるけどさっきみたいに考えに没頭すると勝手に使う」

「「…」」

「スキル化されてれば複製とか整頓みたいに単語化されてるけどさっきは『幾何拘束したら伸縮できるかな』なんてふざけたこと言ってたろ?」

「…言ってたわね」

ナターシャが頷く


「あーいうときは大抵創造のスキル使ってる」

「けどスタンピードの時はあたりが白く光ったろ?」

「あれは命がかかわる時だけみたいだ。普段はそんなことないし」

「…レイが必要以上に過保護になるわけだ」

淡々と言うレイにカルムがため息交じりに言った


「しゃーねぇだろ。それに気づくまで家帰ってきたらぶっ倒れてるとかマジでビビったし」

必死になるレイをみてカルムとナターシャが笑い出す


「笑い事じゃねぇよ…まぁ20分くらい休めばある程度回復するからいいけどな」

「まぁお前にはそれくらい振り回してくれるサラサが丁度いいってことだな。サラサに会うまでは退屈が口癖だったもんなぁ?」

「そうよねぇ。今は退屈してる暇ないんじゃない?」

「その言葉はそのまま返すよ。マリクが来てからお前らだって振り回されっぱなしだろ?」

「それは嬉しい悲鳴って言うのよ」

ナターシャが笑顔で切り返す


「この子たちのためなら何でもするわよ。たとえこの身が滅んだとしてもね」

「ナターシャ…」

カルムが複雑そうな顔でナターシャを見る


「…それはお前の自己満足だよナターシャ」

レイが静かに言う


「こいつらを本当に守りたいなら自分の身も命がけで守れよ」

「何言って…」

「自分を守るためにお前が死んだと知れば…こいつらはずっと自分を責めながら生きていくことになる」

その言葉にナターシャは息を飲む


「その時はカルムもナターシャを守れなかったと自分を責める。だから大切な奴を守りたいなら自分の身を犠牲にするべきじゃない」

「その通りだナターシャ。誰かの犠牲の上の幸せなんてありえない。助け合ってこその幸せだ」

「カルム…」

「…なんて偉そうに言ってっけどそう教えてくれたのはサラサだ。今ならわかる。一緒に過ごす平凡な日々がどれだけ幸せで特別なことだってことがさ…」

カルムは一番望むものを尋ねた時のことを思い出していた

サラサもレイもお互いの目の前で死にかけているだけに余計なのかもしれない


「確かに…マリクもリアムも大切な人たちを失って傷ついてる。これ以上同じような傷を増やすわけにはいかねぇな」

スヤスヤと眠る2人を見ながらカルムは言った


「そうね…私、間違った選択をするところだった…」

ナターシャはつぶやくように言いながら子供たちを見つめていた



◇ ◇ ◇

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