26-3
暫くするとレイが目を覚ました
「…どれくらい寝てた?」
「20分くらいかな」
髪を梳いていた手を掴まれる
「そっか…何か水の中を漂ってるみたいな感じだったぞ」
「本当?」
「ああ。あったかい何かに包み込まれてるみたいな感じもしたかな」
レイはそう言いながら体を起こす
「…引っ張られる感じがなくなった?」
「?」
「特に気にしてなかったけど違和感はあったみたいだな。楽になった」
腕を回したり色んな動きをしたりしながらレイは言う
「良かった」
「ほんと、お前には驚かされる」
その言葉に苦笑するしかできない
「腹減った。なんか食わして」
レイはそう言いながら私をベッドから抱き起した
階下に降ると自分たちの昼食を済ませてくつろぐ
その視線の先にはハイハイして動き回るシアがいる
「どこ行く気だろ?」
「あっちは部屋しかないだろ?」
「部屋…玩具部屋?」
顔を見合わせてシアを追う
ゆっくり移動したシアは玩具部屋の扉の前に座り、扉をペチペチと叩きながらこっちを見ていた
「可愛い…」
その仕草に思わず顔がにやけてしまう
この世界にカメラがないのが悔やまれる
「シア、ここがいいのか?」
レイが扉を開けて電気をつけると嬉しそうに色んな玩具を手につかむ
「マリクがここから玩具持ってきてるのわかってたのかな?」
「それはそれでおかしくないか?理解するにはまだ早…い…?!」
「シア?!」
目の前で起こっていることに目を疑う
つみきの1つがふよふよと宙に浮いている
それはシアの手の動きを追うように動いていた
私たちは顔を見合わせほぼ同時にシアのステータスを確認した
「「念動力!」」
そこに表示されたスキルを思わず口にする
「…てか念動力ってなんだよ?」
「自分の意志の力で物を動かす能力のこと」
「意志の力?」
「んーこの世界で言うと…魔力をそのまま動かしてるのかな?」
「…火や水に変換せずにってことか?」
「多分…」
「それ、逆に難しくないか?純粋な魔力のまま保つなんて俺にはできないぞ?」
レイが取り乱す程度には驚く状況だ
「とりあえずシアの念動力を感知する力は必要よね…あとはそれを上回る力でコントロールしないと…」
私は色々考えながらその場でスキルを創造していく
このままシアの力が強くなれば何を浮かせるか分かったもんじゃない
一歩間違えばとんでもない凶器になり得るのだから焦ってしまう
試しに出来上がったスキルを使ってみる
「うー?」
それまで自分の思うまま動いていたつみきがゆっくり床に落ちたのを見てシアが不思議そうに首を傾げた
「できたみたい。でもこれ私だけじゃきついからレイにも…」
「は?」
「ステータス見てみて」
レイは自分のステータスを確認する
「念動力感知と念動力制御のスキルが増えてる?」
「よかった。上手くいった。今創ったスキルを複製してレイに譲渡したの。感知の方は持ってるだけで勝手に働くから」
「あぁ、確かにシアの魔力が動いてるのを感じるな」
うん。これで暴走させることはないだろう
「…お前も大概だな。シアはしっかりお前のとんでもない血をひいたらしい」
レイは苦笑しながら言う
「とんでもないって…」
「そのままだ。俺を驚かせると同時に魅了する」
魅了…
「…レイが私たちを手放せなくなるようにシアと頑張ろうかな」
仕返しとばかりに言ってみるが…
「すでに手放せなくなってるな」
しっかり返り討ちにあった
「それにしても1歳にならないうちから魔力そのものを操るとか…先が楽しみだな」
「心配って言わないところがレイだよね?」
「まぁ純粋な力なら俺が止めれるし、魔力にしてもお前を越えるのは簡単じゃないだろうからな。そういう意味では楽しみのが大きい。それよりお前は少し休め」
私はレイに支えられながら目を閉じる
レイは念動力制御を使って悪戯しながら…何度もつみきを浮かせて楽しむシアをしばらく眺めていた
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