11-3

《ピーピーピーピー…》

突然機械音がした

「今の音ってご飯の魔道具よね?」

「うん。できたみたいだから仕上げだね」

ナターシャさんに応えながら食器を準備すると丼茶碗の1つにご飯をいれる


「この上にキャベツをのせて…その上にお肉を乗せたらこのたれをかけて…完成」

「おいしそうねぇ」

出来上がった丼を食い入るように見ている


「私もやって見ていい?」

「もちろん」

簡単に説明しながらやっていたためか、ナターシャさんはサクサクと盛りつけていく


「こんな感じ?」

出来上がったのを見せられる

「うん。後お願いしてもいい?私はスープよそうね」

「OK」

2人で手分けして最後の仕上げをする


「できたよーレイ運ぶの手伝って?」

レイは頼むとすぐに動いてくれる

出来上がったものに興味があるだけかもしれないけどちょっと嬉しい


「すごーい。先に食べたのもそうだけど本当初めて見るものばかりよ?」

並んだ料理を見てメリッサさんが興奮していた


「全部サラサが考えた料理だ」

アランさんが自慢げに説明する


私が考えたというのは語弊があるけど…

でも転生云々の話を出すのも気が引けるので聞き流す

気づいたらレイとカルムさん、トータさんはすでに半分以上平らげていた


「そういえば私、メリッサさんと初対面の感じがしないんだけど…」

ふと玄関で感じたことを口にすると…

「商業ギルドで会ってるかもな」

レイがあっさりとそう言った


「商業ギルド?」

「ああ。メリッサの職場」

メリッサさんは商業ギルドに勤めているらしい


「なるほど。それなら見かけた可能性はあるね」

「サラサちゃんと商業ギルドが結びつかないんだけど…」

メリッサさんが首をかしげる


「あー竹細工のオーナメント、クッション、カーテンタッセル、折り紙…に心当たりは?」尋ねる

アランさんが尋ねる


「この1年くらいで急に広まった新商品?」

「当たり。サラサはその開発者」

「えー?!」

「ほかにもちょこちょこあって商業ギルドには時々顔出してるはずだ」

「一部はレイや職人が代わりに登録しに行ってるけどな」

「この部屋に色んなものが揃ってるから不思議だなって思ってたけどまさか…」

アランさんとレイの言葉にメリッサさんは驚きながらも私を尊敬のまなざしで見てくる

うん。できれば勘弁して欲しい…


「…サラサこれまだあるか?」

居心地悪そうにしてるのに気づいたのかレイが丼茶碗を差し出してきた


「「俺も」」

カルムさんとトータさんも最後にかき込んで同じように差し出してきた

助かったとばかりにそばにあったトレーに3つの丼茶碗を乗せる


「スープも丼もたっぷりあるよ」

そう言いながら3人分の丼をよそって戻ると3人のスープボールとアレンさんの丼茶碗が差し出された

「頼む」

「了解」

苦笑しながらおかわりをよそってくる

ナターシャさんと2人がかりで作った料理はあっという間になくなってしまった

彼らの食欲には本当に作り甲斐があるなぁと感心してしまう


色んな事を話しながら追加で作ったおつまみを食べ、酒を飲み素敵な時間を過ごす

大半をアランさんとメリッサさんの馴れ初めや、婚約してからの事で質問攻めにすることに費やした

私としてはこの世界の恋愛事情を知ることができてかなり楽しめた

質問攻めにあっている2人は大変そうだったけど


「そういや最近トータを色町で見かけるって目撃情報が結構上がってるな」

「は…い…?」

突然落とされたカルムさんの爆弾に今までアランさんをからかって楽しんでいたトータさんがフリーズした


「あ、それ俺も何件か聞いたな」

レイはしっかり追い打ちをかけている

色町での目撃情報といっても遊びとは限らない

子だくさんの大家族が一般的なので婚約者同士でも色町に通うのは珍しくないからだ


「気になるのはその相手が本気か遊びかってことよね」

「お前はレイと違って遊びでも結構長い間付き合うからなぁ…」

「で、トータ、どっち?」

「それを答える必要あるか?」

納得いかないとでも言うようにトータさんは尋ね返す


「本気なら喜ばしいことだと思っただけだ」

カルムさんの言葉にトータさんはため息を吐く

「…残念ながらお互い遊び」

「そりゃ残念。今回はちょっと期待したんだけどな」

少し寂しそうにカルムさんが言ったのを最後にその話題は終わったようだ


気づいたらかなり遅い時間になっていた

「じゃぁまた」

「おう。気を付けてな」

町に帰るというアランさんとメリッサさんを乗せた馬を見送り皆部屋に散っていく


「レイって絶対ワクだよね」

少し前に改装して2つの部屋を続き部屋にした私たちの部屋に入る


「わく?」

「えーと酒豪?どんだけ飲んでも酔わない」

「あーエールでは確かに酔わないな。お前も同じだろ?」

エールではってことは酔うお酒もあるのだろうか


「私の場合は神様のくれたあらゆる耐性MAXのおかげだと思うんだけど…?」

「前の世界では?」

「ん…エールだったら3杯くらいかなぁ?」

通常エールを注ぐグラスが500mlくらいだと仮定してビール500mlが3缶


「酔ったらどうなんの?」

レイはそう言いながら私を抱き寄せる


「…眠くなったり甘えたり…はあったかも」

「へぇ…甘えたり…ね…」

「?」

少し不機嫌そうな感じがした

でもそれ以上の言葉は返ってこない


そのまま引き込まれるように抱きしめられる

普段とさほど変わらないのにどこか違和感がある

それでも口づけが落ちてくるとそんな思考は簡単に霧散した


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