11-4

弾丸が来て1週間

日によってメリッサさんも含む全員がいたり何人か出かけたりと自由に過ごしていた


「サラサちょっといいか?」

カルムさんが声をかけてきたのはそんな時だった

頷いて2人で庭のデッキに出る


「レイが出かけてるからちょっと話をしようと思ってな」

「?」

首をかしげながら向かいに座った

カルムさんとこんな風に話しをするのは初めてで少し緊張する


「…何をギクシャクしてる?」

「…」

まさか気づかれているとは思わなかった

驚いてカルムさんを見ると少し気づかわし気な表情をしていた


「レイは普段通り振舞えてると思い込んでたみたいだが」

その言い方からしてレイとも何かを話したあとなのだろう


「…機嫌悪い理由が分からなくて…」

「何で機嫌悪いと思うんだ?」

「何となく…普段通り優しいし甘やかしてくれるし…大事にしてくれてるのもわかるんだけど何か違うっていうか…」

自分でもはっきりわからないから困る

レイと出会ってからこんなことは初めてでどう対処していいかもわからない


「きっかけは?」

「多分…お酒に酔う酔わないの話をした時だと思うんだけど…」

そうは思うもののはっきりと言い切ることは出来ない

あの日からも変わらずレイの腕の中で疲れ果てて眠る日々が続いている

2人で話す時も皆といるときも、表面的には本当にいつも通りなのに何かが違う

その何かが未だに見つけられない

一人思考を巡らせる私を見ながらカルムさんはしばらく考え込んでいた


「聞いていいか?」

「?」

「お前が一番望んでることは?」

「レイと一緒に過ごすこと」

突然何でこんなこと聞くんだろう?

そう思いながらもためらいなく答える


「…今一番欲しいものは?」

「レイの笑顔」

即答すると大きなため息をつかれた

解せない


「…もしかして…レイの負担になっちゃってるとか?」

「は?」

「私はレイに頼り切ってるし甘えてばかりだから…そばにいたいって思ってるのが重くなっちゃったのかなって…」

それはどこかで考えていたことだ

前世で一人で生活をしていた事を考えればレイの負担は大きい


「いや、それはない。むしろ…」

「?」

首をかしげる私にカルムさんは言葉を飲み込んだ


視線を追うとレイの姿が見えた

「…レイを借りるぞ」

「え?」

訳が分からない私を残しカルムさんは戻ってきたばかりのレイを連れて出て行った


「何だったの?」

なかなか部屋に戻らないのを心配したナターシャさんが、さっきまでカルムさんの座っていた向かいに座る


「…よくわかんない」

「え?」

「レイのこと話してたのに私の望むものとか欲しいものとか聞かれてそのままレイと出てっちゃった」

「はい?」

ナターシャさんも訳が分からないという顔をする


「…まぁいいや。レイが肉置いてってくれたから2人が出てってくれたならちょうどいいし」

今日はカルムさんのバースデーパーティーだ


「確かに。とりあえず先にそっちを頑張っちゃおう」

2人で考えてもわからない以上答えは出ないだろうと頭を切り替えた


メニューは昨日決定したし、メリッサさんも手伝いに来てくれるので、材料だけは先に出しておくことにした

ローストビーフがメインのため先にそちらを仕込むと、ご飯をセットしスープも煮込み始める

そのタイミングでアランさんとメリッサさんが来たので他のこまごました食材も調理を始めた

料理に慣れてきたナターシャさんに簡単に説明して調理を任せると私はケーキを作り始めた


「トータさん手伝ってもらってもいい?」

「なんだ?」

「これ混ぜて欲しいんだけど」

「おーいいぞ」

少しやって見せるとトータさんは快く引き受けてくれる


「結構腕に来るな?」

「なんだ情けねぇな?俺が変わってやるよ」

気になってキッチンに来ていたアランさんがトータさんからボウルを受け取る


「うわ。マジ疲れる」

「だろ?サラサこれいつまで混ぜるんだ?」

「んーあと30回くらい」

状態を見ながら答えるとアランさんは一気にスピードを上げた

素直にすごいと思う


「こんな感じか?」

「最高。ありがとう」

2人お礼を言ってボウルを受け取ると、粗熱が取れたスポンジに今出来上がった生クリームを塗りデコレーションしていく

少しずつ形になっていくケーキにナターシャさんとメリッサさんが見とれていた

木の実と食用花を使って最後の飾りをして完成だ


「きれー」

メリッサさんが思わずこぼす


「ナターシャさんこんな感じでどうかな?」

「もう最高!」

尋ねた私にナターシャさんが抱き付いてくる


「アランもトータもありがとね?」

「いいって。俺らだってカルムには世話になってる」

「そういうこと。っつっても大したことはしてないけどな」

2人は苦笑しながら言う


「アランさんこの中に5cmくらいの厚みで氷を敷いて欲しいんだけど…」

木の箱を渡す


「了解」

アランさんは言われた通り氷を作る

私はその上にケーキを置いてふたをした


「それは?」

「このクリームは冷たい方がおいしいから。それにこれは最後に見せたほうがいいでしょう?」

「確かに」

ナターシャさんが嬉しそうに頷いた

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