第3話

追い出されてしまった。

え?どこからって?もちろん、あの屋敷からだよ。

何も言われず物資と田中人形が入ったバックと共に追い出されてしまったんだよ。

田中人形には「これで寂しくないねっ!」っていう手紙がついてあった。

…見なかったことにした。



力、それは手の力でもなく、足の力でもない。

力、というだけで、全ての力に影響が出る。

パンチ力、キック力、跳躍力。

力、それだけで全てが表せる。

なぜ、魔術適性確率は僕のほうが高いのにオーディンの方が強いのか。

残り1%が力なら、納得がいく。

その話をお父さんにすると、例のバックを持たされて家から追い出された。

田中人形の手紙じゃない方の手紙には、

「世界中を旅しろ、そこに、きっとお前の『答え』がある」

と書かれていた。

答えとはなんぞやって感じだが、世界中を旅するのは悪いことではないのでその手紙に従うことにした。


数十分後。


僕は暗い森の中で彷徨っていた。

迷子になってしまった。地図もないのにどう旅しろってんだ。

世界地図渡せや。

実は田中人形の中に世界地図があったことは言わなくてもいいだろう。

どうするか……そうだ。

いいことを思いついた。


『上級魔術・ベルナイトフレイム』


ぶぉっ、と炎が吹き出ると、周り一面が炎上していた。

同時に山田のツイッターが問題発言で炎上していたらしい。


「ふぅ、これで見晴らしが良くなったな」


うーん……なんか足りないな……


「歩くのめんどくさいし、転移魔法でも使っちゃお」


『中級魔術・ターポ・レテ』


詠唱と同時、その場には人の影一つなくなった。

変わりに最寄りの村に転移した。

その村は質素で、小さめの村だった。

人は……いないようだ。

活気はある。

生活はしているようだ。


「誰かー?誰かいませんかー?」


シーン……

返事がない、ただの田中のようだ。

本当に誰もいないようだな。

仕方ない、次のところへ、そう思ったときだった。

鳥が一斉に飛びだったと思うと


「ギシャァァァァ!!!!」


そんな甲高い雄叫びが森の奥から響いてきた。

…嫌な予感がする。


『中級魔術・ターポ・レテ』


森の奥部に転移、それと同時、今度は人間の悲鳴が響いてきた。

まるで、怪物から逃げるような。

僕は無意識に急いでいた。

しばらく走り続けると、森の開けたところに出た。

そこには僕の数十倍もあるようなモンスターがいた。

人間たちは、そのモンスターの部下のようなモンスターにさらわれていた。

考える前に、僕は動き出していた。


『上級魔術・ベルナイトフレイム』


唱えた途端、周り一面が炎に包まれ…なかった。

すべて、あのモンスターへと吸収された。

上級魔術が通じない…?

なら、火力を上げればいいだけ。


『超上級魔術・バルフレアビックバン』


超上級魔術。ここまでくると、撃つのもしんどいぐらいになる。 

が、先刻と同じように吸収されてしまった。

まさか…超上級魔術まで通じないなんて…!

……いや、違う。

通じないのは魔術じゃなくて、炎だ!


『超上級魔術・シャイローズ・グリア』


光の刃が降り注ぐ超上級魔術。

僕もそろそろ体力が限界だ。

やれてくれ……!!

その思いは届いた。

巨大モンスターは刃が刺さると同時、跡形もなく部下のモンスターと共に消滅した。



このとき、思いもしなかった。



山田のツイッターのアカウントが跡形もなく消滅していたことを。



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