第3話周りの反応
先生が出席をとって授業が始まった。
自分は一人の時間に少しホッとする…教室で鈴木さんと梶さんと話すなんて中々できない体験だった。
授業中なら話す事も無いしと油断していると…
「じゃあ近くの者と話し合ってみろ」
先生の言葉に仲のいいもの達はすぐに組を作って話し合いを始めた。
僕はどうしようかと周りを見ると、トントン!肩をつつかれた。
まさかとくるっと振り返ると鈴木さんが僕の背中をつついていた。
「佐々木くん、私と組もうよ」
「え?で、でも…」
鈴木さんの空いて隣の女子達は驚いて声をかけ損なっていた。
「鈴木さんは女子と組んだ方がいいんじゃない?」
「授業なんだから女子とか男子とか関係ないよ、私は佐々木くんと組みたいんだけど…」
困った顔で見つめられたら断れない。
どうせ組む相手もいないんだからと僕はすぐに了承した。
「ありがとう!」
鈴木さんはお礼を言うと早速授業の内容を話し出す。
「佐々木くんはどう思う?」
髪を耳にかけながらチラッと見つめられると考えていた事が頭からすっぽ抜けた。
「えっと…そうだな、す、鈴木さんはどう思う?」
「私はこの文の意見に賛成だな…だってこの子の気持ちよくわかる…」
教科書に書かれた例文を細くて綺麗な指で撫でた。
「僕もそう思う…」
これは本当の事だった、鈴木さんは僕と同じ意見に嬉しそうにする。
そのまま意見を言い合うといつの間にか鈴木さんと普通に話せていた。
「じゃあ戻れー紙を配るから話し合った事柄を書いて提出しろ」
先生の声にみんなが机を元に戻し出した。
僕も後ろを向いていた体を前に戻して紙を受け取ると後ろの鈴木さんに渡した。
「はい」
「ありがとう…」
鈴木さんは僕の手をそっと触って紙を受け取る。
びっくりして後ろを見るとクスッと笑う鈴木さんがいた。
僕は耳まで赤くなるとサッと前を向いた。
休み時間になると鈴木さんは席を立たずに座っている。
すると周りに人が集まってきた。
僕は居心地悪くなったので教室を出ようと席を立つと…
「佐々木くんどこ行くの?私も行っていい?」
鈴木さんまで席を立った。
「え?いや…一人で大丈夫だよ」
別に行くあてもないので断ろうとする。
「ここ座ってていいよ」
鈴木さんは周りにいた人に自分の席を譲って僕の手を取り教室を出た。
鈴木さんが引っ張って歩くので抵抗せずについて行く。
すると屋上に向かう階段の踊り場で鈴木さんが止まった。
「はぁー!」
大きな息を吐いてグーンと背伸びをすると、チラッとセーラ服の裾から細い腰が見えてしまった。
慌てて見ないように顔を逸らしていると鈴木さんのクスクスと笑う声がした。
前を見れば鈴木さんがこちらを見てニコニコと笑っている。
「なんで笑ってるの?」
「だって…佐々木くん私のここ…見た?」
鈴木さんは服の上から腰に手を当てる。
「ご、ごめん…」
申し訳なくて赤面しながらも謝ると鈴木さんは怒った様子も無かった。
「やっぱり佐々木くんは優しいね…」
ボソッとつぶやく声に僕は鈴木さんの顔をみた。
彼女は怒った様子は無くてそれどころか穏やかに笑っていた。
「怒って無いの?」
恐る恐る聞くと鈴木さんは微笑んで首を横に振る。
「だって見ないように顔を逸らしてくれたよね?他の人なら黙って見てるよ…」
そんな経験があるのか悲しげな顔をしている。
「え?」
「なんでもない、それよりここで話そう。教室だとゆっくり出来ないし」
「鈴木さん、人気者だもんね」
「勝手に私の想像を押し付けて勝手に話して来るんだもん。息が詰まっちゃう」
鈴木さんは困った様に手を顎に当てて座り込んだ。
鈴木さんの本音に僕は驚いた。
「人気者も大変なんだね…」
「だからこうやって伸び伸びとできるの嬉しい!」
そういうとそのままゴロンと床に転がった。
「わ!汚いよ!」
僕は慌てて鈴木さんの手をとると体を起こした。
グイッと引っ張って見れば彼女の軽さに驚いた。
「佐々木くんも男の子だね…力では適わなそう」
鈴木さんは繋がれた手を見つめて微笑んでくる。
僕は慌てて離そうと手を離すが鈴木さんがギュと掴んでいて離れなかった。
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