第23話
桃江さんがさったあと、私は呆然と立ち尽くしていた。
さっきの桃江さんの言葉、もしかして私も彼方くんに告白しろってこと⁉︎
残念ながら私はそこまで勇気はない。
「彼方くんになんて無理だよ…」
「俺がどうかした?」
「うわぁっ⁉︎」
突然の本人登場に頭がこんがらがる。
「な、何でここに⁉︎ビブリオバトルは?」
胸を何とか落ち着かせる。
「ビブリオバトルはもう俺の番は終わったから大丈夫。あのさ、彩乃って好きな人いる?」
す、好きな人⁉︎
「え、あ、その、えーっと、い、いなくはないかな⁇」
なぜ疑問系‼︎
自分で自分の答えに突っ込みながら彼方くんの様子を盗み見る。彼方くんは下を向いていて何を考えてるかさっぱりわかんない。
「彩乃って、優しいよな。」
な、何言って…。
唐突な言葉に頭がパンクする。もう、全てがオーバーだ。
ていうか優しいのは私じゃないでしょ…。
二度目に会ったばかりの女子を軽く助けて、当番の時も届かないところをサッと置いてくれて、倒れたら保健室に連れて行ってくれて…。
「や、優しいのは…優しいのはどっちよ…」
プイッと恥ずかしくて顔を背けると彼方くんがこっちを見る気配がした。
「彩乃はさ、自分の良さに気付いてないんだよ。もうちょい自分に自信持っていいと思うけど?それにもうちょっと俺を頼ってよ!」
「すでに頼ってるけど?」
そーゆーことじゃない…と彼方くんは首を振る。
「もっと頼ってほしい!俺、彩乃のことが好きだよ!」
「へっ?」
すでにオーバーヒートした頭にすごいことを詰め込まれた気がする。恥ずかしさと戸惑いと…色々な感情が混ざって理解が追いつかない。
首を傾げて彼方くんを見ると彼方くんはしっかりとした口調でもう一度告げる。
「彩乃のことが好きだ!」
ふぇ?っと思った瞬間にもう私は彼方くんの腕の中だった。
「えっ?ちょっ、待っ…」
「待てない。彩乃が誰を好きかも、彩乃が俺のことどう思ってるかもさっぱりわかんないけど、俺は彩乃のことが好きなんだ!たとえ俺のことが彩乃にとって邪魔な存在だとしても、この気持ちは知っててほしい。」
抱きしめられたことで頭の中に嫌でも彼方くんの言いたいことが伝わってくる。私はグイッと彼方くんの腕から抜けて彼方くんを見つめる。
「そ、それ、本気で言ってるの?」
「もちろんだ!」
「か、彼方くんが好きなのは私…?」
「もちろんだ!」
「わ、私も、彼方くんのこと好き…だよ…」
「もちろ…っ⁉︎」
次は彼方くんが私のことを凝視する番だ。今日は驚いてばっかりだ。今日一日で一生分の気持ちを使い果たした気がする。
「私も、彼方くんのことが好きです!」
ギュッと精一杯の気持ちを込めて抱きつく。
私の頬と同じように彼方くんの頬も赤くなった。
この瞬間の私は多分無敵だろう。夢じゃないのなら、空想でもないのなら…。
彼方くんが私の背中に手を回したのがわかった。
一生の幸せを使い果たしたくらい、今私は幸せだ。
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