第16話

今日は楽しい楽しい当番の日です!いつもどおり少し早く掃除を終えて図書室に行くと何故か黒田が立っていた。

「どうしたの?」

「今日は、会議があるとかなんとかで彼方が俺と当番かわってくれってさ。」

残念…。

「どんまい。でも終わったらくるって言ってたからそんなに落ち込むことはねぇよ。」

「別にそこまで落ち込んでない。」

プイッと流星から顔を背ける。

からかわないでよね。

「じゃあ当番に行こう。」

「あ、お前の恋、脈アリかもよ?」

へっ?それって…。

「彼方はさ、昔からチヤホヤされてた。でもその分、あいつ自身はあんまり周りの人に興味を持てずにいたんだ。」

そんなこと、私に話しちゃって大丈夫なの?

そんな私の気持ちを察したのか、流星は大丈夫だとでも言うように首を振った。

「でも、彼方がさ少しお前に興味あるみたいで…。」

胸がドンドン軽くなるのがわかった。

脈アリ…か。

嬉しすぎる。誤魔化すように私は質問する。

「そういえば、さなのどこが良かったの?」

「な、なんだよ急に…」

「私の恋に口を突っ込むんなら黒田くんの話も聞かせて。」

グイッと身をのしだすとジトッとした目で見られたけど無視する。

「俺はさなの優しいところが好きだし、真面目でやることをしっかりやるところが好きだ。」

よかった…。ちゃんと黒田くんはさなのことわかってくれてるんだ。

「そう言う虹谷はどうなんだ?彼方のどこが好きなんだよ。」

「なっ…!さなに聞いてないの?」

さなならベラベラ喋りそうだけど…。

「もちろん聞いたけど直接聞きたいんだ。」

やだよ、言いたくないっ‼︎でも自分が先に聞いといて言わない…のはダメだよなぁ〜…。

「わかったよ。いう。けど彼方くんには言わないでね?」

それはもちろん言わない。と流星は言うがさなと流星のカップルは口がめちゃくちゃ軽い。不安しかない。

「私、人を見る目だけは自身があるの。彼方くんはさ、なんかすごく友達思いだなって思ったんだ。話してくうちに優しくて、誠実で…たくさんのことがわかったの。…もう十分でしょ!はいっ、これで好きなところの話は終わりっ!」

「俺、お前のこと認める。彼方の彼女だって認めるよ。」

か、かかかっ、彼女っ⁉︎

「彼女になりたいんだろ?」

「別にそこまでなりたいわけじゃ…」

なれたら嬉しいけど。

図書室は未だに誰も来館しないのでとても静かだ。

「俺、応援するから。相談とかあったらいえよ。彼方に関することなら多少は質問に答えられると思う。」

「うん、ありがとう。」

応援してくれる人が今になってありがたく感じる。

「そういえばさっきから気になってたんだが、頭に糸くずがついてるぞ?」

「あ、もしかしたら六時間目の家庭科でついたのかも。ミシンしたし…」

どこに糸くずがついてるのか探る私の頭に流星が手を乗せてとってくれた。

「ありがとう…っ⁉︎」

思いのほか顔が近くて私たちは同時にのけぞる。

「す、すまん。」

「ううん。それよりさなに嫉妬されないように、気をつけないとっ!」

茶化すように言うと流星にすごい目で睨まれてしまった。

その後は真面目に当番だ。今日は朝と昼の当番が頑張ってくれたみたいで、元に戻す本を入れるところはカラだ。結局来館者もいなかったから私たちはほぼ仕事をせずに図書室をでた。

「はぁ…仕事したかった…」

「なんでそんなに仕事したいんだよ」

「だって誰かが本を返しにきたり、本を元の場所に戻したりするときに人気の本とか面白そうな本とかを確認できて、幸せじゃん!」

「さっぱりわからん。」

そんなくだらなさすぎる話をして靴箱に行くと桃江さんの声がした。あまり大きな声じゃなくて何を話してるのかがわからない。その次に男子の声がした。

この声って…。

「彼方だ。」

うわぉ、ビックリ!

こっそり様子を伺うように靴箱に顔を出すと、なんと桃江さんと彼方くんが抱き合っていた。

私と目が合うと桃江さんは余裕の微笑みを私に向けてきた。胸や体は気持ち悪くてドキドキしてるのに頭は妙に落ち着いている。私たちはすぐに靴箱を離れた。

「驚きだね。」

そんな私を疑うように黒田は目を見つめてくる。

「…なに?」

「桃江に取られてもいいのか?」

「別に…。」

「別にじゃねぇよ!」

肩を無理矢理黒田の方に向けられて目を見開いて凝視した。

「別にじゃねぇ。いっつも別に、別に、別に、別にって言うけど、ちゃんと、自分の心に向き合え!今は、向きあわねぇといけない時なんだ!」

「っ‼︎」

自分の心と向き合う…。

「別にって、ただの逃げだろ?」

別に…が逃げ?

「別にって言うなって言ってるわけじゃねえんだ!きちんと自分の心に向き合えって言ってるんだ!すぐに諦めるなよ!お前は今、どうしたいんだ!」

「私は…」

グッと唇を噛んで気持ちを押し殺す。

フゥと息を吐き眉を下げながら黒田をみた。

「私は、彼方くんが幸せだったらそれでいいよ。邪魔者は消えるからさ。」

涙が溢れそうでパチパチと目を瞬く。

「無理、するな。後悔も、するなよ。」

心配する様に私をみてくる黒田に安心させるため残り少ない力を使って思いっきり微笑んだ。

「わかった。ありがとう、黒田くん。」

安心させるために微笑んだのに黒田くんは何故かもっと心配そうに私をみてきた。

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