第15話
「はぁ…」
とにかく今日は疲れた…。部活の会議のせいで図書委員会の当番に行けず、流星に変わってもらったのだが…。
「俺が行きたかった…」
会議と当番が重なるなんて不運すぎるだろ…。
くら〜い気持ちのまま当番を交代するために図書室のドアを開ける。
「っ⁉︎」
目に飛び込んできた二人の姿に息を吸うことをわすれてしまう。なぜって二人がっ、二人が…。
キスしてるぅぅぅーーーっ!!!!!!
音を押し殺して一旦図書室からでる。
「な、なんであんなこと…。見間違いだよな?そうだよなっ?」
そうと信じたい。そうでなければ…。
グゥと締め付けられる胸を押さえて一旦図書室から離れようとすると肩を誰かに掴まれた。
「彼方、話があるのぉ〜。少しいい?」
普通の男子は桃江の上目遣いにイチコロかもしれないが今の俺はとにかく彩乃しか目にない。
なんで、キスなんてしたんだ⁉︎
そんなことを考えていたせいか知らぬ間に桃江に靴箱まで連れてこられてた。だが俺の頭の中は流星と彩乃のキスだけ。
嘘だろ⁉︎誰か嘘だって言ってくれっ!
「あのねぇ〜…」
あー、なんであの二人が!
「実はぁ〜…」
俺の対応が悪かったのか⁉︎
「彼方が好きですぅ〜。」
彩乃のタイプは流星みたいな大人っぽい人なのか⁉︎
「付き合ってくださいぃ〜。」
あぁーーもうっ!どうしてっ、よりによって流星なんだよっ!もし彩乃が今桃江が言ったようなことを言って流星と付き合ったりしていたらっ!
「ごめん桃江、この話は後で…って、ん?」
さっきの全部聞き間違いかと思って桃江の方を向いたが桃江の顔は完璧に返事待ちだ。
「もしかして言葉だけじゃ伝わってない?好きって友達とかの好きじゃないよ?」
そう言うと唐突に抱きついてきた。
「っ⁉︎」
急いで桃江から距離を取る。
「で、付き合うの?付き合わないの?」
「俺…」
桃江は可愛くて人気者で男子から好かれてる。だけど、俺は…。
「ごめん、無理だ。」
「は?」
桃江の冷たい声に一瞬怯みかけたがすぐに首を振る。
「俺、好きな奴がいるんだ。桃江とは付き合えない」
「それってもしかして彩乃ちゃん?」
俺は驚きつつうなずく。
「ふ〜ん。でもさ、彩乃ちゃんって流星のことが好きっぽいよ?」
ゔっ…。
さっきのキスシーンが蘇ってくる。
「それなのに彩乃ちゃんのこと諦めないの?諦めて私にすればいいのに〜。」
「……ねぇよ。」
「はい?ちっちゃくてよく聞こえないんだけどぉ〜」
「諦められねぇよ!」
俺の剣幕に桃江はビクッと震える。
「好きな人をそんなすぐに諦められねぇから。最後まで突っ走るのがやっぱり道理ってもんだ!」
たとえ流星と付き合っててもそんなすぐ諦めることなんて俺にはできない。少なくとも直接告って振られないと納得できない。
「あっそ。興味冷めた。じゃ」
すっぱり諦めたような顔で桃江は俺に背を向け歩き出した。
へ?軽くない?
思いのほかあっさりと終わって驚きだ。と思ったら急に立ち止まり俺のほうを向く。
「あ、そうだ。勘違いしないで。私、失恋のキューピッドだから。」
は?何を言って…。
俺が聞き直す前に桃江は歩き出してしまった。
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