第14話
この頃彩乃の様子がおかしい。普段からあんまり笑わないタイプだけど、最近は笑顔が微妙にひきつってる気がする。特に図書室に行く前だ。
「どうかしたの?」とこの前聞いてみたけど、「何もないよ?」とはぐらかされた。
はぁ、親友の私にくらい話せばいいのに…。なんでも自己完結しようとする親友にため息しか出ない。
「図書委員会どう?」
屋上でご飯を食べながらいつもどおり探りを入れてみる。彩乃は…一瞬肩が震えた気がする。
やっぱり、図書委員会で何かあったんだ!
「順調だよ?」
さっきの震えを感じさせないくらいいつも通りの表情で私の方を見る。
「執行部の人たちとはどう?赤星とはうまくやってる?」
「うん。それは大丈夫。」
あ・や・し・い
赤星に関することで気になると言ったらやっぱり…。
「桃江とはどう?」
「も、桃江さんっ?普通だよ。」
ビンゴ!絶対桃江関係でなんか隠してる。
「本当に普通なわけ?」
「さなこそどうしたの?そんなに図書委員が気になるの?黒田くんは普通だけど…」
そうだ!私には強力な見方がいたんだった!
「ううん、大丈夫!それより私用事を思い出したからもう行くね!」
「えっ?うん、また後で!」
お弁当箱を急いでしまうと私は流星のクラスに向かった。
「すいません、流星…黒田くんを呼んでもらってもいいですか?」
「あ、流星?了解!りゅうせーい!女子が呼んでるぞぉ〜!」
私の彼氏、流星は少し睨むように私をみながらこちらに向かってくる。周りの男子たちはいいものみっけたとばかりに流星を冷やかし始める。
あ、そういえば付き合ってること秘密だった。やば、怒られる!
「あんまりたくさんの人の前で呼ぶな。」
「ご、ごめん。でも今日は仕方ないの。ちょっとだけいい?」
小声で返すと仕方なさそうに肩を下ろしてきた。多分オッケーってことだ。
私は流星の手を掴むとあまりひとけのない廊下に向かう。
「なんの話だ?」
「私の親友の大事な話。」
それで彩乃のことと理解したようだ。
「あー、あの委員長な。結構いいやつだよな。」
私の親友だとしても浮気したら許さんぞ!と言う気持ちを込めて流星を見るとそれが伝わったのか首を振った。
「大丈夫だ。俺は全面的にあの二人を応援してるから。」
あれ?めちゃくちゃ協力的になってない?
「まぁ、あれだ。あの二人、相性がバッチリだから。」
こ、これは脈ありなんじゃない⁉︎彩乃、いけるよ!
誰もいない廊下に着くと開口一番私は本題を出す。
「単刀直入に言うけど桃江さんと彩乃ってなんかあった?」
「桃江…か…」
苦々しそうに呟く流星を見て確信する。
こりゃなんかあったな。
「桃江、もしかして彩乃に意地悪してたりする⁉︎」
「いや、そこまで見てねぇからわかんねぇよ。だけどことあるごとに嫌味を言ったり彼方と一緒になろうとしたり…」
ぬぅ〜!私たちのときもそうだったけどなんで桃江って人の恋の邪魔ばっかりしてくるのよ!ありえない!
「この頃彩乃の様子がおかしいの。なんか知らない?多分桃江関係なんだけど…」
「うーん…」
少し考えたあと流星はあまり自信なさげに口を開く。
「そういえばこの前の桃江、少しおかしかったかも…」
「詳しく教えて!」
つい身を乗り出すと近いと避けられた。解せぬ。
「いつもだったら二人グループに別れる時は彼方と一緒にやりたいって言うんだ。なのにこの前は虹谷と一緒に放送やるって言って…」
そういえば彩乃がおかしくなったのも放送後だったかも…。てことはやっぱり桃江さんのせいだ。
「もう、いいか?あんまり遅いとクラスのやつらが騒ぎそうだし…」
「あ、うん!ありがとう!」
「あと…さ。」
いつもとは違う歯切れの悪い流星を私は不安になりながら見つめる。
やっぱり、人前で呼び出したのは嫌だったかな?
「これからは一緒に帰らないか?」
「ふぇっ⁉︎」
いつも私ばっかりデートに誘って流星から何か言われることなんてなかったのに…。
ほんのりと桃色に染めている流星の横顔に見惚れてしまう。
「急にどうしたの?」
「嫌だったらいんだ。」
私はハッとして急いで首をブンブン振る。
「ううん!すっごく嬉しい。」
「そんな首振ってたら取れるぞ」と流星は私の頭の上に手を置いた。その手から流星のあったかさが伝わってくるみたいで嬉しい。
「じゃあ、俺教室にもどるわ。」
「うん!じゃあね!」
まだドクンドクンと高鳴る胸とまだ暖かい気がする頭の上に手を当てる私は、はたからみれば、変な人だ。
あ〜、やばいっ!嬉しすぎる!
「よし、充電完了!桃江さんに問いたださなきゃ!」
「私になにかよう?」
ギクッとしながらゆっくり振り返ると冷たい視線を向ける桃江さんの姿があった。
頑張っていわなきゃ!
私はツカツカと桃江さんに近づき告げる。
「彩乃の恋の邪魔しないで。」
「それはこっちのセリフよ。まず、好きな人のことを諦めろって言うわけ?」
そう言われて初めて気づく。
そっか。好きな人のことを諦めろって言うのはさすがにひどいよね…。っていやいや待って!
「桃江さん、昨日2組の男子に告白したって聞いたんだけど?赤星って3組だよね?」
「さすが壁新聞委員長。情報が早いわね。だけどそれと彼方は別。」
別?
「好きな人がいながら違う人に告白するなんておかしくない?」
「昨日は一瞬あの男子がいいなって思っただけ。今日は彼方が好きなの。」
それが当たり前でしょ?とでも言うように首をかしげられても意味がわからない。
「あ、私今日彼方に告るから。止めても無駄よ。」
昨日告って今日は違う人に告る?
ポカンとしている私を残して桃江は廊下を歩いて行ってしまった。
「桃江の常識は私たちと違うの…?」
私の声は静かな廊下にやけに大きく響いた。
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