第12話
「俺、好きな人ができたかもしれない。」
ある日の放課後、流星にそう告げると目を見開かれた。
「も、桃江じゃないだろうな⁉︎」
「は?桃江さん?違う違う。何でそうなった?桃江さんは確かに優しいけど好きってほどじゃない。」
流星はホッと息をつくとじゃあ誰だよと呟く。
「虹谷彩乃だ。」
「……ゲホッ、ゲホッ。…冗談?」
「じゃねぇよ。」
飲んでいたお茶を喉に詰まらせてむせながら流星が聞いてくるが速攻で首を振った。
もしかして、流星も彩乃が好きなのか?
恐る恐る流星を探るように見ると心なしかホッとしたような表情をしている。
「なんか、問題でも?」
「いや、問題なんて全然ない。逆にいい。頑張れよな。」
は?何言ってんだこいつ。
「頭大丈夫か?」
「大丈夫だ。冴えまくってる。」
その夜、俺はグループLINEの虹谷彩乃を個人でも追加した。
『個人の方でも追加させてもらった。よろしくな。』
『よろしくお願いします』
1分も経たずに返ってきた返事に笑みをこぼす。
こいつ、本当に真面目だな。
よろしくお願いしますの文字をずっと見つめる。見つめているだけで胸が弾んでくるようだ。
こんな気持ち初めてだ。
今まで何度も何度も恋って言葉を聞いてきたけど、どういう意味か、どういう気持ちかさっぱりわかんなかった。今の、会うだけで心が軽くなって、一つ一つのしぐさを見るだけで胸が高鳴って、さよならするときは胸が締め付けられて…そんな気持ちを恋って言うんだろうか?
『好き』
LINEにその二文字を打ちかけて急いで止めた。
「何やってんだ俺は…」
少なくとも今恋ってどんなものかって聞かれたらこう答えるだろう。
自分でも自分の気持ちがわかんなくなるもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます