第11話

「今日集まってもらったのはメールで知らせた通り、ビブリオバトルの準備のため。詳しく分けると、ポスター作り、景品作りです。」

まだまだ敬語は抜けなさそうで時々敬語が出てしまう。

「俺、どっちでもいい。」

本当にどーでも良さそうに流星は言う。

彼方くんと一緒になりたいとかないのかな?

気になって顔を見ると口パクで私に何かを伝えてきた。

が・ん・ば・れ

⁉︎もしかして彼方くんと一緒にやれってこと⁉︎

お・れ・は・も・も・え・と・け・い・ひ・ん・す・る

私も負けじと口パクで返す。

じょ・し・と・し・た・ら・か・の・じょ・に・お・こ・ら・れ・な・い?

ゔっと流星は胸を押さえた。どうやら怒られてる可能性が高いらしい。

き、き・に・す・る・な

気にするよ!

「私、彼方とやりたいな!」

ウフッと微笑んで彼方を桃江さんが見つめる。

「わ、私も、彼方くんと…」

流星の気持ちを無駄にしてはいけないと急いで口を挟んだが先が続かない。

「虹谷って…」

そこで流星は言葉を切り口パクで言った。

だ・い・た・ん

「なっ⁉︎」

私は真っ赤になって下を向いた。

た、確かにさっきの言葉はやばかったかも…。

チラッと彼方を様子見る。すると彼方まで顔を赤くして呟く。

「…お、俺も彩乃と一緒がいい…」

ポンッと私たちは発火して下を向く。だがそこで不貞腐れたような声がきこえた。

「私が彼方と一緒がいい!」

「子供かよ…」

「な、何ですって!」

「は?だって子供だろ。お前、虹谷を見習えよ。」

わ、私っ⁉︎

黒田と桃江さんの争いに私の名前が出てきて目を見開いた。

「桃江さん、俺と彩乃が一緒じゃダメか?」

「あ、彩乃。…私のことは桃江さんって呼ぶのに…」

彼方くんには聞こえなかったようだが私にはその声がバッチリ聞こえた。

「…わかったわよ!私、黒田くんとでいいわ。」

私は嬉しくて黒田の方を向き最後に口パクをする。

あ・り・が・と・う‼︎


うわぁぁぁぁ!やばいっ!彩乃と二人っきりだ!

図書室で一緒に当番をすることはあってもいつも違うことをして過ごしているからこうして二人で同じ作業をすることはなかなかない。+流星が会議室を取ってくれたおかげで司書さんがいる図書室とは違い本当に二人っきりだ。桃江さんが一緒にしたいって言った時はどうなることかと思ったけど、本当によかった。

「…ん。…たくん。かーなーたーくん!ちゃんと聞いてる?」

少し怒ったようにこっちを見ている目に気づき急いで顔をあげる。

「ご、ごめん、聞いてなかった。」

「…やっぱり、桃江さんと一緒の方が良かったよね…。ごめんね、なんか口挟んじゃって…」

「い、いや、違う違う!俺も彩乃と一緒で嬉しいよ。」

彩乃は信じていないように首を振ったけど嬉しいのは本当だ。

「それで、何の話だったんだ?」

「あ、そう。このポスターの絵を描いてくれるかなって思って…。私って絵が下手だから。」

下手って言われると逆に見たくなる。だけど困らすこともあんまりしたくないから仕方ないのでポスターの右端に本の絵を描いた。

「うわぁ!ありがとう!」

フフッと微笑んだ彩乃がやっぱり可愛くて下を向く。

眩しすぎる…。

「えぇーっと、これで一応完成だからあとは先生にお願いして30部印刷、からの貼り付けだよね。あとは私やっとくから帰ってもらって構わないよ。」

いや、待て待て!

「俺も手伝うよ。」

「私一人でも十分できるよ?」

そーゆーことじゃなくて…。

「どーゆーこと?」

逆に聞かれると答えづらい。

「んー、何て言うんだろ。とにかく、もう少し頼って欲しいってこと。」

俺はそう告げて彩乃の手の中のポスターを取った。

「一緒に印刷、貼り付けしに行こうぜ。」

彩乃は戸惑ったように目を彷徨わせたが反論するのを諦めて俺についてくる。

「う、うんっ!」

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