第10話
「おつかれ、彩乃!」
私は私の親友を労った。さっき、彩乃は昨日の夜にアンケートを作って今日朝早くにきてコピーして、みんなに配ってきた。そこまで頑張れるのは凄いと思う。
「大したことないよ。私、委員長なんだし。」
本当に大したことないと思っているのが伝わってくる。
「そんなことより、昨日LINE交換したのっ‼︎本当にラッキー!」
フフッと微笑む彩乃は完璧に恋する乙女だ。
あんなに感情を見せなかった彩乃が微笑むなんて、本当に恋は人を変えるらしい。
「まぁ、グループで追加しただけだけどね。」
「グループ?」
「うん。執行部のみんなだよ。彼方くんと、黒田くんと、桃江さん。」
桃江…ねぇ…。
私が流星のことが好きなのを知ってか知らずかすごく流星にアピールしていた女子だ。
「その桃江に嫌なことされてない?」
彩乃は一瞬表情を失って目を彷徨わせたけどすぐに首を振る。そこで私は確信した。
「なんかあるなら言って?」
「ううん、大丈夫…」
グッと手を握って目を伏せる様子からは大丈夫に見えない。
「大変になったらすぐに相談してね?」
「うん、ありがとう。」
それからは何事もなかったかのように話したが、やっぱり心配だ。彩乃は冷静で強そうに見えて実際は結構弱いところがある。というか優しい。緊張してるせいかみんなの前ではあんまり笑ったりコロコロと表情を変えない。
「…もったいない。」
「何が?」
つい心の中の声が漏れてしまって急いで首を振る。
「ううん、なんでもない。」
それより心配なのは桃江だ。桃江は押しが強くて私ですら引いちゃう時がある。
彩乃がいいふうに使われないといいんだけど…。
私は心配になりながら彩乃を見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます