第9話
それから少しして、私たちが当番にも慣れてきた頃、私は先生に呼び出された。放課後に教室に向かうと先生は静かに一人で丸付けをしていた。
「話ってなんですか?」
私が聞くとふわっと微笑みながら先生は顔を上げる。
「図書委員会、うまくやってる?」
「えぇ…まぁ…」
何、急に?
何が言いたいのか理解不能で探るように先生を見る。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。実は相談があって呼んだだけなの。」
相談…ですか…。めんど…。
「今まで図書委員会って目立たずに静かに当番だけをしてる感じだったでしょ?でも今年からはできれば挑戦的に色んなことできればいいなって思って…。どう思う?」
先生は探るように私の目を見つめる。
「…私、一人の判断では決められません。執行部のみんなに相談してもいいでしょうか?」
「えぇ、もちろんよ。」
私は次の日執行部のみんなに声をかけて図書室に集まった。
「で、なんで俺らは呼ばれたんだ?相談って言われたけど、なんの相談だよ。」
「うんうん!なんで、私たちは、呼ばれたのぉ〜?暇じゃないんだけど…?」
そんな二人とは対照的に何故か彼方は微笑んで私を見てる。まるで私が何を言うのか待っている感じだ。
「実は…」
私は昨日先生に言われたことを全部話した。その結果のみんなの反応は…。
「「「めんど」」」
ですよねぇ〜…。
「私、言ったよねぇ〜?暇じゃないって。」
「えぇ。ですがやっぱり先生の言う通り…。」
「俺も面倒なのは嫌いだ。やるなら一人でやれよ。」
だよね…。
震える手を誰にも見えないようにグッと握ってみんなを見る。
「でも、ここで何かやらないと変わらないんじゃないですか?やりましょうよ!」
「このまんまでもいいけどぉ〜?」
桃江さんは速攻で反撃してきた。でも私も違う委員会だったりしたらこんなに面倒なことをやりたくない。
やっぱり、みんな嫌だよね…。先生にはすみませんって言っとこ。
「俺は、やってもいいと思うぜ?」
諦めかけて目を伏せかけたがその声を聞き目を上げた。
「彼方くん…」
「う〜ん、彼方がやるなら私もやろっかなぁ〜?」
ウフッと笑って桃江さん彼方の手を取った。私は伺うように黒田を見る。すると仕方なさそうに目尻を下げて微笑まれた。
「わかったよ。やればいんだろ、やれば。」
嬉しくて自然に唇が綻びる。
「ありがとう!…ございます。」
「いい加減、敬語やめたら?俺たち仲間なんだし。」
彼方くんはそう言うけど、みんなはどう思うか…。
「あぁ、そっちの方がいい。敬語は逆に話しかけづらいしな。」
そう言われて私の胸は軽くなった。
よかった。嫌われてない…。
ホッと胸を撫で下ろした後、しっかり顔を引き締めてみんなをみる。
「では、これから何をするか企画を考えよう!」
「俺がホワイトボードに書くよ。」
「え、でも…」
「話すのと書くの一緒だと大変だろ?」
ニカッと笑った彼方に胸が高鳴る。そんな私の心を見透かしたように黒田は意地悪く笑う。
「ほら、委員長、話を続けろ。」
「う、うん。じゃあ提案がある人はいる?」
すると桃江さんが口を開いた。
「ディスプレイとかは?」
ディスプレイ?
「もしかして知らないのぉ〜?本が好きそうだけど大したことないんだねぇ〜。」
バカにするように言った後にまた言葉を続ける。
「例えば、この図書室ってなんの面白みもなく、作者名やジャンルごとに分けてそこら辺に五十音順に並べてるよねぇ〜?」
図書室の先生がいないのを確認して軽く頷く。
「それの何がダメなの?」
そっちの方が見つけやすい。宝探しじゃないんだから見つけやすい方がいいだろう。
「あんた、バカ?本が好きなあなたはそれでいいかもしれないけど、本が苦手な人たちは図書室きて、こんな大量の本の中から読みたい本を見つけるのって大変なの。だーかーら…」
そこで言葉を切ると本を入れてある棚の上を叩いた。
「ここに、人気の本とかオススメの本を置くの。もちろん季節ごととかに本の種類は変わるわよ?でもただ置いてるだけじゃダメ。例えば…折り紙で蝶を作って蝶の本と一緒に飾ったり、紹介するためのカードを一緒においたり…」
「それ、いいな。」
ホワイトボードに文字を書き終わった彼方がそう一言いうと、桃江さんは最高のスマイルを浮かべて微笑んだ。
「ありがと〜う!」
「あ、あとブックトークはどうだ?」
彼方が新しく提案する。
「ブ、ブックトーク⁇」
桃江さんが目を白黒させている。
「…ん〜、ならビブリオバトルはどう?」
「あ、それいいな!」
「でも誰がやるんだろ?」
「まぁ、やりたいやつくらいいるだろ。」
「「ストーップ‼︎」」
流星と桃江さんにストップをかけられて私たちは口をとじる。
「その、ブックトークとかビブリオバトルとかって何よ?」
あ、知らないのか…。
「まず、ブックトークは時間内に色んな本の紹介をするものだ。ビブリオバトルは…」
話そうとする彼方をさえぎって私が話し始める。
「ビブリオバトルは私が話し始めたから私が言うね。ビブリオバトルって言うのは自分が気に入った本を時間内に…公式では5分以内に紹介して、誰の作品が一番読みたくなったかを決めるの!一番読みたくなった紹介の仕方をした人が勝利っ‼︎すごく面白いんだっ‼︎」
言い終わってハッとした。
つい、熱が入っちゃった…。ひかれてないかな…?
恐る恐る3人を見ると3人ともポカンと私を見ている。
「ごめん、つい熱が入っちゃった…。ごめんね。あ、ビブリオバトルのいまだはわかった?」
「え、えぇ…。それよりあなたって本当に…。」
「本が好きなんだな。」
二人に言われて恥ずかしくなり下を向く。
「うん、大好きなの。だから、図書委員長になったんだ!」
好きなことをきちんと好きって言えるのが嬉しくてフフッと自然に微笑んでいた。桃江さんは息を呑むとそっぽを向いてつぶやいた。
「それでいいわよ。」
へ?
「な、何が?」
飛びすぎててよくわからない。
「だーかーら、ビブリオバトルでいいって言ってるの!」
「あ、ありがとう‼︎えぇーっと…黒田くんと、彼方くんは…」
二人とも全く問題ないと言うように首を振った。
よかった…。
「で、誰がビブリオバトルするんだ?」
「ん〜、場所は図書室でいいでしょぉ〜。」
「観客は自由参加でいいよな。」
「出たい人は申し出て貰えばいいかな?」
「恥ずかしくて誰もでないんじゃな〜い?」
「なら、全員にアンケートを取ればいいだろ。」
そんなこんなで五分くらいであっさりと全て決まった。
「私がアンケート作りして、明日の朝先生に印刷してもらうね。みんなには印刷が終わり次第みんなに朝渡すね。」
「ちょっと待て‼︎」
ふぇっ⁉︎何か問題が?
「彩乃のやることが多すぎるだろ。」
「え、でも私委員長だし、一人の方が楽だし…」
「だけどっ…」
反論しようとした彼方の口を黒田が抑える。
「まぁまぁ、本人がいいって言ってるんだから任せちゃえば?なんか手伝うことがあったら手伝えばいいよ。それでいいよな、虹谷?」
私はコクリと頷く。正直そっちのほうがありがたい。彼方はまだ何か言いたげだったけど何も言わずに頷いた。
「じゃあ手伝うときに大丈夫なようにLINE交換しようぜ。」
「私もしたいですぅ〜!」
ということで全員でグループ作成をして繋げた。
「じゃあ、今日の会議は終わり!ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました」」」
3人それぞれのありがとうございましただったけど前よりもずっと仲良くなれた気がするのは気のせい…かな?
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