第6話
当番決めの朝。
「ごめん!彩乃に付き合ってること話しちゃった‼︎」
俺は最初それを聞いて怒ろうかと思ったが、やめておいた。どうせいつかはバレることだ。バレた時にゴタゴタが起きるくらいなら今のうちに親友くらいには話しといたほうがいいだろう。
「てか、なんで話しちゃったんだ?答えによっては対策を立てないと…」
「いやぁ、実は図書館の執行部に好きな人がいるって言われてその時に私の彼氏は黒田流星だってバラしちゃったの。まぁ、彩乃は違う人が好きだったんだけどね。」
彼氏と言われたのに胸がムズムズするのを感じながら俺は首を傾げる。
「俺じゃないってことは彼方か?」
「うん…ってあっ!このこと秘密なんだったっ‼︎流星、秘密にしてもらえる?」
はぁ…。
呆れてものが言えない。
「そういえばなんでその彩乃って人は彼方のことが好きになったんだ?やっぱり顔か?顔だったら速攻でお断りだぞ?」
「それがさ、顔なんて覚えてないって言うんだよ。」
「は⁉︎」
あの彼方の顔を覚えられないだと⁉︎一体誰だよそいつ。
「その彩乃って誰だ?」
「あれ?知らないの?図書委員長だよ。」
あぁ、あの虹谷彩乃ってさなの親友だったのか。あの真面目そうな外見からはこのさなと一緒にいるところが想像つかない。
「そういえばなんで好きになったんだ?顔ではないんだろう?」
「うーん…なんか委員会中にみんなを静かにしてくれて、助けてくれたらしいよ。」
それだけで恋したのか?
「そいつ、男子に優しくされたこととかないのかよ?」
「ないと思う。」
即答された。まぁ、確かに見た目からしても自分で全部なんとかできますってオーラが漂ってるしな…。
「でもそれだけで恋するものかよ。」
「さあ?私に言われても。でも彩乃自身も恋って初めてでよくわかってないみたいだし。」
なんだそりゃ?でも、顔で恋したわけじゃなくて安心した。顔であいつのことを選んでたら彼方が可哀想だしな。
「もしよかったら彩乃の恋、手伝ってくれない?」
いくら彼女の頼みでもそれはすぐにうんとは言えない。
「彼方は俺の親友なんだ。あいつの気持ちを聞いてみないとなんとも言えない。」
「そうだよね。じゃあ軽く聞いといてよ。脈ありか脈なしか。そんくらいはOKでしょ?」
「わかった。」
「ありがとう!」
そう言って微笑んだ彼女の笑みは世界で一番可愛い。今更ながらに、恋人になった幸せを噛み締めた。
昼休み、俺はさなに言われたことを実行することにした。
「彼方はさ図書委員会をどう思ってる?」
「なんだ?急に。」
直球すぎたか…。
「いや、なんとなく気になってな」
「ん〜、まあ面倒だけど放送委員とかよりはマシじゃねぇか?」
それは同感だ。だがそういうことが聞きたいんじゃない。
「そうじゃなくて、執行部の奴らどう思ってる?」
「執行部…か。お前とは、一緒にできて嬉しいぜ!あと、桃江美希はまあ明るいしいいんじゃね?虹谷彩乃は…真面目だよな。」
「確かに、真面目だな。」
俺が一緒に頷くとさらに言葉を続ける。
「なんだろうな。虹谷って俺の周りにはいないタイプだよ。まぁ、あんまり人に頼らなさそうだから心配になるけど。気になるっちゃ、気になるな。」
意外だ。彼方から気になるって言葉を久しぶりに聞いた。彼方は基本あんまり周りに興味を示さない。
これってもしや…脈ありじゃね?
「気になる…のか?」
「まぁな。もうちょっとどんなやつか知ってみたいよ。表情とかコロコロ変えるタイプじゃなさそうだから知るのは大変そうだけど。」
俺は胸の中でため息をついた。
俺だからいいが、他の奴らからみたら勘違いされるぞ?虹谷のことが好きなのか?ってな。
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