第4話

「図書委員の委員長になりました、虹谷彩乃です。よろしくお願いします。」

噛むことなく原稿でも読み上げているかのようにスラスラとその女子は話した。第一印象はその性格。とくに欠けているところのないが、何か物足りない気がするこの女子は、全く表情が変わらない。外見は特に目立つところもいいということもなく、どこにでもいそうな地味な女子。

「1回目の委員会は、学年ごとでの自己紹介、および、当番決めのアンケートをとるでいいでしょうか?」

ピクリとすら動かさずに虹谷彩乃はそう告げる。

こいつ、ロボットか?

そんなことを紙の端っこに書いて隣の流星に見せるとプッと吹き出した。

「黒田流星くん、どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません…」

そう言いながら流星の肩は小刻みに震えている。

お前、少しは笑うのを抑えろよ…。

呆れながら流星を見たが流星は完璧にツボっているようで俺のことなんか無視して笑っている。

それから一週間後、今年初めて委員会が始まった。俺もだが、残念ながら図書委員にはそれほど進んでなった人はいない。どこのクラスも、ジャンケンで負けたか、くじ引きだ。そのせいか、誰も委員長の虹谷彩乃に協力しようとはしない。それでもめげることなく、虹谷彩乃は説明をしている。

真面目、なんだな。

そんなことを思いながら虹谷彩乃を見ていると目の端にあるものが映った。

震えてる…。

原稿を持つ虹谷彩乃の手は小刻みに震えていた。怒っている…というより、怖がって怯えているような震え方だ。

「今から、紙を配るので自分のなりたい当番の時間を書いてください」

誰も聞いていない中、虹谷彩乃は声を張りあげる。

なんで、あんなに頑張れるんだよ…。

「みなさん、静かにして下さい」

表情だけみればどう考えても落ち着いているのに実際は手が震えるほど頑張っている。

そんなやつ、放って置けないだろ。

ポンと手を置くと虹谷彩乃は不思議そうに目を丸くした。そんな虹谷彩乃を安心させるように俺はウインクする。

ちょっと今のはダサかったかも。

少し恥ずかしく思いながらみんなに向き直る。

「みんな!今から大事な係決めをするらしいぞ!ちゃんと聞いとかなきゃ、変な時間の当番になるかもしれねーよ?ほら、最初から説明してもらえるか?」

そう言って虹谷を見ると「今から、紙を配るので…」と口を開いた。

本当にこいつ、真面目なんだな…。

自分の中で虹谷彩乃という女子の好感度がグングンと上がっていくのを感じながら委員会は進んでいった。その時に何かの予感がしたのは言うまでもない。

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