VS 面接の掟(おきて)


「平和主義者クラァァッシュ!」



 ラリアットが、面接官に綺麗に決まった


RPG的に言えば、“会心の一撃”というヤツだ!




 ―――数日前―――




 人生初の面接に、何を着て行けばイイのか分からなかった



なので、知恵の賢者こと、インターネットで調べてみれば、

『スーツ』着用が当たり前……とあった


しかし、親のスネカジリで『成長し続けた』僕が、


スーツなんて持っているわけがない



 なので、学生服を着ていく事にした


でも、僕の持っている学生服は、紺色のブレザーにチェック柄のズボンだった


・・・仕方ない。僕は父親の秘蔵アイテムを使うことにした


( 仕方なくだよ )


黒色のヘアカラーリング剤だ!


水で薄めたカラーリング剤は、見事に服を染め上げてくれたんだ


これを乾かせば、ほらご覧の通りさ―――



 早速、着替えてみた………



 自分なりには、「決まったな」なんて思っていたんだが・・・


成長し過ぎたお腹周りは、ズボンのチャックが上がらないほど、レベルアップ


ブレザーもなんとか、一番上のボタンが留まった程度だった



 まぁ、気にはならなかった



 ――なぜ、って? 緊張していたからさ――



 そんなチャック全開状態で、僕はタクシーに乗り込んだ!



「げへへへ。あんちゃん、イカス恰好じゃねェか」


「あ、おじさん。スゴイ廻り合わせですね。

 また、お会い出来るだなんて」


「そんな恰好でドコへ行くつもりだ?」


「これから、紹介してもらった会社へ面接に行くんだ」


「そうかよ。なら、イイ事を教えてやるぜ

 面接は、ハッタリだ!

 ハッタリで、乗り切ればラクショウだぜ」



 おじさんの〈グッジョブサイン〉が、緊張をほぐしてくれた気がした



「ありがとう、おじさん。良い事を聞かせてもらったよ

 情報量込みで、これくらい払えばいいかな?」



 そういって、僕はおじさんに2万円を渡したのだった



「へへ。坊主もオトナになりやがったな」と嬉しそうに、お金を懐にしまった




 タクシーから降り、大地を踏みしめる―――


すでに、何かしらの達成感を抱えながら、面接する会社の扉をたたいた


 ドアを開けると、事務員の方が驚いた顔を向けてきた



(どうやら、勇者としての気質を見抜かれてしまったようだ)



 僕は、にこりと笑いかけて姿勢を正した


「面接に来ました!」


 大声に慌てたのか、慌てて面接官と名乗る人が現れた!


 その人は、僕の姿を見て眼をキリリとさせた


 ついに、始まった。面接という バトル!!―――



 ◇



 その後の面接は、上手くは いかなかった………


ずっと白い眼で、見下すような態度。まるで、人を見る目がない!


これは転生前、お城にいた騎士たちの眼だ。居心地が悪い―――



 あれから、2度も紹介してもらった会社でも同じような事が起きた


 仕方なく、派遣会社の受付の女性に泣きついた



「レベルを上げて物理で殴れ」と隣にいる上司らしき男性が答えてくれた


「どういう意味ですか?」


「ま、説明しても理解できねぇさ」


「彼のいうとおり理解するのは難しいし、今は理解する必要もないわ」


と、お姉さんが意味深げに続けた



 どうやら、素晴らしいアドバイスを頂けたようだ!



 そして、現在―――



 上から目線の〈いけ好かない〉面接官のよくわからない質問に ブチ切れて、

気持ちを行動で示してみたのだった



 ゆえに、理解したんだ。


物理で殴れとは・・・どんなことをしても・・・この気持ちが大切なのだと・・・



「勇者の立場でさえあれば、自分は正義の味方だ」



 胸を反らせて、堂々とした態度で示せ!


・・・と、同時にブレザーのボタンがはじけ飛んだ―――


 それからは、後の祭りだった


警察官が呼ばれ、あっという間に不当逮捕された




 つづく

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