バジリスク

 スチール製のパーテーションで間切りされた部屋



――そこで、僕は女性の方に写真を何枚か撮られていた。卒業アルバムに載るような上半身の写真を撮っているそうだ。ちなみに僕は「中学,高校」ともに、未だに卒業アルバムを開いたことがない。振り返るような楽しい思い出がないからだ



 パシャリ パシャリ



 デジタルカメラから点滅するフラッシュが、異世界で勇者だった頃を思い出した



 この間隔で光るタイミングが、どうしても苦手な バジリスク を彷彿とさせる



 ◇



 「…まだLV(レベル)が足りねぇ」グラツィエが漠然ばくぜんとしたことをボヤく



 バジリスクの眼が光るごとに、仲間が石化していく――


 始めは寡黙かもくな男、スパース


 次に腕力が取り柄のグラツィエ


そして、パーティーの頭脳というべき女のメルシーまでもが犠牲になった


 

 皆の犠牲を踏みにじることなく、僕と 謎の魔剣 を使うサンクスが、バジリスクの背後に回り込んだ



「はッ!」「はいッ!」 僕たちの声が呼応する――




 ふたりの剣が、バジリスクの首筋に食い込む。 バシュッ!



 勝負は、互いの一撃で決した!



 バジリスクは首を切り落とされ、断末魔もなく絶命した



「あの状況で、よく逃げ出さなかったな」サンクスが褒め称えてきた


「当然だ。女神が戦わぬ者に微笑むことなど、決してないのだから」僕の白い歯が、キラリと光った



 その後、石化した仲間を荷車に乗せて、教会へ行った。


 とても懐かしい思い出だ。まぁ、前世と現世の記憶が混ざり合って、やや脚色されているような気もするけど……




 そうだった!




 仲間を紹介しておこう!




         剣士 スパース



         闘士 グラツィエ



         法術士 メルシー



         謎の騎士 サンクス



 

 そして、僕。  勇者 モッコリ





 ・・・うむ。





 どうして僕の名前だけが、この世界では下ネタのような意味合いなのか?


ちょっと、この世界に転生させた神様を軽くののしりたい気分だ



 ◇



 パシャリ パシャリ



「あの、何枚も撮っておられますが、ちょっと過剰ではないでしょうか?」ウンザリとしながら訊いた


「うーん。どの角度から撮っても、ブサイクなのよね

 なかなか、使えそうな写真にならないのよネ」と、しかめっ面で女性が答えた


 かなり失礼なことを シレッ と言ってくる


「写真ってそんなに大切なことでしょうか?」

「もちろんよ。相手企業様が雇用したいと思える顔でないと、採用は難しいわよ」





 結局、1時間ほど撮り直しを繰り返し、不承不承ふしょうぶしょうながら納得していた……





 つづく



※バジリスク・・・鉱石を主食とする。主に 鉄分 が豊富な鉱石を好む。

         有機物を石に変えて捕食する。体調は最大で5mほど。

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