エントリーシート?って、なにッ?!

 「――えッ?! これって 詐欺 ですか?」


  ……あ。どうしよう。緊張で、ちょっと声が上擦うわずった


 ◇


 僕は、ハローワークの敷地外で怪しげな2人組の会話にしたがって、

ビルの中へと入って行った


 そこで出迎えてくれたのは、綺麗な お姉さんキャラ だったのだ


 これは、昔のギャルゲーでいう、美人局つつもたせに違いない――ッ!!


勇者の警戒音アラームが、最大限に鳴り響いているッ!



 美少女ゲームでも、萌えゲームでもない、


この展開は、金銭を巻き上げられるか 好感度が下がる強制イベントに違いない…


 ――だが、残念だったな。お前の目の前にいるのは、異世界 勇者ゆうしゃ

   簡単に、イベントを進められると思うなよッ!


 ◇


「派遣会社への登録は、初めてかしら?」

 

 室内にある物すべてが目新しく映り、緊張でガチガチだった僕に、彼女は苦笑しながら訊ねてきた



「…………。


 ここへ来れば、お金を稼げると言われて来たのですが?」



 僕は、慎重に言葉を選ぶ


 そう。僕の頭の中には、数多のゲームキャラの会話がインプットされている

それら、すべての言葉を組み合わせて放たれる口撃こうげきに彼女は耐えられるわけがない


 ニヤリ、と心の中で笑う。簡単に騙せると思もうなよ――



「こちらが、エントリーシートになります」彼女は少し困った顔で用紙を渡して来た

「エントリーシート?」


「はい。こちらに、これまでお勤めになられたことのある職種と内容、期間などを

 記入してください」


と真っ赤なルージュの唇が、少しあがった



――わ、笑われたぁあああ!!


 え、エントリーシート? これって、一般常識なの??


 お、落ち着け………

 ゲームだ。ゲームの知識を総動員すれば、、、

 って、嘘だろ? そんな単語、知らないぞ?!


 そんなの転生前の世界でも、聞いたこともない単語じゃないか?!



 僕は、驚愕の事実に打ちひしがれてしまった……



「あの、どうかされましたか?」


「――えッ?! これって 詐欺 ですか?」



「いえ、違います。

 こちらに、職歴を記入されますと、こちらを元に

 相手企業さまが選考する仕組みとなっております」


 女性は、丁寧な口調で分かりやすく説明してくれているみたいだけれども、

幼少期から家族以外とほとんど会話したことがない僕は、完全にテンパってしまった


(ちなみに「テンパる」とは、

マージャンの「聴牌」という言葉が由来しているようだ)




つづく


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