第6話白霊姫は第一関門を突破する

「誰か、着る物を貸してください!」

列に並ぶ令嬢達は顔を見合わせて困惑したり顔を逸らしたり。周りの大人たちもただ傍観しているだけだ。

「それほどまでに皇子への謁見が大切ですか⁉︎人の命がかかっているんですよ!」

「クスッ」

急に笑い声がして急いでその方向を向くと扇で口元を隠しながら数人の女性は嗤っていた。

「誰があなたに手を貸すとでも、白霊姫様?その忌み子の象徴のような真っ白な髪と肌。そして顔が見えないヴェール。おぞましくて近づけませんわ。フフッ。その上その方は男爵。皇子への謁見よりも優先する方とは思えませんわ。」

そう言い捨てると私から目を逸らした。

「っ!…わかりましたわ。私一人で治します。」

「待ってください。」

グッと拳を握って下を向いていると上から声がかかりカーディガンが男爵の上にかけられた。

「私も手伝います。」

「私も」

「私のこのカーディガンを使ってください。」

数人が出てきてパサリと上着をかける。上着を持っていない人は炎系の魔術で温めてくれた。

「皆さん…」

殆どが並び直してもどうてことないほど後ろに並んでいた方達だが、みんなの優しさが私の心まで温めてくれる気がした。

「原因はわかりませんが、とにかくまずは体力を回復する魔法を私もかけてみますわ。」

両手をかざし魔力を手のひらに集める。

『あのさ、オリビア、真剣なとこ申し訳ないけどそいつ、別に悪いところなんてないぜ?』

はい?

「静まれ!」

突然のルーくんからの衝撃の告白と同時に陛下の従者がそう告げる。シンと静まり返った中、国王陛下がゆったりと聞く。

「この国の王妃に相応しい人とはどのような人かわかるか。」

誰も理解できず口を開けない中、私の隣にいた女性が口を開いた。

「気高く美しい立ち振る舞い…」

国王陛下はコクリと頷く。それを確認し、女性は言葉を続ける。

「気高く美しい立ち振る舞いは王妃にとても必要なことだと思っております。しかし、それ以上に大事なことがあると私は心得ております。」

国王陛下と王妃は愉しそうに微笑むと続きを急かすように頷く。

「王妃に一番必要なもの。それは、国民を慈しむ心。それがなければ国王陛下についてゆこうとする国民など誰もおりませんわ。王妃は今の国王陛下を象徴する女性なのですから」

国王陛下は椅子から立ち上がるとこちらへ来て言った。

「王妃に一番必要なものは国民を慈しむ心。素晴らしい答えだ。」

「お褒めに預かり光栄ですわ。」

「皆、わかっていると思うが今回のパーティーでは、我が息子の婚約者候補を決めようと思っていた。そのためにこのようなことをさせてもらった。」

このようなことって…まさかこの人仮病⁉︎

「あはは…すまなかったな、ありがとう、嬢ちゃんたち。」

男爵の顔は少しづつ変化していき…。

「る、ルミノール様!」

この国1番の魔術師のルミノール様へと変化した。多分、ルミノール様が変化の魔術か何かを使い変身したのだろう。

あははははと、ルミノール様は頭をかきながら立ち上がった。

「今、ルミノールに近寄って看病したもの。それが婚約者候補の試験だ。」

っ⁉︎

「今、こちらへ来なかったものはすぐに帰るように。」

先程私を小馬鹿にした女性たちはキッとこちらを睨んだ後真っ先に会場をあとにした。

「え、あの、はい?」

もしかして、私、婚約者候補の第一関門突破しちゃった?

ルミノール様を助けた女性たちの中には王子の婚約者に興味ない女性もいるらしく、帰る人たちの中に混ざりチラホラと帰っていく。

「ご機嫌よう、オルビア様」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る