第5話白霊姫はパーティーに行く
「ねぇ、アン。このドレスだけはやめてくれないかしら?」
「何故ですか?可愛いですよ?」
私は白を基調としたドレスの裾をつまみため息をつく。
王国主催のパーティーにはたくさんの人が参加する。その中で白が基調のドレスを着れば、さらに白霊姫と呼ばれることになるだろう。いや、もう手遅れかもしれないが。
髪も肌もヴェールもドレスも真っ白じゃ、アクセントはヴェールの奥でギラギラと光る真っ黒なこの目だけになってしまう。
人の目を気にしすぎるのはあまり良くないことだけど、やっぱり気になるものは気になるのだ。
「せめて、髪飾りだけは色のついたものにしてくださらない?」
「わかりました」
そう言ってアンは青色のバラを私の髪につけた。
「よくお似合いです」
「ありがとう」
なるべく声は明るめにしたが心は全く晴れない。
さぁ、憂鬱なお茶会の始まりですわね。
パーティー会場に着くと美しく着飾った女性がたくさんいた。
「今回はただの王族主催のパーティーのはずなのに、何故こんなに?」
「あれ?オリビアには言ってなかったか?」
キョトンとこちらを向いてきたお兄様に私は首を振る。
「噂では今日は第一王子がやっと婚約者候補を決めるらしい。」
「聞いてませんわっ!」
だからアンもあんなに張り切っていたのね!王子はもうすぐ18になる。それなのにまだ、婚約者いや、それどころか浮いた話も全く聞かないのだ。
私以上の行き遅れよね。
そんな年齢でも、今更婚約者候補を決められるのは王子という立場のおかげだろう。見た目がこんなで行き遅れの私なんかはものすごく肩身が狭いというのに…。
「アースお兄様、私、場違いなのでは?」
「なんでだ?今日はまだ、婚約者の決まっていない10才から20才の伯爵家以上女性全員が対象のパーティーだぞ?」
「いや、だからといってこんな見た目の私は万が一でも選ばれませんわ。来るだけ無駄で…。」
パッパパーン!
突然トランペットの音が聞こえ皆が会話をやめた。ザッとみんなが間を開けるとこの国で最高の立場である国王陛下、そして王妃、その後ろからは仮面を被った黒髪の王子が入ってきた。3人は用意されていた椅子に座ると陛下の従者が告げる。
「これから王子への謁見を行う。今回のパーティーの対象者の女性は皆列に並ぶように!」
我先にと押しかける女性もいればまだ結婚したくないのかゆったりとした動きで向かう女性もいる。私は王子が座る席に近かったこともあり、ゆったりと向かっても最初らへんの位置につけた。
「では一人1分ほどの時間で謁見を…」
従者が言い終わる前に目の前で一人の男が倒れた。
「っ‼︎」
「なんだ!?」
「あれは、男爵家のもの…」
「なぜここに…」
この人は確か男爵家の人。位が低いからこのパーティーに呼ばれてはいないはずだけど、多分野次馬か何かできたのかしら?…いえ、そんなこと関係ないわ。先に治療をしなければ。
急いで列を抜けて私は近くに寄る。私と同じように列を抜けようとした令嬢もいたがすぐに男爵家だと気づくと足を止めてしまう。
「すごく体が冷えてるわ…」
私は急いでカーディガンをかける。しかし、それだけでは寒さは凌げない。原因はわからないし、原因がわからなければ回復魔法なんて完全には効かない。
「誰か、着る物を貸してください!」
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