第7話白霊姫と元婚約者

「ご機嫌よう、オリビア嬢」

っ‼︎

久しぶりに白霊姫以外のちゃんとした名前で親族以外に呼ばれて一瞬もたついたがすぐに微笑む。

微笑みながら振り向くとさっきまで王とやりとりしていた女性が立っていた。確かこの方はソフィア・フラワード様。

「ご機嫌、ソフィア様」

あれ?ソフィア様って確か、第一皇子の元婚約者、つまり今日婚約者を決める人の元婚約者。挨拶したっきり黙った私を不思議そうにソフィアは見つめた後すぐに私の言いたいことがわかったらしく、頷きながら口を開いた。

「あぁ、第一王子の元婚約者の私がなんでここにいるのかって言いたいのね。実は私も不思議に思ってるのよ。まぁ、婚約者候補の権利は放棄するつもりですけどね。」

「そうなのですね。ソフィア様はなぜ婚約者をやめたのですか?…言いたくなければ全然気にしないでください」

慌ててそう付け足すとソフィア様はクスクスと笑って「隠してるわけではないの」と微笑む。ソフィア様は私の耳の近くに唇を寄せる。ふわりと甘い香水の香りが香る。

「ここだけの話ですわよ。実は、私、お慕いしているかたがいるのですわ。この場ではどなたとは申し上げられませんけど。」

そう言うとふわりと香水に負けないほどの甘い微笑みを浮かべた。

「皇子と婚約を解除してからは、その人に猛アタックさせていただきましたの。今ではその方と将来を誓い合っておりますのよ。」

…ノロケ?

先ほどまでキリリと王と会話していたように思えないほどフワフワとした雰囲気が漂っている。

「…羨ましいですわ。」

「羨ましい?オリビア様は誰かをお慕いしたことがございませんの?」

キョトンと首を傾げるソフィア様は本当に不思議そうだ。

「私、デビュタントの時点ですでにこの風貌でしたから、男性と関わることは一度もありませんでしたわ。そういえば、ソフィア様は私を見ても嗤わないのですね。」

「あら、もちろんですわ。私、人は顔で判断致しませんので。それに、あなたの心は…」

ソフィア様が言葉を続けようとした瞬間、王が口を開いた。

「今ここに残る、皆のものに伝えることがある!これから、第二の選考を行う!」

「第二の…選考?」

この選考、いくつまであるの?

「次は直接皇子と会話をしてもらう。」

はい?


「では行ってきますわね。婚約者になるつもりはありませんけど、少し話したいことがありますの。」

ソフィア様の番になり、ソフィア様は行く準備を始めた。

「話したいこと?」

「ええ、先ほど見た王子が少し、おかしかったので。」

おかしいって何がおかしいんだろう?

ふふふっと怪しい微笑みを残し、ソフィア様は行ってしまった。

「あの方が終わり次第、向こうの扉から王子の元へお向かいください。」

「わかりました。」

そう答えると同時に後ろから声をかけられた。

「オリビア」

「ノアさん!なぜここに?」

「妹がお呼ばれして、その付き添いできたんだ。ここに残ってるってことはオリビアは最初の試験に突破したってことか?」

私はコクリとその言葉に頷く。

ノアさんもここにいるということは妹さんも、突破したということなのでしょうね。

「ソフィア様が戻ってきたわ。私、王子との会話をしに行ってきますわ。」

満足した顔のソフィア様が戻ってきたのを確認して私は歩き出す。チラッと後ろを振り返るとソフィア様とノアさんが楽しそうに談笑してるが見えた。ノアさんの妹ってソフィア様だったのかしら?それとも思い人?

どちらにしてもわたしには関係ないわね。と思い直し王子の元へとむかった。

「失礼いたします」

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