第91話 君にとって自分の存在は……

 さて、近藤はどこに……。カフェに着きオレは、近藤がどこに座っているのだろうかと辺りを見回した。


「あっ、いた……。近藤きたぞ。ん? 寝てるのか?」


 近藤は、机に突っ伏して寝ていた。ここから見ると近藤の寝顔が……。後で寝顔可愛かったなとか言ったら半殺しにあいそうなのでここは、やめておこう。


「さて、どうしたもんか」


 オレは、静かに近藤の目の前に座った。起きるまでほっておくか、今すぐオレが起こすか……。

近藤、疲れてるみたいだな。リーダーだから知らないうちにいろいろと疲れがたまっている可能性がある。


「……やっぱ可愛そうだけど起こすか」


 いつまでもここにいるわけにもいかないのでオレは、近藤の肩を優しく叩いた。


「近藤、起きろ……近藤……」


 なかなか起きないな……。耳元で名前を呼んだ方がいいのか?


「よし……。起きろ、近藤あや───!?」  


 名前が聞こえたのか近藤の体がピクッとした。


「ん……大山君?」


「あっ、やっと起きたか……」


「ごめんなさい、寝てしまってたみたいね。それよりさっき私のことを下の名前で呼びかけてた?」


「えっ?」


「なにがえっ?よ。さっき彩沙っていいかけてたじゃない」


 なるほど……どうやら近藤は、フルネームで呼んだところを最後の方だけ聞いていた結果下の名前で呼ばれたと勘違いしているようだ。


「気のせいだ。下の名前を呼んだ呼んでないのは、いいとして近藤は下の名前で呼ばれることが嫌いなのか?」


「嫌ね。だって馴れ馴れしいじゃない……。けどまぁ……あなたに呼ばれるのは、悪くない……かもしれないわね」


 なんなんだよその言い方。


「前から思っていたが近藤にとってオレは、なんなんだ? チームメイトなのは、わかるが相談事をする時、お前はいつも1番にオレに相談してくる……違うか?」


「否定はしないわ。私、あなたのこと一番信頼してるから」


「ところで試しに下の名前で呼びあってみないか? チームメイトとして仲も深まってきたことだし。嫌ならいいが……」


「わかったわ。えっと……じゃあ、さっそく本題に入りましょう一樹君」


 近藤は、慣れない呼び方に苦戦していた。


「そういや何の話を話をするんだ?」


「チームの今後の方針をね。私なりにいろいろ考えたのだけど来月行われる学年末考査でも勉強会は、やろうと思うの。あなた……一樹君は、参加してくれるの?」


「考えておく。近藤……いや、彩沙がオレを必要とするなら行く」


「えっ、あっ……そうね。私としてはあなたには、来て欲しいかしら。確か一樹君は、数学が得意なんでしょ?」


 一瞬近藤のいつもの表情が崩れかけていたが真剣な表情へとすぐに戻った。


「まぁ、そうだな。彩沙には、勝てないが数学は割りと得意だ」


「なら、数学を教えに来て。おそらく江川君が今回も数学の点数がズタボロだろしね」


「容赦ない言葉……」


「そうだ、念のためあなたに伝えておくわ。私、北原さんと今度の学年末考査で勝負することにしたの」


「北原と? どういった理由で勝負することになったんだ?」


 まぁ、おそらく近藤が北原に勝負を仕掛けたのは、わかるが。


「私が北原さんに聞きたいことがあったから勝負を提案したの。勝った方は、負けた方に一つお願出来るってね」


「へぇ、これはまた面白い勝負だな。勝つ自身は、あるのか?」


「もちろん。私は学年2位よ? 負けたら私のプライドが許さない」


 近藤は、そう言ってオレの前に1枚の紙を差し出した。


「なんだ? これは……」


「学年末考査までの勉強会スケジュールよ。一樹君は、好きな時に参加して。どうせ毎日は来ないんでしょ?」


 最近、近藤にすべてオレの行動が把握されそうになっている気がする。


「ありがたく受け取っておく」


 スケジュールが書かれた紙を受け取りそれをポケットへ入れた。


「さっ、話しも終わったことだし解散しましょ」


「そうだな……。ところで名前で呼び合うのは、やっぱりやめないか?」


 オレがそう聞くと近藤は、頷いた。


「えぇ、私も同意見よ。あなたのことは、これからも大山君と呼ぶ。だからあなたも名字で呼びなさい」


「わかった。じゃあ、また明日な彩沙」


 オレは、そう冗談で言うと近藤から睨み付けられた。


「名前で遊ばないでくれる?」


「す、すみません……」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る