第92話 「北原美波が嫌うもの」
「私は、賢い人が嫌いだ」
最初は、賢い人を嫌うなんてことはなかった。けど、何度も何度も同じ出来事が起こるたび私は、賢い人を嫌うようになった。その出来事が始まったのは、あの中学1年生の頃。頑張って勉強したテストが返却された日のことだった。
「95点……」
私は、返却された95点の解答用紙を見て少し
にやけてしまった。頑張って勉強した甲斐があった。やっぱり努力する者には、報われるんだとこの時初めて実感した。
「美波ちゃん、テストどうだった?」
学年でも上位にいる私の友達が解答用紙を持って私のところに駆け寄ってきた。
「頑張った甲斐があったなと思える点数だったよ」
「へぇ~何点?」
「95点だよ」
この点数なら人に見せてもいいと私は、判断し、友達に見せた。
「あっ、そうなんだ……凄いね」
ん? この反応は、なんだろうか……。
「佳代ちゃんは、何点だったの?」
私は、友達に尋ねる。
「私は、100点だったよ。今回、あんまり勉強してなかったからちょっと自信なかったんだけど満点取れて嬉しい」
そう言って友達は、満面の笑みを浮かべる。あんまり? 賢い人は、私みたいに努力しなくても高い点数が取れるってこと? そうか……さっきの友達の会話の間は、私をバカにしていたんだ。努力してそんな点数なの?とでも言いたいのだろう。考えすぎだとその時は、思ったが、バカにされているような出来事は、また起こった。
「えっ、美波ちゃん勉強したの? 偉いね。私なんてノー勉だよ?」
そう言って友達は、97点の解答用紙を私に見せてくる。
「へ、へぇ~そうなんだ……」
私は、適当に反応し、手元に持つ82点の解答用紙を背中に隠した。また賢い自慢?いい加減やめてほしいんだけど……と思うが、口には、出さす、私は心の中で言うのとを抑える。私は、その賢い友達の言葉を聞いているうちに努力しても賢い人には勝てないと思うようになってきた。
賢い人は、努力しなくても高い点数が取れる。だけど、私みたいな人は、努力してもぬくわれない時がある。この違いって何なんだろうか……。
何度も同じ出来事が起こる内に私は、いつの間にか賢い人が嫌いになっていた。賢い人は、何事も上から目線でウザイ。私みたいな人をバカにして、何も努力してないのに普通に高得点を取ったり……。私の中で、賢い人というのは、そういうイメージになってしまった。
高校生になっても私にとっての賢い人のイメージは、変わらなかった。チームメイトの近藤彩沙ちゃん、1位である雨野千佳ちゃん……彼女達もまたどうせ私は勝てない。だが、少しでもズルをすれば彼女達に勝てるかもしれない。そう思った私は、彼と手を組んだ……。
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